11
「タイガってシュンと仲良いけど」
「え、あ、はい、まぁ……」
今日初めて話す剱持明人さんの開口一番の言葉になんと返すべきかまとまらない。
「でも剱持さんだってシュンくんと仲良いんじゃないんですか?」
そう聞くと剱持くんが唖然と知る。何か考えるように悩み、口を開く。
「俺とシュンは同じ部活だったからな。ってよりタイガ、お前シュンのこと何て呼ぶんだ?」
「えっと、シュンくん」
「じゃあ弘樹は?」
「鈴木さん」
「明日香ちゃんは?」
「んー、吉田さん?」
「なるほどな」
何がなるほどかわからないが、納得したように頷く。
「まぁ、俺のことは適当に呼んでいいから」
「じゃあ剱持さ……」
「さすがに苗字にさん付けじゃよそよそしいだろ?アキトとか適当に呼べよ」
遮られ、苗字呼びを却下される。
「じゃあ、アキくんと」
そう言うと、納得がいったようにまた頷く。
「シュンくんとアキくんは同じ部活だったんですね」
「まぁな」
「剣道部でしたっけ?シュンくんは強かったんですか?」
そう聞くとアキくんは一度黙った。中田さんを探すためにキョロキョロしていたため、彼の表情を見ていなかったが、次に発せられた声は先ほどからは想像もつかないほど悲しい声だった。
「あぁ、強かったよシュンは……」
その声に驚き、振り向いたときにはアキくんは先ほどと何も変わらない表情をしていた。
「そ、そうなんですか」
動揺のあまり、不自然な声を出してアキくんから目を逸らす。今そちらを向いてはいけないような気がして、明後日の方向で中田さんを探しているように装う。
「なんでシュンくんは部活を辞めたんですか?」
聞いていいかは謎だが、部活では実力者で部長であるアキくんとも関係が悪いわけではなさそうだ。
ならば一体どこにシュンくんが剣道部を辞めるきっかけがあったというのだろう。
「シュンからまだそのことについては何も聞いてないのか?」
お互い、目も合わせることなく会話を続ける。
「えぇ、シュンくんが部活に入っていたこと自体今日初耳でした。というか僕はシュンくんについて知っていることの方が少ないんですよ」
「そうなのか、まぁだからかもな」
今の質問に対する回答とも、なんとも取れない発言にまたも振り返る。
「とりあえず、あいつが何も言ってないなら俺から何か言うわけにもいかないな」
「そうですか」
「でも、」
先ほどより気持ちの籠った言葉にそのままアキくんの顔を見る。
「シュンが部活を辞めたのには間違えなく俺が関わってる」
「それはどういう……」
そう聞くとアキくんは僕の顔を見て笑った。
「さっき言ったろ?俺が言うわけにはいかないんだ。まぁ、いつかシュンが話してくれるだろ。それを気長に待つんだな」
「そうですか……わかりました」
「随分と物分かりがいいな」
「人が嫌なことを無理に聞くわけにもいきませんしね」
僕がそういうとアキくんのスマホが鳴ったらしく、ズボンのポケットから取り出して耳に当てる。
「どした?……何やってんだよォ。お、おうそうだな。俺が悪いなゴメンゴメン悪かったから」
それで会話が終わったらしく、スマホをまたポケットにしまった。
「誰からです?」
「弘樹」
「鈴木さんは何て?」
「シュンと別行動始めたって」
「なんでそうなったんですかね?」
話を聞くに鈴木さんがシュンくん怒らせたらしく、それで別行動という流れになったそうだ。
「タイガ、悪いんだがシュンと一緒にいてくれないか?俺は弘樹と合流するから」
「わ、わかりました」
今から会う相手が怒っているという点に少し恐怖を感じるが、了承してシュンくんに電話を掛けた。




