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五月五日、こどもの日。国民の休日だ。
前日の五月四日に模試があったため、俺の身体はクタクタだ。
だと言うのに、今日は朝から予定が入っている。このゴールデンウィークで一番大きなイベントと言っても過言でもではない。タイガと岩ノ森光太郎漫画館に行くのだ。
「だからって、早すぎんだろ」
時刻は朝八時、場所は仙台駅だ。
なぜこんな朝が早いのか?俺だって疑問のままこの場に来ようとは思っていなかった。
昨日、模試が終わった後のことだ。
夕飯と風呂を済ませ、もう寝るだけという状態になって部屋でくつろいでいた時、スマホがなった。
メッセージを確認してみると送り主はタイガだった。
『明日は朝八時に仙台駅で』
「は⁉」
思わず声が出てしまった。俺の想定より四時間くらい早かった。
『ちょっと早すぎないか?』
見た瞬間に返信を送った。
「……」
しかしそれ以降タイガは未読、返信がくることはなかった。
「くそぅ……」
ということで、諦めて早起きすることにした。
そして現在に至る。
「仕方ないじゃないですか、ねぇ父さん」
「あぁ、タイガが友達持って言うんでおじさん張り切っちまってな」
そう言うのは金髪褐色肌のマッチョ。華奢なタイガとは似ても似つかない。
「おぉ君がシュンくんかぁ、やぁやぁあえて光栄だよ」
怖そうな見た目とは裏腹に、タイガのお父さんは気さくに話しかけてくる。肩をバンバン叩いてきて、ちょっと痛い。
「いて、いて、いてて」
「おぉ、見かけによらず良い筋肉してるなぁ。何かスポーツでもやってたのかい?」
今度は二の腕を掴まれてそう聞かれる。
「はい、えっと、剣道をやってました」
「かぁ!いいねいいね、ガハハハハ」
ガハガハ笑って、またバンバン肩を叩く。
「おじさんも若いころはよく体を鍛えては戦ったもんだ!いいなぁ、若さ!俺が現役なら一度やり合ってみたかった!」
現役?何の?と聞く前にタイガの父はまた俺の肩をバンバン叩く。
「もう父さん、ここは家じゃないんだからもうちょっと静かに」
「お、悪い悪い、ついな」
確かに周りの人間の視線が冷ややかだ。
「武田さん、お酒飲んでる?」
初対面相手とは思えない失礼発言にも武田父はガハガハ笑う。
「今から運転するんだ、飲むわきゃねぇだろ?んじゃあ行くか!」
石巻と聞いていたため、仙石線で向かうものだと思っていたが、向かったのはホームではなく駐車場だった。
「乗れぃ!小僧ども!」
どこまでも騒がしい武田父である。
白い軽自動車の後部座席に俺とタイガは乗り込む。
「とりあえず一旦漫画館に送っていく、俺は用事を済ませてから行くから遊ぶなりなんなりしといてくれ」
「うん、わかった」
「わかりました」
珍しく二人の敬語とため口が入れ替わってると思いながら、そんなこと気にした様子もない武田父は車を発進させた。




