1
桃色だった桜が気付かない間に緑へ変わっていた。
四月なんてそんな気付かない間に終わり、月はもうすぐ五月。目前にはゴールデンウィークとかいう受験生で毎日学校に通っている俺にはあまり関係ないと思われる黄金の週が近づいていた。
ゴールデンウィーク前の金曜日
「シュンくんはゴールデンウィークに何か予定あるんですか?」
目前に座る俺とは違って予定豊富そうなイケメンが嬉々として尋ねてくる。
「悲しいことになんもねぇよ」
俺の発言に口角が上がるタイガを見て多少イラっと来たため、奴の弁当箱に入っているエビフライを無言で奪い、口に運んだ。
「っあ!」
悲痛の声が上がるが知ったことか。
弁当に入っているもんだからシナシナなのを想定していたが、サクサクしていてとても美味い。
尻尾だけになったエビフライを証拠隠滅のために口に放った。
「あの、僕と一緒に石巻に行きませんか?」
「そういうことなら先に言えよ、エビフライが尊い犠牲になっちまったろ」
「僕が言う前にシュンくんが早とちりして食べちゃったんじゃないですか」
「あーっと、そうだった気がしなくもないな……」
ジト目でこちらを見られ、話題を切り替える。
「まぁゴールデンウィークは大概暇だから別にいいぞ」
「本当ですか!じゃあ五日の日、開けておいてください!」
五月五日、こどもの日に一体何をしようとしているのか?
俺の視線で察したのか、尋ねる前にタイガが口を開いた。
「行くのはもちろん!『岩ノ森光太郎漫画館』ですよ!」
岩ノ森光太郎。タイガが大好きな牙狼タイガーの作者であり、俺やタイガが住む宮城県出身だ。
そんな岩ノ森光太郎の漫画館が石巻にあるのだ。
こいつがそこに行きたいといつか言い出すんじゃないかと予想はしていた。
それに最近俺も牙狼タイガーに魅力を感じていたためタイガが何も言わなければ夏休みにでも誘おうと思っていた。
「あぁ、いいよ」
断る理由も見つからず、ゴールデンウィークの予定が一日だけ決定した。




