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今日の俺は昨晩から機嫌が悪かった。
「はぁ……はぁ……」
珍しく立ち漕ぎで自転車を漕ぎ、学校に着いた頃には息が切れていた。
あいつ……タイガはどこだ?
「あ、シュンく〜ん!」
タイガの声が聞こえた瞬間、奴の元まで猛スピードでちかより、両肩を掴んだ。
「おいタイガ……」
「はい?」
タイガに言うべきことを言うため息を整える。
あまり気にしていなかったが、周りの人が俺たち二人を見てヒソヒソ言っている。
今話題の男二人が朝から何かしているのだ。気になるに決まっている。
だが、今はそんなこと気にしてはいられない。
俺はバッグからあるモノを取り出した。
「え?」
手渡されたモノを見てタイガは戸惑っている。
「返す」
俺が渡したのは牙狼タイガーヴァンプのDVDだった。
「見なかったんですか?」
「見たさ」
即答した。
「続きを貸してくれ」
そう言うとタイガの表情はパァっと明るくなった。
「はい!もちろんです‼︎」
昨晩のことだ。
DVDプレーヤーにヴァンプのディスクを入れたことが間違いだった。
所詮子供騙しと思っていたのだが、予想以上に面白い。テレビ画面に食いついて見ていたところ、気付けば二時になっていた。
子供の頃は戦闘と変身とフォームチェンジにしか興味がなかったが、今は違う。
今はちゃんとストーリーがわかる大人だ。牙狼タイガーヴァンプの時空を超えた親子の繋がりだって今なら理解することができる。
牙狼タイガーは俺が思っていた数倍面白かった。なんだアレ?ストーリーはしっかりしているし、一、二話で区切られているから変にややこしくなることも、迷走することもない。
あと、なんか……もう、泣く。
「はぁ……」
最近、ため息の回数が増えている気がする。
「なぁ、弘樹」
「ん?」
俺は隣で眠たそうな顔をしている幼馴染に話しかけた。
「牙狼タイガーってなんかいいな」
「お前、急にどうしたんだよ」
珍しいものを見るような目で見てくる弘樹のことは放っておき、今日の夜に見る予定の牙狼タイガーヴァンプの続きに胸を膨らませていた。