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仙台駅から車で一時間。
その間、タイガから止むことのない牙狼タイガートークが続いた。何がずるいって牙狼タイガーについて話を引っ張り、俺が
「それで主人公はどうなるんだよ?」
と、喰いつこうものなら
「それは本編で」
コイツは制作側の回し者だろうか?牙狼タイガーの話を気になるところで切られてしまうため、スマホのメモアプリにはもう五つの牙狼タイガーシリーズが書かれている。
ついでにコウガ、ツイン、コインズ、エキサイト、レイワンの五つだ。まぁタイガ自身五つしか話していないのだが……
俺がチョロいのか、タイガの話が上手いのか、きっと後者だと思う。
「お前まさか牙狼タイガーシリーズ全部見てるんじゃないだろうな?」
冗談混じりにそう聞いた。
「え?」
「え?って、え?」
意外な反応過ぎて聞き返してしまう。
「えっと、牙狼タイガーって平成だけでとりあえず二十はあるだろ?」
「そうですね、それプラス昭和と令和で……」
「お前って本当に同年代?十歳くらいサバ読んでるだろ」
「失礼な、まだ十七ですよ」
俺たちの会話を聞いて、ドライバーの武田父がガハガハ笑う。
「そりゃ驚くわな、コイツが見た中にゃ俺がガキの頃に見てたもんもあるし、全部見たいって言われた時には度肝抜かれたもんだ。がハハハ」
「すごいな、いつからそんななんだ?」
「そんなってまた失礼な。十歳のときですよ」
「あの頃は学校が終わるとすぐ帰ってきてな、一緒にビデオをレンタルしに行ったもんだ」
そんなことばかり繰り返してきたタイガの交友関係に不安を覚える。
放課後は子どもが友達と遊ぶ時間だ。俺はそうだった。
その時間に交友を深めるわけでもなく、牙狼タイガーに費やしてきたタイガ。
そういえばタイガが誰かと一緒にいるところを見かけたことがない気がする。
武田大牙のイメージといえばイケメンで高身長で勉強も出来てスポーツ万能、その上人当たりもよく、わけもわからず飛び蹴りなんてされなければ嫌いになる人なんていない。そんなイメージだ。
だがそんなこと聞けるわけもなく、俺はこの疑問を流した。話題を切り替えにかかる。
「なぁ、タイガはどうして牙狼タイガーを見始めたんだ?」
「……」
「……」
黙る武田親子。
まさかの地雷だった。
知らないよ……こんなん話の流れで聞くだろ!日常会話の一端だろ!
「えーっと、シュンくん。そのことは後で話しますね」
俺が悪かったから低いテンションで来ないでくれ。
「お、着いたぞガキども」
武田父も分かり易い話題の変換は逆に傷つく。
目の前には何とも言えない大きな白い建造物、岩ノ森光太郎漫画館があった。




