34
三か月後
今までの生活からは一変した。今までは家事は全て母さんがやっていたがそれを学校に行っていない僕と仕事に行っていない父さんで分担することにした。
朝食は二人とも起きていないため食べない。昼食は父さんが置いておくお金を使って何か二人分買うか、僕が作るかしている。夕食は父がお酒と一緒に何か買ってきてくれる。
掃除やら選択やらは気付いた方が適当にやる。いつの間にかそうなっていた。
父さんは確かに酒に溺れたが、あまり性格が変わる方ではなかった。
だが、お酒の影響なのか父さんは僕の前では二人の死を忘れたようにひたすら明るく振舞っていた。朝方に寝て、昼過ぎに起きるような生活を繰り返していた父さんは起きている時間は出来るだけ僕と過ごそうとしてくれていたのだと思う。
デパートやら遊園地やら映画館やら……色々な場所に連れ出そうとしてくれたが、どこへ行くにも学校で起きたような発作が起こる可能性が怖くて出かけっれなかった。
そして、ある日曜日のことだ。
「お、おはよ」
珍しく朝早くに目が覚めると、リビングのソファに父さんが座ってテレビを見ていた。
僕が起きているのも珍しいが、父さんが起きていることはもっと珍しい。それこそ最近では徹夜でもしない限り、父さんがこの時間に起きていることなんてなかった。
「おぉ、タイガ!おはよう!」
そう言う父さんは今日も笑っていた。しかし、様子がおかしい。
「タイガ、久しぶりに牙狼タイガー見よ!」
父さんの意外な誘いに驚く。
「え、嫌だよ、僕もう四年生だよ。部屋からゲーム取って来る」
「そう言うな!意外と面白いんだ!」
父さんに首根っこを掴まれ、半強制的にソファへ移動させられる。
「なんでまた牙狼タイガーなんて……」
不貞腐れながら、コマーシャルから開けた牙狼タイガーを眺める。
やっていたのは牙狼タイガーマジック。なんでも魔法使いらしい。興味は無かったが、たまに本屋で見かけたりしていたため名前だけは知っていた。
『死ぬなよ。前に進むには今を受け入れるしかないだろ』
あれ?
『俺が、お前の希望だ』
あれ?おかしい。僕が見ていたのは小学生よりも下、幼稚園児がみるような番組。そんなのでなんで泣きそうになってるんだ?
丁度見ていたその回のその言葉、それがあまりに心に刺さって……
今の自分は現実を受け止めているだろうか?母さんが、カナデが死んで、それが悲しくて、受け入れたくなくて……
勝手に溢れる涙が抑えられず、ボロボロとこぼれる。
そうだ。前に進まなければいけない。
「父さん……僕、学校に行くことにするよ……」
今を受け入れて前に進もう。絶望しているだけでいいわけがない。
「俺も……ごめんな、今まで仕事もせずに……俺も仕事する。んで、一緒に生きてこうな……」
父さんも泣いていた。
そしてようやく父さんの変化に気が付いた。今日の父さんは酒を飲んでいない。これも父さんなりの努力なのだろう。それに気づいてまた涙が止まらなくなる。
「うん、うん、頑張ろう……これから、一緒に」
二人で泣きながら語り、通常の状態になるまで結構な時間を要した。
「そうだ父さん、さっきの牙狼タイガー最初から見てみよ!」
「あぁ、昼飯買うついでに借りてくるか!」




