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俺は紗栄子のことが好きなのだろうか?
昼休みが終わり、五時間目の誰もいない時間に屋上で空を見上げる。
季節は冬、十一月だ。制服だけでは寒いため上にコートを着ている。
「ぶぇっくし!」
それでも寒い。一応風の当たらない場所を選んだのだが、シンプルに気温が低い。
こんな時期に風を引くわけにはいかない。屋上を諦め、校舎に戻る。
授業をサボってこんなところで油を売っているのは当たり前だが褒められたことじゃない。そのためあまり校舎でウロウロするわけにもいかない。だが、屋上に入るためのドアの近くでは隙間風が冷たい。
一度溜息を吐き、図書室のある一回へ向かう。このとき教師に出会うかは運だが、会ってしまったらそのときは仕方がない。
今日は運よく一度も誰かに会うことなく図書室にたどり着くことが出来た。
図書室に入り、いつもの奥の席に向かう。基本誰もその席に今日は先客がいる。
黒髪を一つにまとめた少女、去年までその人の何も知らなかった。だが、今はこの学校のどの女性よりもよく知っている。
心臓が跳ね、気の利いた一言目を模索する。
結局そんな言葉は見当たらず、相手の方が俺に気付いて声をかける。
「やっほ、トラくん」
俺にだけ聞こえる声で囁く。目が合った瞬間に急に恥ずかしくなり目をそらしてしまう。
「おう」
とりあえず紗栄子の隣の席に腰を下ろす。
これもいつの間にか当たり前になっていた、今まで女子の隣の席なんて好んで座ってきたことはなかったのだが……
考え事をしていると急に眠気に襲われる。
弁当を食べた後にヒーターの効いた温かい部屋に来たためだろう。
紗栄子のことはまた今度考えればいい。時間はいっぱいある。
腕を組み、その中に顔を埋める。
「トラくん、寝るの?」
「ん……」
「私が教室戻るとき起こす?」
「わかった」
「さえこ……」
「ん?」
いつの間にか紗栄子のことも名前で呼ぶようになっていた。本当に気付かないうちに距離が縮まっていたのだろう。
何か変なスイッチが入った。別に何か言うつもりではなかったのだが、脳が正常ではなかった。
だがこういうときの俺は大抵言ってしまうのだ。別に後悔はない。どうせいつか言うであろうことだしな。
「好きだ」
「ふぇ……」
そのまま眠りについた。
起きた後、借りてきた猫みたいになっている紗栄子を見て自分の寝る前のことを思い出して顔の温度が上昇した。
恥ずかしさ、緊張、色々あるが、一番の原因はグラングランになっている頭だろう。
どうやら、風邪を引いたらしい。




