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時は少し戻り、明人に電話がかかって来る前
「そいえば、お前と明人が一緒にいるとこそんな見ないけど今日はどうしたんだ?親睦会か?」
その疑問に弘樹は答えるのを相当躊躇ったのか、十分に時間を使ってから口を開いた。
「いーや」
否定され、続きを問う。なぜ明人と一緒にいたのか。
「実はさ、明人はお前が部活を抜けたことを気にしてるみたいで、まぁそれの相談ていうかなんていうか……」
そう言われ唖然となる。
「なんであいつが気にする必要があるんだよ」
「そりゃあ、お前のことを信じてやらなかったからだろ」
「終わったことだ」
「お前が終わったことって思ってても当人はそう簡単に割り切れるもんじゃないんだろ」
「そういうもんか」
千鶴の捜索を継続しながら、会話を続ける。
「俺が部を抜けたのは受験に集中するためだよ」
「あのタイミングじゃ説得力ねぇだろ」
「まぁ、そうかもな」
去年のことだ。
高校二年生の秋、問題を起こし、部活を辞めた。部ではそれなりの実力者だったが、抜けることに躊躇いはなかった。
問題を起こした時点で俺は部で腫物扱い、顧問からも仲間からも冷たくあしらわれ、これが干されるってことかと一人の帰り道に考えたことを覚えている。
これに関して部長である明人は俺に強く当たった。罵り、殴り、これでインターハイに出場できなければどうするつもりかと問われた。
あの時は何も言わずに立ち去ったが、部活を辞める以外にどんな選択肢があったのか?そう問えば、違う答えも聞けたのかもしれない。
「お前が明人を許せないのはわかる。だけどあいつだって……」
「あいつだってなんだ?」
そこで弘樹は言葉を躊躇った。
「あいつだってなんだ?」
先ほどの言葉をもう一度繰り返す。人の返答を急かす、日常では使わないやり方だ。
「あいつだって反省してるってか?」
無理矢理抑え込んでいた言葉が弾けて口から飛び出す。
「だから過去のことは全部水に流せってか?」
「違うそういうわけじゃ……」
「水に流してないのは俺じゃない、周りだろ?」
「それは……」
「なんで俺に話しかけない?なんで誰も一緒に帰ってくれない?なんで誰も俺と昼飯を食わない?あいつらがまとめて全員気にしてるからだろ?どこかでまだ俺を犯罪者って決めつけてるからだろ?俺が全員からされたこと全部を水に流したって、ほかの奴らが気にしてちゃ俺は永遠に犯罪者の紛い物だ。そうだろ?」
俺の問いかけに弘樹は答えない。
沸々と怒りが沸き上がってくるのを感じるができるだけ抑えて会話を続ける。
「結局誤解何て晴れちゃいないんだよ。今だって前となんも変わっちゃいない。あぁ、前より被害なんかはないがな」
俺が話している間、弘樹は終始無言だった。
「別に俺は気にしちゃいないって明人に伝えていおいてくれ」
そう言って弘樹と別れようと、弘樹の進行方向とは別の場所に歩き始める。
「おい、どこ行くんだよ」
「頭冷やしてくる。このままじゃお前に当たりかねないしな。先に戻っててくれ」
事実もう八つ当たりに近い発言はした気がするが本心だった。このまま弘樹と話し続けていたら、もっとひどい言葉を浴びせかねない。
敵味方の見境なしに当たり散らしてはただでさえ少ない仲間がさらに減ってしまう。
深呼吸して気分を落ち着かせながら、俺と弘樹の距離はどんどん開いていった。




