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週明けの月曜日
朝七時に布団という誘惑との死闘を繰り広げ、大人しく自転車に跨ってサイクリングを決行した。
四月といえば出会いと別れの季節であり、クラスの面子も変わり、自分たちより歳が上だった三年生が卒業し、今や俺たちが三年生になった。部活に入っていない俺には関係ないが、そろそろ高総体なんかが近い運動部やらは忙しそうにしている。
そんなよくわかんないことを一人で鼻歌を盛大に歌いながら考えていると学校についた。
駐輪場に自転車を止め、玄関をくぐろうとしたときのことだった。
「シュンく〜ん!」
叫んでいるのは何もしなければ欠点の無いであろうイケメン野郎のタイガ。
「おはようございます」
「おはよ」
たわいもない会話をしながらそれぞれの教室へと向かった。
二限目終了時
「シュンく〜ん!」
昼休み
「シュンく〜ん!」
放課後
「シュンく〜ん!」
下校時
「シュンく〜ん!」
その日、家に帰るとドッと疲れに襲われベッドに倒れんこんだ。
なぜだろう?今日一日ほぼずっとタイガと一緒にいた気がする。気がするってより一緒にいたのだ。朝、昼、放課後に加え、何かしらの移動教室のときも……
机の上に置いてある問題集に目をやる。
「明日やる」
誰が聞いているわけじゃないが、自分自身にそう言い訳する。
ダメだ、今日は疲れた。あのイケメンには関わらないようにしようと思っていたのに……
見た目はイケメン、中身は幼稚園児。人がいなけりゃ所構わずタイガーキックだ。
思い返すとやはり関わらない方が良さそうだ。
俺は確かに奴に蹴りを受けたはずなのだが……不思議と憎しみなんかはない。どこか憎めない奴だ。
「まぁ、いっか」
今日はめちゃくちゃ絡まれたが、明日からはきっと大丈夫!
そう信じて八時だというのに目を閉じた。
ピロリン!
頭の上で充電されている携帯電話から通知を知らせる音が鳴った。
誰だろう?
『シュンくん!友達登録したよ‼︎よろしくね〜』
「っふ……」
俺はそのメッセージを見て鼻で笑ってから、スッと携帯電話の画面を暗くして寝た。