13
騎馬戦を泣く泣く諦めた俺は、それを見渡せるブルーシートの上で胡坐をかいて座っていた。
「あ~出たかったな~」
一人でボヤきながら戦況を見守っていた。
騎馬戦は全クラスの代表によるバトルロイヤル。取った紅白帽の数がそのまま点数に換算されるため、身構える騎手にも、それを支える騎馬にも力がこもっているのか争いは激化している。
「楽しそうだ」
無意識に出た純粋な感想に嘆息する。
「あの……!」
おっかなびっくり声をかけられ、そちらを振り返るとサイドテールで大人し目な印象のサチと呼ばれていた女生徒と、その後ろには先ほどとは逆の立ち位置となったメガネで三つ編みおさげでツンデレな委員長の様なチーちゃんと呼ばれていた女生徒がいた。
サチは俺に声だけかけると、その立ち位置をチーちゃんに譲った。
それを見た俺は自分のカバンへノールックで手を伸ばし、バックを引き寄せた。
「えーっと……」
頬を染めて目を泳がすチーちゃんは何を言うか定まっていないのか、自分のおさげをイジイジしている。
そんな女生徒を見かねてこちらから話しかける。
「確かにあん時は財布持ってないって言ったよ?でもさ、ホラ、他人の目とかある訳だしさ……」
チーちゃんは一瞬ビクついてから俺の発言に表情を引き攣っている。
「あ!だから競技中なのか!今ならみんなの視線は騎馬戦に集まってるもんな!」
俺のヒラメキを耳にして形の良い眉毛がキリキリと上がっていく。
「まぁでも、俺だって買いたいものなんかある訳だし?そう簡単に渡したくはないもんでッブバ‼」
突然投げつけられた質量のある缶。激突した鼻が痛すぎて、ブルーシートの上で悶える。
「何すんだぁ‼」
「バーッカ!バーーーーッカ‼」
顔を深紅に染め、涙目で怒鳴るとチーちゃんはどこかへ行ってしまった。
それを見ていたサチは俺とチーちゃんの両方を交互に見て、こちらに歩み寄ってきた。
「すいません。でも、チーちゃんはあなたに謝りに来たんですよ?そのジュースはお詫びだって言ってました」
サチの言葉にバツが悪くなり、痛みが未だになくならない鼻を気にしながら謝った。
「すいません。俺も悪ふざけが過ぎました……悪いんだけど、あの子に伝えておいてくれません?えっと……」
チーちゃんと違い、サチと話すときはつい敬語になってしまう。
「あの子は中田千鶴、私は石田幸花です」
親切に名乗ってくれた少女に便乗して俺も名乗る。
「あ、俺は……」
「中西……中西俊太郎さんですよね?」
なぜ俺の名前が……?とか思ったが、タイガ関係だったりなんだりで割と名が通っている。まぁ、おかしなことではないと渋々納得する。
「じゃあ中田さんに悪かったって伝えておいてくれる?」
「はい、もちろんです‼」
そう言って立ち去ろうとした石田さんは「そういえば!」と大きな独り言を言ってから俺の方を振り返った。
「今度からチーちゃんにもっと優しく接してあげてくださいね!」
そう言ってウインクする石田さんを見て、男の子だから仕方なし。ドキッとした。
「あ、あぁ、わかったよ」
そう言うと彼女は走り去って行った。
改めて騎馬戦の続きを見ようと振り返ると、目に飛び込んできたのはタイガが騎馬から落とされる。丁度その瞬間だった。




