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次の日
お面男のおかげで三組の連中にもう一度事情聴取が入った。
結果的にこの件はケンカとして処理され、俺も三組の連中も厳重注意。実質お咎めなし。
それを学校に着いてすぐに関先生に呼び出されて伝えられた。
タイガも心配そうに俺を見送ったが、特に何もないことを報告すると安心したように笑った。
昼休み
「そういえばな、タイガ」
目の前で黙々と弁当の中身を空にしようと奮戦するタイガが顔を上げる。
両頬をリスのように膨らませ、咀嚼しながら何事かという視線を向けてくる。
基本的に食べるのが早い俺に気を遣って、俺が食べ終わったのを確認するとフードファイターでももう少しペースを考えて食べてるぞと教えてやりたいくらいの速度で食べ進める。よって……
「ッむぐ⁉」
「あ、おい馬鹿!」
のどに食べ物を詰まらせることもある。
ペットボトルのお茶を差し出し、詰まってたものを流してもらう。
「あんまり焦って食うなって」
「はー、息できないってめっちゃ怖いんですよね」
「だからやめとけって言ってるんだよ」
懲りてなさそうなので今度からは俺がゆっくり食べるように心掛けようと結論付け、元の話題に転換する。
「実はお前が喜びそうな話があるんだ」
「へ~なんですか?」
少々懲りたのか残り少ない弁当をゆっくり食べていたタイガがそう尋ねる。
「俺がピンチの時にな、通りすがりの牙狼タイガーが助けてくれたんだ」
「ッボフ」
「あ!きったねーな」
何に動揺したのか口に含んでいたお茶をミストにして吹き出した。
「す、すいまゲッフエッフ……」
「おいおい大丈夫かよ」
「えぇ、まぁ」
机をティッシュで拭き、また逸れた話題を元に戻す。
「牙狼タイガーなんているわないじゃないですか、あれはフィクション。作り話ですよ」
「お前ってそういうとこ割とリアリストなのな」
「そういうシュンくんの方こそ、未だにサンタでも信じてそうです」
「え⁉サンタって本当にいるんじゃないのか⁉」
「え、まじですか?」
「冗談だ、馬鹿」
何故かさっきからあのお面男の話をしようとする度に話題が逸れている気がする。
「まぁ、牙狼タイガーはフィクションだもんな。でも、俺を助けてくれたあのお面のヒーローは絶対にいるよ」
そう言うとタイガは可笑しそうに笑った。
「そうですね、きっといますよ」
「お礼も言いたいし、聞きたいこともあるし、また来ないかな」
「聞きたいことっていうのは?」
不思議そうに聞いてくるタイガに自分が今、疑問に思っていることを口にする。
「いや、なんで俺なんかのことを助けてくれたのかなってさ」
あのお面男はあのケンカを見ていなかったはずだ。俺も口を滑らせていないので何が起こったかも知らないと思える。
なのにどうして彼はあの時、あの場所に現れたのだろう。
するとタイガは自分が答えを知っているかのような口調で答えた。
「それはきっと、シュンくんがいい人だったからじゃないですか」
そう言われ苦笑した。
「ははっ、なんだそりゃあ」
そう言うとタイガは満足気に弁当を口に運ぶ作業に戻った。
俺は薄々……いや明確にあのお面男の正体に気付いている。
別に本人が言わないのであれば、俺の方からその正体について言及することはしないだろう。
なぜか……謎のヒーローは謎だからこそ、素の自分と一緒にいる人との関係を崩さずにいられるのだろう。
ここで正体をばらせば、彼は俺の『友達』から『恩人』になってしまう。
「ありがとな」
吐く息に紛れ込ませるように呟いた。
「何か言いました?」
「いや、なんでもねぇよ」
顔を上げ、こちらを見るタイガの額にデコピンを喰らわせた。




