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タイガルフ  作者: 波左間たかさ
5月
46/81

19

「とりあえず戻るぞ、京汰は友達に預けてある」

 千鶴のビンタから立ち直り、吉田さん達のいる方へ導く。

 先頭は俺一人で千鶴とタイガは仲良く談笑中だ。

「ったく、助けたのは俺じゃないか」

 ナンパ男達を追い払い、一人残された弟を保護し、連絡のつかない千鶴本人を探すのに奮闘したというのに俺とタイガの扱いの違いはなんだ。

「俺が何したって言うんだよ」

 嘆息し、考える。運動会の件は千鶴の勘違いがあったにしても、煽ったこちらに非があると認めよう。

 だが、今回俺が何をした?何もしていない。良いことしかしていない。なのに今回はもう三回ビンタされている。解せない。

「はあ……」

 左右に誰もいない先頭でため息を吐く。そして背後の二人がコソコソ何か話していることに気付く。

「あんなところで何していたんです?」

「実はナンパに捕まっていまして」

「えぇ、大変でしたね」

 いかにも他人事という感想だ。

「でもシュンさんが助けてくれました」

 当人としては恥ずかしい。

「へー、どんな風に?」

 何を気になったのかそんなことを……

「えっと、こう、グッと私を抱き寄せて『やぁ、子猫ちゃん一体こんなところで何してるんだい?』」

「わーーーーーーーーーーーーーーー‼‼‼」

 千鶴がご丁寧に声真似までして、先ほどの恥ずかしいセリフを再演する。

 タイガ以外の誰かなら『こういう役っぽいことを言えば上手く口が回ると思って』とか言えるのだが、コイツだけは話が違う。なぜならコイツは……

「へ~」

 ほれ見てみろ。タイガはジト目でこちらを見つめてニヤついている。この様子だと気付いているのだろう。

「その言い回しはまるで蒼井剣矢みたいですね。シュンくん?」

 やはり気付いていたらしい。蒼井剣矢はタイガから貸してもらった牙狼タイガーヴァンプのキャラクターだ。

 気付かれなければ儲けものくらいと考えていたが、いざ気付かれるとバツが悪い。

「うっせ、バカ!」

 ニヤつくタイガから視線を外し、前を向いて歩く。これでこの話は終わりだという意識だ。

 タイガもそれを察したのか、それ以上は何も言いそうにない。

「武田先輩、蒼井剣矢というのは?」

 一人取り残され気味だった千鶴は有識者と感じたのであろうタイガに蒼井剣矢のことを尋ねる。

 牙狼タイガーについて聞かれるのがそんなにうれしかったのか、タイガはルンルンで答える。

「蒼井剣矢っていうのは牙狼タイガーヴァンプの主人公、蒼井語の父親でして、一見女誑しで実は彼女思いの良い人です。そしてシュンくんお気に入りのキャラクターです」

「おいタイガ、余計なこと言うな!」

 とは言ったものの、タイガは牙狼タイガートークを終わらせるつもりはなさそうだった。

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