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「本当に!申し訳ございませんでした‼︎」
ベッドの上で身を起こす俺に頭が床に陥没するんじゃないかと心配になる勢いで武田大牙は謝罪の言葉を口にした。
『武田大牙』この学校では知らない人などいないと思われるほどの有名人。イケメンで高身長で勉強も出来てスポーツ万能、その上人当たりもよく、わけもわからず飛び蹴りなんてされなければ嫌いになる人なんていないだろう。
「えーっと、大丈夫だよそんなに謝らなくて、頭もそんなに痛くないし」
そう言うと大牙はパァっと表情を明るくした。
俺の頭には包帯で保冷剤が固定されている。土曜日の教師のいない保健室で俺の手当てをしてくれたのだろう。
ここまで謝られ、手当てまでしてもらったのだ。俺の心には特に怒りなんてものはない。
だが、気になることが一つだけあり大牙に問いてみる。
「大牙くんは……」
「タイガでいいですよ」
「そう?じゃあタイガは階段で何してたの?」
そう聞いた瞬間、イケメンの顔からはスーっと血の気が引け、初めて動揺の色を見せた。
おっと、聞いてはいけないことを聞いたか?だが、蹴られた手前聞かないわけにもいかず、次のタイガの言葉を待つ。
「誰にも言わないでくださいね……?」
深刻な表情のせいで、場がシンと静まり返った気がして息を飲む。
「実は……」
一体どんなことを言われるのか、自然と体が硬くなる。
「タイガーキックしてました……」
たいがーきっく?タイガーキック?タイガーキックって動詞だっけ?
思いもしない一言に脳みそはフリーズしてnow loading状態。
かろうじて出たのは
「は?」
の、一言……というか一文字だった。