37
「なんだ二人とも、まだこんなところにいたのか」
そう言って近づいてきたのはタイガ父。
「タイガの話のせいで全然展示見れなかったので」
俺とタイガは一回展示エリアを全て通ったのだが、タイガの話に聞き入ってしまったため展示が全く見ることが出来なかった。
「まぁ、否定はできませんね……それより父さん予定は済んだの?」
そう聞くとタイガ父は親指を立ててニカっと笑う。
「おうよ、ばっちり!」
「シュンくん見てください。この親指立てるポーズなんですけど、これは牙狼タイガーコウガの主人公がよくやるポーズで、古代ローマのですね……」
先ほどの雰囲気とは打って変わって嬉々として牙狼タイガーうんちくを説明する。いつもなら少しウザく思うこともあるが、今日ばかりは温かい視線で見守ってしまう。
「おいタイガ、父さん腹減っちまったから先に昼ご飯にしようぜ」
タイガ父が苦笑しながら腹を押さえて行った。
「えぇ、まだ全然話足りないんだけど」
牙狼タイガーの展示があるところに来てから、かれこれ二十分経ったがタイガは未だに話したいことがあるらしい。
閉館時間はあるから大丈夫だと思うが、俺はあと何時間この牙狼タイガートークをされるのだろうか……まぁ、面白いから聞いてもいいかも知れないが。
「ほらタイガ、話はまた戻ってから聞いてやるから、今は飯を食いに行こ。な」
そう言うとタイガは口を尖らせて渋々了承する。
「おぉ、ずいぶんと大人しいな」
引き下がるタイガにタイガ父が驚く。
「いつもならもうちょっと渋るんだがな」
牙狼タイガーの話なら渋るタイガは容易に想像できる。
「なぜですかね、原因はタイガーキックじゃないですか?」
「どういうこと?」
「シュンくん、その話は勘弁してください……」
本気で止めにかかるタイガを笑ってあしらう。
俺とタイガの言うタイガーキックというのは俺とタイガが事故る、改め出会うきっかけとなった階段タイガーキック事件のことだ。
この話を適当に濁し、俺たち三人は館内にある喫茶店で昼ご飯を食べることにした。
「よーし、好きなもん食え!」
タイガが迷うことなくエビピラフの食券を購入する。俺もウエストポーチから財布を出して食券を買おうとすると、その手をタイガ父が止める。
「いいよ、俺が出してやる」
「いや、悪いですよ」
「まぁまぁ、おっさんにおごられとけって、少年の財布と大人の財布は中身が違うんだから」
そう言ってニカっと笑う。
「それではお言葉に甘えて」
俺もタイガと同じエビピラフの食券を購入する。タイガ父はカルボナーラを注文する。
三人でテーブルに座り、各々頼んだものを食べた。




