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色々あって俺がペニーランドに到着してから二時間が経過し、時刻は二時半。
「早く、こっちです!」
「ちょ、待て!」
悪漢から逃げるヒロインのように手を引かれながら、タイガとともに園内を駆ける。
「早く、早くしないと……」
焦り、荒い息を吐きながら、ひたすらに先を急ぐ。
「ちょ、待てって……いい加減にしろ‼」
少し前のことだ。俺たち以外の三人、吉田さん、明人、弘樹の三人が懲りずに絶叫マシンに乗り込んだのを見計らってタイガに
「二人で一緒に抜け出しませんか?」
と、合コンで異性に言うようなセリフを言われ、大人しく抜け出した。
まさか手を引かれて走ることになるとは思っていなかった。俺はバリバリのフェミニストだが、誰かと手を繋ぐなんて幼稚園ぶりで不覚にも少しだけドキッとしてしまった。
ただでさえ学校では同性愛疑惑が湧いているのだ。勘弁してほしい。
「ヒーローショーが見たいのはわかる!だけどこうも急ぐ必要があるのか⁉ショーは何時からだ!」
「急がないといけないんですよ!」
「だから何時からだ⁉」
「四十五分からですよ!」
腕時計を確認してからタイガに向き直る。
「まだ十五分もあるじゃねぇか‼」
怒りのままにタイガの方を叩く。
「シュンくんはバカなんですか?早く行かないと最前列が子どもたちでいっぱいになっちゃうじゃないですか⁉」
「バカはお前だ!最前列で見るつもりだったのか、このバカ!高校生二人でか?バカか?バカ!」
「何ですかバカバカ、バカバカ言って……吉田さんたちも連れてきた方が良かったですか?」
「んなわけあるか!」
言い争う俺とタイガの間を小学校低学年くらいの少年が走り抜ける。
「姉ちゃん早く!」
その少年の背を追うように高校三年生の少年が走り出す。
「ほら、早く行きますよ」
「おいタイガ」
「こら京汰」
声がシンクロし、発した二人が互いを見る。
「ん?」
「え?」
互いに聞き覚えのある声に疑問を抱く。
そこにいるのは俺より少し身長の低い、眼鏡に三つ編みおさげという典型的委員長タイプの……
「なんだツンデレか」
「なんだとは何よ!というか誰がツンデレよ!」
嚙みついてくるツンデレを宥めにかかる。
「まぁまぁ、怒るなよ。それに俺、一応先輩なんだし……」
「なんでアンタみたいなのに敬語使わないといけないのよ!ッフン」
最初はそれっぽいという外見イメージ程度でツンデレと呼び出したが、コイツ普通にツンデレなんじゃないかと思ってきた。
まぁ、未だツンの一点張りだが……
「まぁまぁ、そんな怒るなよ千鶴」
「んな……」
俺が名前を知っていることに驚いたのか、動揺しているのがわかる。
「なんで、名前なのよ⁉」
どうやらなぜ名前を知ってるのかではなく、下の名前を呼んだことに対する動揺だったらしい。
「なんでって言ってもなぁ……さん付けはまどろっこしいし、苗字ってのもなんだから……」
「ん、くぅ~」
顔を赤く染め、訳の分からない声を上げる。
「お、おい、嫌ならそう言ッブバ‼」
いきなり平手打ちされた。
「何すんだぁ‼」
「バーッカ!バーーーーッカ‼」
そう言ってから、ドタドタとタイガ達の後を追った。
何か既視感あるなぁ思いながら一度嘆息して俺も後を追った。




