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運動会からの帰宅途中
「そういえばシュンくんはどうして帰るんですか?僕は頭をぶつけたからですけど……」
そう聞かれ、どう答えるべきか開けたばかりのペットボトルのコーラを飲みながら考える。
隠すことでもないのだが、別にこいつにわざわざ言うべきことでもないと思う。周りの人間がこいつに伝えるならともかく、俺本人が言うのは何か違う気がする。
「あぁ、ちょっと問題起こしちまってな」
問題?と、タイガは首を直角に傾けてこちらを見てくるが、別になんでもねぇよ。と、その話題に終止符を打つ。
しばらくして地下鉄に辿り着き、仙台駅に向かった。
電車の中でグゥ~っと腹の虫が鳴いた。それは奇跡的にも二人同時で、二人で苦笑した。
俺達が強制退場を喰らったのは丁度お昼時、クラスの友人達と食すはずだった母の手作り弁当にはまだ指一本、いや箸一本触れていない。
弁当を食べるか、どこか店にでも入るか、タイガに尋ねると名案とばかりに手を叩き、俺の手を引いて歩き始めた。
その行動に背筋が凍り、罵声を発しながら振りほどいた。
どこに案内されるのか多少の不安を抱きながら着いていくと、公園に辿り着いた。
「ここでお弁当を食べましょう」
と、言われてしまえば空腹な男子高校生にベンチに腰を落ち着かせる以外の選択肢は残されていなかった。
結局こうなるのか、学校の日と大して変わらないじゃないかと嘆息したが悪い気はしなかった。
見れば、昼下がりの公園には多くの子供達がキャッキャと遊んでいる。
なんともまぁ、微笑ましい光景だ。
弁当を開き、黙々と食べ勧めていると
「で、何をしでかしたんですか?」
ニヤニヤと、何の自覚もなく、楽し気にそんな質問をしてくるタイガにイラっときたため、タイガの弁当箱に入っている玉子焼き二つを箸二本で突き刺して口に運んだ。
「あ!そんなぁ~」
悲痛な叫びを上げるタイガだが、今のはタイガが悪い。
人には聞かれたくないことがあるということ理解すべきだ。
俺好みの甘い玉子焼きを咀嚼し、呑み込み終えると、タイガが俺のハンバーグを盗ろうとしているのが目に入り、タイガの箸を自身の箸で叩く。
「ひどい……」
「自業自得だ」
言ってもわからないだろうが、そうだけ言っておく。
「もしかして……」
お、何か気絶間際の記憶でもあるのかとドキッとする。
「あのことやっぱり怒ってるじゃないですかぁ!」
あのこと?心当たりがあるとすれば……
「あぁ、ハズレだ」
そう言って、間違ったペナルティとばかりにタイガの弁当のタコさんウィンナーを箸で刺して口に運ぶ。
「タコさぁん‼」
アニメで友人が殺された時のような声で叫ぶ。
見れば、子供達を連れてきたのであろうベンチで談笑中だったお母さま方の視線がこちらに集まっている。
まぁ、平日の昼下がりの公園で男子高校生が弁当食って奇声を上げてれば、何してんだと思うのは当たり前だ。俺だってそう思うさ。
「まぁまぁタイガ、あんまり詮索すんなってことさ。ほら、これやるから元気出せ」
「ブロッコリー……」
恨めし気にタイガがこちらを見てくるが、気にすることなく残りの弁当を口の中に詰め込んだ。
呑み込み終え、ベンチから立ち上がる。
「よし!時間も早いし、駅でもぶらつこうぜ」
「なんか、悪いことしてるみたいですね」
タイガはこういったことに経験がないのか、どこか楽し気だ。
親から怒りの電話がかかってくるのは、およそ二時間後のことだ。




