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八木山ペニーランドには地下鉄一本で行くことが出来る。
宮城の東京ネズミーランド、仙台の富士山ハイランド……
先に言っておこう。
東京ネズミーランドや富士山ハイランドにも絶叫マシンは当然ある。それらの叫び声を「キャー!」だとするなら、ペニーランドの叫び声は「ギャー‼」である。
ネズミーランドやハイランド、その他大勢の遊園地の叫びがアトラクションの楽しさプラス安全性有りきの恐怖なら、ペニーランドのアトラクションは自身の生命的危機に対する叫びである。
中学校の数学の教師が「今まで色々な絶叫に乗ってきたけどペニーランドが一番怖かった」という発言を今でも鮮明に覚えている。
理由としてはペニーランドのアトラクションの老朽化だ。いつ壊れてもおかしくない(は言い過ぎかもしれない)アトラクション。それがシンプルに怖い。
※ペニーランドは実在しません。
ペニーランドに到着し、入場券を購入してからタイガに連絡する。
「もやしもやし」
「ぶっ殺すぞ」
不意に人がハイテンションなときに言ったセリフを繰り返してくる相手に殺意が芽生える。
「まぁまぁそんなに怒らないでください。せっかくの遊園地なんですから」
「はぁ、そうだな」
タイガのことはあとでチュロスで頭を殴って砂糖だらけにしてやろう。
「それで、今どこにいんだよ」
「えっと、屋台のとこです」
入場時にもらった地図で屋台の場所を確認し、電話を切って足早に向かった。
さすがゴールデンウィークというべきか、腐っても遊園地というべきか、ペニーランドには親子連れやらカップルやらに溢れていた。
周りの私服の人間達を見て自身が制服であることを思い出し、何となく恥ずかしくなってバッグからパーカーを羽織る。
そしてタイガがいると伝えられていた屋台に到着した。パッと見ただけで異様な組み合わせである四人を見つけた。
人数に疑問はあったものの、気軽な感じで声をかける。
「ちょっと待て、弘樹と吉田さんは聞いてたんだけど……」
目の前にいるのは事前に知ってた三人プラス……
「なんで明人がいるんだ?」
四人目、剱持明人がそこにいた。
「お前、今日部活は?」
明人は剣道部の部長で今年はインターハイに絶対出場すると躍起になっていたはずなのだが……
「今日はオフだかんな、弘樹誘って遊びに来たんだ」
どうだ。と胸を張った明人だが、そうか休日か。と思いながら次に吉田さんに目を向けた。
「吉田さんは?」
「わ、私は従弟の子守りでついてきたんだけど、みんなにあったから一緒に遊ぼうと思って」
「従弟はいいの?」
「う、うん。一応親と来てるし、大丈夫だと思う」
自身のポニーテールをいじりながら、目を合わせてくれない。
不審に思いながらも下手に突っ込んで嫌われる方が嫌なので、不安に思いながらも隣に立つタイガを見る。
「んで、お前はなんだ?」
「なんだと言われればタイガですが?」
俺は後ろにあった屋台でチョコレート味のチュロスを一本購入した。
「わかりました。わかりましたからチュロスを振りかぶってこっちに来ないでください」
チュロスを齧りながらタイガに続きを促した。
「僕はまぁ、個人的に……」
ちょっと待て、こいつ一人で遊園地に来たのか?
頭を抱えて嘆息した。
自身の後頭部を掻きながら頬を染めているタイガが吉田さんと近いポーズであることに気付き、半分まで食べたチュロスを何となくタイガの口に突っ込む。
「タイガがここに来た理由はなんとなくわかるからいいや」
チュロスを美味しそうに頬張っていたタイガが勢いよくこちらを振り向く。
「そんなぁ、気になりましょうよ」
三度の飯より牙狼タイガーのような男であるタイガだ。アトラクションを楽しみに来たとは思えない。
どうせヒーローショーを見に来たが、俺と一緒にいるところをよく見ている弘樹やら吉田さんに捕まった。といったところだろう。
「シュンも合流したところでなんかアトラクションに行こうぜ」
弘樹に言われ、昼食もまだだが屋台を後にした。




