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「だから、タイガーキックですよ!」
俺がタイガーキックなるものを理解していないものと思ったのか、タイガーキックについて開き直って語り始めた。
「岩ノ森光太郎先生の描いた老若男女に愛される特撮ヒーロー『牙狼タイガー』の必殺技じゃないですか!」
牙狼タイガー……たしか、日曜日の朝にやってる特撮だ。幼い頃、大喜びで見ていたのを覚えている。
悪の組織に体を改造手術を施された藤本宏人演じる東郷聡が牙狼タイガーという狼をモチーフにしたのか、虎をモチーフにしたのか、どっちつかずの姿に変身して自分を改造したソッカーを倒す。
そんなストーリーだったはずだ。
牙狼タイガーは今でも一年に一回のペースで新作を出し、今も続いている。
俺が見たのは『牙狼タイガーコウガ』というノコギリショー演じる三代雄大が古代の生物グロイネと戦うためコウガとなるストーリーだ。最後に見たのは小学校三年生くらいのときか。
一人で懐かしさに浸っていたちめ目の前で俺の返答を待つイケメンのことをすっかり忘れていた。
「あぁ、牙狼タイガーは知ってるよ。アレだろ?コウガとか車王とかハーフとかコインズとか」
見たことはないが名前だけは知っている牙狼タイガーの名前を上げていく。
するとタイガの目はキラキラ光り、口元を綻ばせていく。
「好きなんですか⁉︎」
いきなり俺の座るベッドに手をつき、顔をこれでもかと近づけてくる。
「っえ⁉︎」
「だから!好きなんですか?牙狼タイガー⁉︎」
俺と性別が違う。又は同性愛者ならば飛んで跳ねて喜び散らすであろう。だが、俺にはそんな趣味はないため彼の額を鷲掴みし、グっと押し戻した。