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運動会での強制退場を喰らい、自身の荷物を回収してクラスの人の誰にも何にも告げずに校庭をあとにした。
学校の最寄り駅には徒歩十五分ほどの距離がある。
一人で歩くのは気持ち的に辛いものがあるのでイヤホンを耳に突っ込み、大音量で音楽を流して車の音も、鳥のさえずりも、町行く人の喧騒も遮断する。
元々一人には慣れていた。二年生で問題を起こして部活を辞めてから、タイガと出会うまではずっと一人だった。
だから、こんなの大したことないんだ。たった一、二週間前と同じ生活に戻っただけだ。
気付かぬうちに足はいつもより早足に、鼓動もいつもより早くなっている。
なぜ?
一人が怖いのだ。一人の帰り道など慣れている。いつもしているはずだ。なのに、なぜこんなにも寂しいのだろう。なぜこんなにも悲しいのだろう。
今まで平気だったはずなのに、どうして急にこうなってしまったのだろうか?
決まっている。タイガの存在がそれだけ大きかったということだ。
知らず知らずのうちに俺はタイガに依存してしまったのかもしれない。やかましいと思っていても、一緒に帰ってくれる友達というのはとてもとても大切なものだった。
早足のまま橋を渡り、川を眺める。視界の端には未だ運動会が続いている校舎が写る。
騎馬戦で落下したタイガが少しだけ気になるが視線を前に向け、校舎から目を背ける。
スマホでイヤホンから流れ出す曲の音量を上げ、もう何も意識しないように鼓膜が痛みを錯覚するような音量で曲を流し続ける。
昼間だというのに歩いている人は多く、前からも後ろからも人が歩いてくる。
ドン、誰かにぶつかったのだろう。背後からの衝撃をそう決めつけて、また歩き続ける。
だが、何度も何度もぶつかられるうちに距離感覚が狂ってるにもほどがあると、後ろを振り向く。
そこには頭に包帯を巻いて笑顔でこちらを見るタイガがいた。
タイガは口をパクパクさせて何か言っている。どこか餌を求める鯉のようで可笑しい。
あぁ、そうか。と、耳で大音量で音楽を流すイヤホンを外す。
「一緒に帰りましょ、シュンくん!」
そう言って笑うタイガを見て、その言葉を聞いて、柄にもなく涙が溢れそうになる。
なぜここに?なんて無粋なことは言わなかった。俺にとって、今一番欲しかった言葉を彼は投げ掛けてくれたから、そんなことに思考する余裕は無かったのだ。
「あぁ……あぁ、もちろんだ」
涙を堪えながら、笑ってそう伝えた。
一人がこんなに辛いのかということを初めて知った。
そして、一緒に帰ってくれる友人がいることの大切さに初めて気が付いた。
「あれ?シュンくん泣いてるんですか」
顔を覗き込むタイガに反射で顔を背ける。
「バカ、違え、黙れ、タコ、こっち見んな、死ね」
「辛辣過ぎませんか⁉」




