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八時二十五分
朝のHRは担任の井上先生が急用で不在なこと以外は何もなく終わり、シュンくんに会いに行こうと隣の三年二組に向かった。
「シュンく……」
教室を見渡し、シュンくんに声をかけようと姿を探すが見当たらない。
トイレ?いや、自販機でジュースを買っている可能性も……
他クラスの入り口で一人、物思いに耽っていると目の前に一人の男子生徒が立ち止まった。
「お、タイガじゃん。シュンを探してんのか?」
声をかけてくれたのはシュンくんの友達である鈴木弘樹さん。
「え、はい、その……シュンくんはどこに?」
他人と話すことに慣れていないため詰まりそうになる声をなんとか押し出した。
すると鈴木さんはどこか困ったように頭を掻きながら言った。
「さぁ、多分校長室にでも連れて行かれたんじゃねぇかな」
「え⁉なんでまた」
校長室なんて問題でも起こさない限り、掃除当番か何かでもなければ行くこともないだろう。
何か問題を?でも先週の金曜日は運動会だったし……
「あ」
そういえばシュンくんは運動会の日は僕と一緒に早退していた。理由は確か……
『ちょっと問題を起こしちまってな』
「運動会……」
そう呟くと鈴木さんは意外そうに眼を見開いた。
「驚いた……シュンが話たのか?」
「え?」
鈴木さんはやってしまったと額に手を当て、諦めたと言わんばかりに話しだした。
「実はな、シュンの奴ケンカしたんだよ。しかも一人で四人を相手に」
驚愕だった。僕の知らない間にというのもそうだが、何があったら運動会でケンカをするようなことになるんだ。しかも一人で四人を相手に?そんなの目に見えた負け戦じゃないか。
「あれ、でも……」
シュンくんを運動会の帰りで見たときには四人にボコボコにされたとは思えなかった。
あのジャージの下には目を背けたくなるような痣や生々しい傷の数々が……
「まぁ、さすがシュン。無傷で四人を圧倒してた」
頬をポリポリと掻きながら、鈴木さんはそう言った。
「へ、無傷?」
信じられなかった。普通ならば多勢に無勢というものだろうが、それをまさか一人で圧倒するとは……
「えっと、それで何でケンカになったんです?」
「あぁ……それはだな」
今度は気まずそうに頬を掻き、嘆息してから言った。
「仕方ないか……実はだな」
唖然となった。
鈴木さんの話してくれたことの顛末を聞くに原因は僕と言っても過言ではない。
そんなこと先週一緒に帰った時には話してくれなかったじゃないか。
なぜ。一瞬疑問に思ったものの、その答えは単純明快だった。
「僕、ちょっと行ってきます」
自分の手柄を見せびらかすヒーローなどいない。
「行くってどこへ?」
言ってから愚問と気付いたらしい鈴木さんは嘆息した。
「ったくしょうがねぇなぁ。おい、みんな!」
その呼びかけに教室が静まり返る。
「三組の……いや、こないだシュンがケンカした相手のことが知りたいんだけど何か知ってる人はいないか?」
すると数人が鈴木さんの周りを囲み、相手のことを一切考えていないような勢いで全員が話始めた。




