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五月五日
あの日、立ち直るきっかけとなった牙狼タイガー。酔っているときに幼い頃こんなモノを見ていた。こんな存在に憧れたということを不意に思い出した。
俺が家族を守るヒーローになれなかったから、家族にすら伸ばしても手が届かなかったことを未だに後悔しているのだと何年も何年も後悔を重ねてようやく気が付いた。
奏と妻の紗栄子の命日は五月六日、ゴールデンウィークが明けたその日だった。本当は五日ではなく六日にこの場へ訪れるべきなのだろうが、俺は毎年五日にこの場へ訪れた。
自分にはその資格がないような気がして、その日に訪れるであろう人に合わせる顔が無くて……
「やはり、君だよな……」
墓石の前で手を合わせ、愛する二人に思いを馳せているとそう呟く男がいた。
今日、タイガを置いて一人墓参りに来たことには理由がある。
「お久しぶりです、お義父さん」
立ち上がり、声の方へ振り向く。そこにいるのは紗栄子の両親、最後に会ったのは八年前のことだ。
お義母さんは髪を染めているのかあまり気にならないが、お義父さんの方は昔よりも随分と白髪が増えたように見える。
「随分と変わったな」
お義父さんは俺を見てそう言った。八年前に黒だった髪は金になり、ひょろひょろだった頼りない体は工事の仕事でたくましくなった。
「お義父さんたちはお変わりないですね」
そう言うとお義母さんは機嫌よさそうに笑い、お義父さんは鼻で笑い飛ばした。
「そんなことはないさ、見た目はそうであっても病気は増えた。歳はとるもんじゃないな」
笑えないブラックジョークに苦笑し、戸惑ってしまう。
「タイガは元気か?」
「えぇ、今友達と一緒に漫画館に行ってます」
「そうか、元気か」
その会話も短く切れてしまい、空白の八年間が重くのしかかるように感じた。
男二人が何とも言えない空気間を醸し出す中、お義母さんがお義父さんを小突いた。
「そんなこと言うために呼び出したんじゃないでしょ?」
「あ、あぁ」
お義父さんは咳ばらいをしてから会話を切り出した。
「虎丸くん、君は約束を憶えているかい?」
それを聞いてッビクと身体が震える。
俺とお義父さんの間で交わされた約束に思い当たるものは一つしかない。
俺自身、会ったらその件について話そうと思っていた。
「えぇ、もちろんです」
それは俺が守れなかった約束だ。




