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「なんでここで弁当食べてんだ?」
口の中に食べ物を詰め込みながら二人に問う。
結局、なぜここでという話は千鶴の転倒によってそのまま転がっていった。
「別にいいじゃないですか」
というのは先ほど廊下で盛大にこけた千鶴。
「シッダーは?」
「その呼び方継続なんですね」
苦笑したシッダーこと石田さんは一度千鶴の方を見てから答える。
「私がここで何か言うと、後でチーちゃんに何されるかわからないので……」
「なんでそういうこと言うのよ!」
石田さんの発言に千鶴は否定の意を込めてツッコむ。
「「あ~」」
だが、そんなツッコミも虚しく石田さんの発言に俺とタイガは納得していた。
「ねぇ牙狼イシダー、その話って僕も聞けませんか?」
「なんですか牙狼イシダーって、それならもう石田とか幸花の方が楽じゃないですか?」
この子は大人しいイメージだったが、千鶴と同じでボケよりツッコミ向きの性格だったらしい。
「でもタイガさんなら……」
「ダメに決まってるでしょ⁉」
顔を赤くして千鶴が再びツッコむ。
「まぁ何となく予想は着きますけどね」
「知らないのは当人達のみですね」
「あははは……」
「うふふふ……」
「うふふって笑う人初めて見ました」
タイガと石田さんがそろって笑う。ついでに俺も「うふふ」と笑う人間は初めて見た。
「というか、なんでタイガは知ってんの?」
「いいんですよ、シュンくんは主人公なんですから」
そう言ってタイガが肩に手をポンと置く。なんか腹立つ。
「シュン先輩は主人公なんですか?」
「自覚無いな」
「まぁ、自覚のあるマンガの主人公は嫌じゃないですか?」
「モノによらない?」
「否めませんね」
他の二人を置き去りにして話を進める。最近タイガとばかり一緒にいるが、タイガは漫画を読まないため、漫画の話は出来ないでいた。
「ついでにどんな漫画を読むの?」
故に久しぶりの漫画の話で少しテンションが上がる。
「そうですね、結構雑食で色々なものに手を出してます」
「ほ~う」
自慢ではないが、俺はかなり漫画を読んでいる。あまりにマニアックなものを言われない限り、タイトルくらいはわかる自信があった。
「完全に話が逸れましたね」
ヒートアップし始めた漫画の話にタイガが終止符を打つ。
「あれ、何の話だっけ?」
「取るに足らない話ですよ、忘れててください」
「武田先輩、人のアレを取るに足らない話って言うのはちょっとチーちゃんが可哀想です」
三人がそんな話をする中で石田さんの隣で千鶴が何も言わずに無心で弁当を食べていた。
「千鶴、目が死んでるけど大丈夫か?」
「ダイジョブデス」
大丈夫らしい。
なんだかんだ楽しく、昼休みを過ごすことが出来た。
「あれ、結局あの二人は何でいたんだ?」
一人教室に戻ってから小声で呟いた。




