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五月一日。ゴールデンウィーク始めの一日である。
世間はやれ家族旅行だ。やれショッピングだ。やれカラオケだゲームセンターだなんだ。
だが、受験生の俺には全くと言っていいくらい関係がない。まぁ、タイガと一緒に石巻に行く予定はあるのだが、それもゴールデンウィークの後半。
今日は別に予定があるわけでもないので、世間に対する恨みつらみを募らせながら朝から勉強していた。
朝八時から勉強していたのでかれこれ四時間ほど学校にいたことになる。
お腹が空いたのでコンビニにでも行こうかと自習室を出たとき、丁度スマホが鳴った。表示されている名前はタイガ。
嫌な予感はしたものの切るのは気の毒なので電話に出た。
「んだよ」
スピーカーから騒音と叫び声が聞こえる。
「シュンくんシュンくん、今って暇してますか?」
一度、思考した。
何かロクでもないことに巻き込まれるのではないか?
だが、今日の俺は世間に対する恨みつらみのおかげで勉強のモチベーションが上がっている。今ならどんな誘いだろうと鼻で笑ってジョークの一つでもかましながら電話を切る謎の自信があった。
「まぁ、暇だな」
「じゃあペニーランドに行きましょうよ!」
地元である仙台に一つしかない遊園地であるペニーランド。普通なら魅力溢れる、娯楽の少ない今なら喉から手を出して走り出したくなるようなお誘いだが、
「っふ……」
地元の中高生くらいならペニーランドが廃墟のような場所であることなど誰でも知っている(ペニーランドはフィクションです)。
あそこのアトラクションが怖いのはただ単にアトラクション自身がボロく(ペニーランドは実在しません)、スリルとはどこか似て非なる命の危機を感じるからである(ペニーランドなどという遊園地は存在していません。似たような名前、宮城県に似たような遊園地があったとしても本作品とは一切関係ございません)。
「おいおい、俺は受験生だぞ?そんなとこに行ってる余裕ねぇっつうの。こちとら成績の急降下がスリル過ぎて命の危機なんだよ。なんでペニーランドでまで命の危機に瀕しないといけないんだよ(ペニーランドは以下略)」
「わかりました。シュンくん来ないそうです」
タイガが急に俺ではない誰かにそう伝えた。
「おいタイガ、そっちに誰がいるんだ……?」
「えーっと、たまたま会った鈴木さんと吉田さんと……」
「よし待ってろ三秒で行く」
なぜ弘樹と吉田さんが?と思いはしたが今はどうでもいい。
吉田さんと一緒に遊園地に行ける機会なんて今日を逃したら一生来ないかもしれない。
散らかっていた勉強道具を片付け、財布の中身を確認してから地下鉄まで走った。




