16
荒い息を吐きながら、どこか目的地を定めた訳でもなく、ただまっすぐに遊園地内を駆ける。
「さすがに追ってはこないよね」
先ほどナンパしてきた男二人を撒くために全力で走った。
昔からああいった類の人間は苦手だった。なんというか、反りが合わない。話が合わない。
「必死だったから気付けなかっただけかもだけど、いなかったよね……?」
走っている最中、武田先輩やシュンさんの姿は見つけられなかった。
若干、不安に苛まれながらも戻ってもう一度確認する気にもなれない。
あちらには先ほどの二人がいる。話もろくに聞いていないが、もう一度会いたいという気にもなれない。
「はぁ」
とりあえずどこかに座ろうと歩を進める。
今日は何かと上手くいかない日だ。
せっかくシュンさんに会えたというのに別行動になってしまうし、京汰とははぐれるし、ナンパには会うし……
まぁ、最後のナンパ以外身から出た錆なのだが。
「はぁ、今日はもう何も起こらないでほしい……」
そんな願いが神に通じてしまったのかもしれない。迷惑な話だ。
下を向いて歩いていた私は前方に注意を払っていなかった。これは身から出た錆と言われてもぐうの音も出ない。
「いって」
「っきゃ!」
角から出てきた人影にぶつかった。不意の出来事に尻餅をつく。
少女漫画であれば序盤に運命の人とであうような……であれば通学路で食パンも欠かせないだろう。
「いてて……すいませ……」
この世界に運命というものがあり、神がいるのであれば随分と悪戯好きな一面があるのだなと思う。
「お姉さん、前向いて歩かないと危ないよ」
そう言って手を伸ばすのは茶髪の男。後ろには白いダボダボな服に黒いキャップを被った男、ピチピチの黒いタンクトップを着た褐色マッチョ、ピアスを両耳合わせて五つほど開けた色白の男。
パッと見の感想だが、あまり好き好んで関わりたいと思える人間ではない。
「ねぇ、大丈夫?」
茶髪の男は何も返答しない私に気を使い、目線を合わせて問いかける。
「え、あ、はい、大丈夫です。すいません。前を見ていませんでした」
男の手を借りることなく、立ち上がる。
「気にしなくていいよ」
そう笑顔で言う茶髪の男はとてもいい人に見える。真の陽キャはいい人であるというのは伝説ではなかったらしい。
「ところで君は一人?僕ら男だけで退屈してたんだけど、一緒に回らない?」
なるほど、伝説はやはり伝説か。
本日二度目のナンパだが、口から言葉は出ない。
背後には男が三人。威圧というわけではないが、断るのは少し怖い。
「まぁ、とりあえず飲み物でも……」
「やぁ、子猫ちゃん一体こんなところで何をしてるんだい?」
右手を引かれ、茶髪の男にどこかに連れて行かれそうになる寸前、左手を掴まれ、引き寄せられた。




