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「なんでお前までいるんだよ」
タイガが立ち上がって牙狼タイガーを応援しようとするのを首根っこを掴んで抑えながら、隣に座る千鶴に声をかける。
「し、仕方ないでしょ!武田先輩と京汰が一緒にいたんだから」
「なんでタイガは先輩呼びなんだよ」
「一応?」
「なんで疑問形?」
「中……シュ……アン……ん?は先輩だと思えないけど、武田先輩は先輩だから」
「わけわかんない……」
中西とシュンとアンタをウロウロして結局何にも落ち着かなかったように見える。
「んじゃあ、俺は何て呼ぶんだよ」
「え?」
鳩が豆鉄砲を喰らったような良い表情をするやつだ。
「俺の呼び名は?」
「あ……えっと、え……」
頬を染めて、目を泳がす千鶴。目に見えてオドオドしているのがわかる。こいつは俺と同類……異性の下の名前を呼びづらいタイプの人間という匂いがする。
「わかった。んじゃあ、シュンでいいよ」
同類の目の前に船を流してやることにした。
「じゃ、じゃあシュンさんと……」
「「レイワーーーン‼」」
俺の座るタイガと千鶴の弟の京汰が同時に叫び、千鶴の言葉が遮られる。
「おいタイガ、あんまり興奮するな」
立ち上がろうとした力尽くで座らせ、千鶴が何を言おうとしていたのか聞こうとそちらを向く。
「だから……」
「「イエーーーイ‼」」
何かを言った千鶴だが、その声はまたしてもタイガと京汰に遮られる。
「何なの?放送コードにでも引っかかったの?」
タイミングが完璧すぎて驚いてしまう。俺がいない間にタイガと京汰に教え込んだのでは?と思うほどだ。
「ち、違うわよ!」
「えっち……」
「っな……!」
俺が自身の身体を抱いて言うと、千鶴は顔を赤くし、口をパクパクさせている。
「ち、ち、違うわよ!」
目に涙を浮かべ、必死に訴える千鶴にはもう先ほどまでの委員長的風格は残っておらず、ただの弄りやすいツンデレだった。
「え~?」
俺がジト目で千鶴を見ると何とも歯がゆそうにしている。
「じゃあなんて言おうとしたのさ」
「だから私は……」
「「タイガーーー‼」」
「シュンさんと……」
「「キッーーーク‼」」
「……」
奇跡にもほどがあるというタイミングでレイワンがタイガーキックを決めたらしい。疑うべきはタイガ達ではなくペニーランドの方かもしれない。
ヤバい、笑ってしまいそうだ。
驚き三割面白七割な現象にそろそろ本当に吹いてしまいそうだ。
千鶴は涙目になって、恨めし気にこちらを見ている。
悪いのは俺じゃなくてタイガと千鶴の弟、またはペニーランドなのだが……
「また何言ってんだか聞こえなかったな……」
千鶴は何も言わず、コクリと頷く。
「何?そんなにヤバいこと言ったの?」
違う違うと口にせずとも首を横に振る。
ちょっとかわいそうに思えて嘆息する。
「わかった。なら、もう一回言ってみ?」
どうやら牙狼タイガーのショーも終了したようだ。今なら何の妨害も入ることはないだろう。
「だから私は……」
「「レイワーーーン‼」」
「……」
限界を超えた俺の口角は何とかギリギリのところで吹かずに踏みとどまった。
タイガと京汰はショーに出ていたレイワンと握手するため、叫びながらステージに行ってしまった。
「本当に放送コードがッブバ!」
またも千鶴に平手打ちされた。今回俺は何もしていないはずなのだが……
「バカ」
本当に凹んでいるらしい千鶴は顔を真っ赤にしながら、どこかに行ってしまった。
そこに握手を終えたらしく、KYコンビが戻ってきた。
「お待たせです。シュンくん」
「ねぇねぇお兄さん姉ちゃんの彼氏?うちの姉ちゃん知らない?」
「シュンくんの彼女さんですか⁉」
見当違いなことを口にするKYコンビを見て嘆息する。
「お前らいつの間に仲良くなったんだよ?」
各々疑問を抱きながら、パーティーメンバーが一人追加されたシステム音がした……気がした。




