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「ったく、あいつは弟放ってどこ行ったんだ?」
ヒーローショー終了後、突如として姿を消した千鶴。
なので今のパーティ構成は高校生二人と子ども二人。パーティ人数は三人なのに一人だけジョブの掛け持ちがあってややこしくなっている。
「京汰くんはスマホとか持ってないの?」
タイガと牙狼タイガー談義で盛り上がっている京汰に千鶴に連絡をとってもらおうとたずねる。
「お兄さんは姉ちゃんの彼氏なのに電話番号とか知らないの?」
変な勘違いをしている京汰と視線を合わせるため片膝立ちになる。
「いいかい京汰少年。千鶴と俺は付き合ってもないし、俺はあいつの彼氏でもない。なんなら多分嫌われてると思うぞ?」
子どもには難しかったのか、不思議そうに首を傾ける。
「君にもいずれわかる時が来るよ」
嘆息し、京汰の肩をぽんぽん叩いてから立ち上がる。
「はぁ、兎にも角にもとりあえず千鶴探さないとな……」
さほど進んでもいないが振り出しに戻された気がして少しだけやる気が削がれる。
「京汰くん、千鶴の行きそうなところに心当たりとかあったりしない?」
わずかな希望を込めて聞いてはみたが、悩む素振りも見せずノータイムで首を横に振る。
「そっかぁ……」
ペニーランドで人を探すことはいつもなら難しくもないが、今日にいたってはゴールデンウィーク始めの一日だ。人の数は異常に多い。
三人で頑張って探すというフワフワしたパーティ目標でもいいのだが、それだとあまりにも時間がかかりそうだ。
時刻は三時半。閉園時間は五時なのでタイムリミットは一時間半。
最悪閉園したら入り口のゲートで待っていると思うが、それは最悪の話だ。千鶴を探すというのが最善手であることは揺るがないだろう。
「シュンくん、スマホ鳴ってません?」
タイガに言われ、自分のポケットを確認すると確かに鳴っている。
それにしてもマナーモードにしていたのによく気が付いたなコイツ……
「はい?」
「もしもしシュンくん?今どこ?」
癖で表示される名前を見ずに電話を取ってしまった。手遅れと思いながらも表示される名前を確認。
表示されていた名前は吉田明日香。
まぁ、名前を見ずとも声を聴いて気付いてはいたが……
「あーっと、えーっと……」
周りを一度見まわし、どこと言えるアトラクションがないことに気付いて話題を挿げ替える。
一度タイガと京汰を見てから諦めて嘆息する。
「あのさ、今暇してたりする?」
「まさか遊園地でそんなこと聞かれるとは思わなかったよ」
「うん、俺もこんなこと聞くことになるとは思ってなかったよ」
「何かあったの?」
もう一度タイガと京汰を見る。
「うーん、あった」
「そこ悩むとこ?」
「何か、もしかして問題ないんじゃないかと思ってきた」
京汰はタイガと俺が千鶴の友人だと思って何も警戒していない。タイガとの牙狼タイガートークによって緊張感も消え失せ、もはや溶け込んでいる。
もう閉園まで預かってた方が手間も省けるのでは?
そうも思うが、俺の良心と中田家の事情も考え、一応探しておいた方がよさそうだ。
「実は迷子がいてさ……」
「それって緊急じゃない?」
吉田さんたちの現在位置を聞き、三人でそこへ向かった。




