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中西家と友人三人の夕食……言葉からして異質だ。色々あったらしいが、思春期の男の子的には家族と一緒に友人とご飯とかまぁまぁ気まずい。
「はぁ」
「どうしました?」
俺のため息を疑問に思い、タイガが俺に問いかける。
「なんでもない」
そう言いがら白米をかき込む。
チラリと横目でタイガを見る。彼の明るい態度から忘れがちだが『家族を失う』そんな壮絶な体験をしているタイガは俺の家族と接していて辛くないだろうか?両親と妹、俺の四人という中西家の家族構成は岩ノ森光太郎漫画館で聞いた武田家の家族構成と一緒だ。俺の家族から自分の家族について思い出さないだろうか?
そんな心配をよそにタイガはいつも通りの表情のまま食事し、談笑していた。
別に心配はしてないが千鶴と石田さんの方を見た。彼女たちは渚と楽しそうに話している。その様を見てつい口元を綻ばしてしまう。
『そりゃあ、あんなことがあったんだ。近づこうなんて物好きそうそういねぇよ』
胸がジクリと痛む。
遊園地で弘樹に言われた言葉だ。
タイガも千鶴も石田さんも『あんなこと』についてまだ知らない。よく知らない学校の有象無象から根も葉もない『あんなこと』に対する噂を知ることは絶対に避けたい。
そんなことになる前に俺が、自分で、事実を話さなければ、きっと話が食い違う。
そうしなければ……そうしなければ……
思い出される高校二年生の夏の出来事。俺の高校時代の中で一番の闇。
周りの人が俺を軽蔑した目で見てくる。落書きされた机、ぶたれた頬、蹴られた腹、かけられた水、虫の入れられた弁当箱。
そして誰もが口を揃えて言った『これは制裁だ』と。
心臓の鼓動が強くなり、早くなっていくのを感じる。考え事が加速し、箸が止まる。
「どうしました?」
「え……」
となりに座るタイガが箸をおいている俺に疑問を憶える。
理由は明らかだが、どう誤魔化すものか考えてフリーズする。
「いや、味薄いなぁって」
「私の味付けに文句でも?」
「いやぁ、今日もご飯が進むなぁ!」
母の圧力におかずを口に放りこんで白米をかきこむ。
「??」
タイガは腑に落ちない様子だったが、親の前で自身の重たい話なんてしたくない。まず、親だって俺のこの話がこの場に出ることを望むことはないだろう。
「なんでもない」
「でも」
「なんでもない」
食い気味にそう答え、無理矢理タイガの疑問を終わらせる。
「そう、ですか」
少し強く言ってしまったが、他の人は全員自分達の会話で夢中の様だ。この会話が聞かれなかったことが幸いし、夕飯は楽しい雰囲気のまま終わった。




