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タイガルフ  作者: 波左間たかさ
5月
43/81

16

 荒い息を吐きながら、どこか目的地を定めた訳でもなく、ただまっすぐに遊園地内を駆ける。

「さすがに追ってはこないよね」

 先ほどナンパしてきた男二人を撒くために全力で走った。

 昔からああいった類の人間は苦手だった。なんというか、反りが合わない。話が合わない。

「必死だったから気付けなかっただけかもだけど、いなかったよね……?」

 走っている最中、武田先輩やシュンさんの姿は見つけられなかった。

 若干、不安に苛まれながらも戻ってもう一度確認する気にもなれない。

 あちらには先ほどの二人がいる。話もろくに聞いていないが、もう一度会いたいという気にもなれない。

「はぁ」

 とりあえずどこかに座ろうと歩を進める。

 今日は何かと上手くいかない日だ。

 せっかくシュンさんに会えたというのに別行動になってしまうし、京汰とははぐれるし、ナンパには会うし……

 まぁ、最後のナンパ以外身から出た錆なのだが。

「はぁ、今日はもう何も起こらないでほしい……」

 そんな願いが神に通じてしまったのかもしれない。迷惑な話だ。

 下を向いて歩いていた私は前方に注意を払っていなかった。これは身から出た錆と言われてもぐうの音も出ない。

「いって」

「っきゃ!」

 角から出てきた人影にぶつかった。不意の出来事に尻餅をつく。

 少女漫画であれば序盤に運命の人とであうような……であれば通学路で食パンも欠かせないだろう。

「いてて……すいませ……」

 この世界に運命というものがあり、神がいるのであれば随分と悪戯好きな一面があるのだなと思う。

「お姉さん、前向いて歩かないと危ないよ」

 そう言って手を伸ばすのは茶髪の男。後ろには白いダボダボな服に黒いキャップを被った男、ピチピチの黒いタンクトップを着た褐色マッチョ、ピアスを両耳合わせて五つほど開けた色白の男。

 パッと見の感想だが、あまり好き好んで関わりたいと思える人間ではない。

「ねぇ、大丈夫?」

 茶髪の男は何も返答しない私に気を使い、目線を合わせて問いかける。

「え、あ、はい、大丈夫です。すいません。前を見ていませんでした」

 男の手を借りることなく、立ち上がる。

「気にしなくていいよ」

 そう笑顔で言う茶髪の男はとてもいい人に見える。真の陽キャはいい人であるというのは伝説ではなかったらしい。

「ところで君は一人?僕ら男だけで退屈してたんだけど、一緒に回らない?」

 なるほど、伝説はやはり伝説か。

 本日二度目のナンパだが、口から言葉は出ない。

 背後には男が三人。威圧というわけではないが、断るのは少し怖い。

「まぁ、とりあえず飲み物でも……」

「やぁ、子猫ちゃん一体こんなところで何をしてるんだい?」

 右手を引かれ、茶髪の男にどこかに連れて行かれそうになる寸前、左手を掴まれ、引き寄せられた。

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