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「さっきの彼は……?」
一人言いたいことを言った末にそそくさと消えていったお面男を疑問に覚えた校長が呟いた。
「さぁ?変声機で声は変わってましたし、お面で顔も見えなかったのでわかりません」
俺の発言に今まで放心状態だった教頭が息を吹き返し、バっとこちら向いて言い募る。
「う、う、嘘をつけ!さっきの奴は何年何組の誰だ⁉」
唾を飛ばしながら迫りくる教頭を一人の女性教員が呼び止める。
「あの、教頭先生……」
「なんだ!今、大事な話を……」
「今回の件、三組に事情聴取したのは教頭先生でしたよね?」
今度こそ鶴の一声と言うに相応しい発言に教頭が再び硬直する。
「そ、それはだなぁ……」
教頭は後ろに後退り、校長の机に手をついた。
「教頭先生、少しお話が」
「は、はい」
校長の静かだが威圧を含む声に教頭は即答した。
「中西くんは退室してもらって大丈夫だよ。この続きはまた後日」
「わかりました。失礼しました」
俺の隣で母も一礼し、校長室をあとにした。
「さっきの子は本当に知り合いじゃないの?」
校長室を出てすぐ母に問いかけられた。
「確証はないけど多分わかるよ」
それを聞くと母は、ふぅん。と言った後はもう何も聞いてこなかった。
その後、特に何の指示も無かったため教室に戻った。
戻るとクラスメイト達になぜかとても心配された。一応教頭より事情に長けているクラスメイトの方がこの件に関する俺の立場を正しく理解しているのだろう。
何故かタイガのことも心配された。彼らは校長室の一件を知る由もないので、関係ないと思うのだが……
二時間目以降は何事もないいつも通りの学校だった。
タイガと昼食を食べ、放課後も普通に勉強した。
そういえば件のヤンキー達が俺の教室を通り過ぎるとき酷く睨んできた気がする。睨み返す訳にもいかないので微笑みの爆弾をお見舞いしてやったが、睨み返してやりたいのも山々だった。
関先生も井上先生も何も言及してこなかったのを見ると、あの件の誤解が解けたと考えて良いんじゃないかと思う。
まぁ、ダメならダメで今度は色々な人から証言をもらって何とかすることにしよう。最悪、刺し違いにでもしてやらないと気が済まない。
俺は別に彼らを許したわけではない。なんなら今回のことで教頭の分を上乗せして更に怒っている。
何もない日のように教室の鍵を閉め、タイガと一緒に帰った。
とりあえず校長室に現れた謎の牙狼タイガーに関しては何も話さなかった。




