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タイガルフ  作者: 波左間たかさ
5月
58/81

31

 その日も普通に妹と一緒に学校へ行った。

「母さん、行ってきます」

「行ーってきまーっす!」

 妹とは三歳しか離れていないが、通学路には車が多いため当分一緒に登校することにしている。

 今日一年生の妹は四時間、四年生の僕は五時間の授業がある。


 時間は流れ、放課後


 いつも通りクラスの友達と遊びの待ち合わせをし、一旦家に帰る。

 ガチャガチャガチャ……

「ム……?」

 ドアの鍵が開いていない。インターホンを押してみる。

「う~ん……?」

 相変わらず反応がない。

「え~……?」

 学校の友達との約束があるため玄関前にいる時間がもどかしい。

 早くゲーム機の入っているリュックサックを取って友達の家に向かいたいというのに母さんは何をしているというのか?

 家の鍵は持っているが、いつもなら母さんが家にいるため持ち歩いていない。

 妹は僕より先に帰っているはずなのだが、家にはいないらしい。

 普段、小学生らしくもなく友達と遊ぶことの少ない妹は母同様基本的に家にいる。先ほどからの反応から家には母も妹もいないと考えられる。

「えー……」

 どうしよう、ケータイ電話は持っていないから母に電話をかけることもできない。一応庭の窓を見てみたが案の定開いていなかった。

 困りあぐねた末、思いついた方法は……

「よし、このまま行こう」

 学校の先生に見つかるリスクと友達と遊ぶことを天秤に掛けた結果、ほぼノータイムでその思考に至った。

 見つかったときのことは見つかったときに考えよう。

 ゲーム機はないが、友達とは一緒にいるだけで楽しいから大丈夫。


 今まで母が何の連絡もなく家を空けることは一度も無かった。

 家を空ける前には朝のうちに鍵を持っていくように促されていた。または不用心だが家の鍵は開けて出かけていた。

 だからこの状況は言ってしまえば異常だった。

 だが、そのような異常を感じ取る力は目前の友達と遊ぶことしか頭にない少年にはわかるはずもない。例えとすれば目の前にニンジンをぶら下げられた馬というのが一番適切だろう。

 少年がこの異常に気付くのは、この異常の匂いがより強くなり、現実を目の当たりにした夕方のことだ。


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