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「え、シュンくんってメンタリストか何かなの?」
意外な喰いつきを見せる吉田さんが俺に視線を合わせるために屈む。
「じゃあ私が考えてることもお見通しだったりして」
この子はきっと俺をおちょくっているのだ。かわいい。まともに目を合わせることもできない。かわいい。あぁ、もうかわいい。
「シュンくんって女の子と目合わせらんないの?」
不服そうに口を尖らせ、不服そうに後ろに立つ明人と弘樹を見る。それですらかわいいのだから困ってしまう。
「いや、シュンは単にかわいい女の子に対してキョドるだけだよ」
一度俺を見てからニヤつき、余計なことを口走る弘樹。
「そいえばシュンって彼女とかいたことねぇよな」
流れ弾を受けた弘樹に頭を叩かれる明人。
「へ~、じゃあシュンくんは私のことかわいい認定してるってこと?」
ニヤニヤしながら俺を見る吉田さんがかわいい。
校長室以来のピンチに、微かな期待を込めて隣に座るヒーロー好きを見るも、期待の眼差しを向けている。
交わる期待の眼差しに表情が歪む。
「お前に期待した俺がバカだった」
「シュンくんってたまに中々キツイこと言いますよね」
キラキラした眼で俺を見ていたタイガに助け船を求めるなど間違い以外の何物でもないだろう。
「シュンは毒タイプだからな」
撃たれた衝撃から立ち直った弘樹がそんなことを口にする。
「口がナイフみたいだからな。銃刀法でワンチャンアウトかもしれん」
「シュンくんの主武器は口先だったんですね!」
男子どもが言い返さないのを良いことに好き勝手に言いやがる。
「腕と口のケンカが強い男」
「仙台の毒ナイフ男」
「怪人ポイズンナイフ男ですね」
「漫画の敵役みたいな男ね」
「「「「イエーーーーイ!」」」」
女子が一人加わり、みんなで仲良くハイタッチを……女子が一人?
吉田さんまでもがその輪に加わりハイタッチしていた。
その光景にベンチから落ちて膝をつく。
男子から何を言われようが知ったこっちゃないが、相手が自分の好きな人ともなれば、絶望感は比べ物にならない。
つまりあの四人には『口が悪く敵キャラみたいな、毒タイプの怪人』として認識されているということだろう。
「まぁ、そんなに気を落とすな」
幼馴染である弘樹が俺の右肩に手を置き、親指を立てる。
「日頃の行いだぜ」
さっき実行を躊躇ったチュロスで頭を叩く対象はコイツにしよう。
すると明人が左肩に手を置いた。
「ドンマイ!」
チュロスが二本必要になったようだ。
「いつもやられてばっかりなので、シュンくんがやられているの見るとおっかしいですね」
腹を抱えて楽しそうに笑うタイガ。
おいおい、俺の財布を空にするつもりか?
「ほーら、シュンくんをいじめないの」
吉田さんも同罪なのだが、この話題を締めてくれるくれるようで元々高い好感度が高騰する。
「いくら面白いからって」
先ほどの言葉は撤回することにしよう。
「泣きたい……」
味方のいない今、心からの一言だった。
左肩に置かれていた手が、頭に移動してワシャワシャと雑に撫でる。
「あぁ泣け泣け、男には泣いてでも強くならないといけないんだ」
加害者であることを忘れたのかと、聞きたくなるようなセリフを吐く明人。
「良いことあるさ」
お前らが何もしなけりゃ今日もその良い日になったかもな……
恨ましく思いながら弘樹を見る。
「ほーら、いい加減にしないとタイガくん死んじゃうよ?」
吉田さんがしゃがんでタイガを指さす。
見ればタイガは爆笑して転がり回っている。
「ヤバい……ヤバい、す。死……死……」
いつもの敬語もままならず、確かにいい加減にしなければマズそうだ。
「ほーら、おしまいおしまい」
しゃーないと、俺から手を離す二人。
俺も立ち上がって膝を払う。
「じゃあ次行くべ」
弘樹が仕切り直すが、アトラクション乗り放題のチケットではない俺とタイガはあまり関係なく、俺はただ戦闘不能のタイガがいつ回復するのかを見ていた。




