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「おいおい、そんな呆けた顔してどうしたんだ?」
「い、いえ別に……」
顔を覗き込まれ、目をそらしてしまう。私の顔は今熱く火照っているに違いない。
「お前誰だよ?」
茶髪の男の男は機嫌を損ねた様子で尋ねる。
「誰だだって?そんな聞かれ方したら『名乗るほどの者じゃない』って答えるしかないだろ?」
「舐めてんのか?」
「バカ言うな、今日は五月にしては暑いからな。舐めたところで塩味ってのはわかりきってるし面白みがない。それともお前の茶髪の下にはメープルシロップでも塗ってあるのか?」
目の前で女を奪われた屈辱と煽りが相まって、茶髪の男は怒り心頭という感じだ。
「テ、テメェ……」
「あぁ、メープルシロップだとしてもお断りだがな」
茶髪の男を見かねたタンクトップのマッチョが指を鳴らしながら前に出る。
「おい、いい加減にしろよ?」
「それはこっちの台詞だ。いい加減そこをどいてくれないか?お前たちはひぃ、ふぅ、みぃ、四人で道を塞いでるんだからな」
「この俺を前にしても軽口を叩くか。覚悟は出来てるんだろうな?」
「覚悟?お前たち相手に何を覚悟することがあるっていうんだ。あぁ、一個思いついた。その見せかけの筋肉を……」
語り終える前に痺れを切らしたタンクトップのマッチョが殴り掛かる。
「おいおい、人の話は最後まで聞けってお前のお母さんは教えてくれなかったか?」
「お、おい……」
「それとも、お母さんは教えたのにその部分すら筋肉にしちまったのか?」
「おいお前……」
「そんなんじゃ学校での忘れ物大変だろ?」
不意打ちも虚しく、マッチョの右ストレートは片手に収まっていた。
「あぁ、これか?でかい図体で随分と軽いパンチだな。もっとちゃんと体重移動した方がいいぞ?下半身が棒立ちだ」
そう言うとマッチョは黙って腕を引いた。
「そーら、そこをどけ?」
マッチョが大人しくなると、黒いキャップの男がスマホ片手に進み出る。
「ね、謝るなら今の内だよ?」
「何を謝ることがあるってんだ。こっちは殴られかけてるんだぞ?それもこっちの台詞だろ?」
すると黒いキャップの男は右手に持つスマホを強調的に指さす。
「さっきのやり取り録画したんだよね。はは、SNSに上げちゃおうかな~」
「……」
ここにきて初めて黙った。
「形勢逆転かな?ほら、謝ったら許してあげるから謝りなよ」
得意げにクスクス笑う。
「っは、やめとけよ。お前は自分の友達が大事じゃないのか?帽子のツバで周りが見えないんじゃ、その帽子は取った方がいいと思うぞ?」
「なに言って……」
「今までのことを録ってるんなら、そこに映ってるなはお前の友達が言い負かされてパンチが止められるところだ。よくよく考えてみたら俺に不利益ななもんは何ひとつありゃしない」
「それは……」
「形勢がなんだったかな?なんでもSNSに晒せばいいだなんて甘いんだよ現代っ子」
最後の一人、ピアスの男を見てお前も何かあるのか?と、気持ちを込めて見つめる。
しかし、予想に反してピアスの男は回れ右して立ち去る。
「行くぞ」
その一言に残る三人も後を追う。
四人の影がなくなると、肩の力をストンと抜いて、私を抱いていた腕を解く。
「あー、俺あぁいうタイプの人たち嫌いなんだよね」
そう言ってシュンさんはため息を吐いた。




