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ペニーランド閉園のアナウンスに合わせ、千鶴姉弟含め七人で仲良くゲートをくぐる。
「吉田さん、いとことかは?」
そういえば吉田さんだけ家族と来ていたことを思い出し、問いかける。
「え、帰ったんじゃない?」
「そりゃそうだろうけど……」
閉園のアナウンスが流れているのだから、ペニーランドにいるわけないのだが……
「連絡とかは?」
「んー、多分大丈夫」
「さいですかぁ」
連絡というワードでもう一つやらねばならないことを思い出した。
吉田さんとの会話の終結に少し勿体なく思いながらも声をかける。
「おい千鶴~、連絡先~」
先ほどの約束を果たそうと思い、千鶴を呼び止める。
「ハ、ハイ!」
京汰と並んで歩いていた千鶴は肩をビクッと震わせてから振り向く。
京汰はなぜかこちらを見てニヤニヤしている。
「シュンくんって千鶴ちゃんは呼び捨てなのね」
横を歩いていた吉田さんにそう言われ、今度は俺がビクッとする。
「いや違くて、あいつは後輩だしさ」
俺と吉田さんのやり取りに千鶴と京汰のみが頭上にハテナマークという感じだ。
「まぁまぁとりあえず、ラインでもなんでも交換すっぞ」
「ハ、ハイ……」
戸惑いつつも一度お互いのスマホを出して連絡先を交換する。
「これで次からは千鶴がはぐれても安心だな、なぁ京汰」
「ご迷惑をおかけしました」
先ほどの呼び捨ての話題から離そうと、話題を変えにかかる。
「まぁまぁシュンくん、中田さんもショボンとしてますし、その辺にしておきましょう」
久しぶりに牙狼タイガーマシンガントークを発動させたからか、タイガはいつもより活き活きしている。
「で、みなさんはなんでお姉ちゃんが呼び捨てされてることをそんな不審がってたんです?」
京汰の純粋な疑問に俺だけが絶句する。
俺が女性にさん付け、またはニックネームで呼ぶことにしているのは諸事情だ。だが、事情を知らない弘樹や明人が余計なことを言いかねない。
「あぁ、それなら……」
弘樹が京汰の疑問に答えようと口を開く。何を言うつもりなのか、身構える。
「シュンって女の子のこと呼び捨てできないんだよ」
特に変なことを言うわけでもなかった。
そして京汰は長い間を取って、
「なるほど?」
と一言。
「あー、特にかわいい女の子にはその感じが強いな」
そのセリフに反応して俺が弘樹の頭を叩く。なぜか俺も頬に平手打ちを受ける。
「ッブバ!」
誰がビンタしたのか見てみると、そこには目に涙を浮かべた千鶴がいた。
「な、な……」
「バーッカ!」
唖然とする俺に背を向け、千鶴は他の人に一礼して去って行った。
「なんでだよーーーー‼‼」
叫ぶ俺の腰を京汰がつつく。
「シュンさんすいません。うちの姉って素直じゃなくて」
うん、知ってる。と言いたかったが、何も言わずに京汰の頭を撫でる。
「あぁ、別に怒っちゃいないから安心しろ」
「これからも姉をよろしくお願いします」
「おう、任せておけ」
満足気に笑った後に京汰は千鶴を追いかけて行った。




