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「ねぇ、何あれ?」
「え~何してるの?」
「っうわ、かわいそ~」
周囲から疑問、驚き、困惑、同情、等々……様々な声がする。
その声の中心にいる人物なんて目立ちたがりか、変り者か、傾奇者のどれかだろう。
「なぁ、そろそろ離れてくれないか?」
「え、でも、怒ってますか?」
「怒ってないから離れてくれ」
「そりゃ怒ってる人は自分が怒ってるだなんて言いませんよねぇ」
まぁ俺だ。周囲の視線を一身に受ける目立って、変わっていて、かぶいている張本人は俺とタイガだ。
タイガは自分が俺の邪魔をしたということを大変悔いたらしく、先ほどから俺の腹回りをガッチリとホールドし、背中に顔を密着させて離れようとしない。しかも二足で歩く機能が失われたらしく、今は俺が引きずっている。
「何してるんだろうね~」
「中西先輩が武田先輩を引きずってる……」
「何?いじめ?」
「サイッテー」
最低はこちらのセリフだと言ってやりたいが、変に絡むと面倒なことになりそうなので聞こえないフリをする。
無視を決め込んで歩く俺の目の前に二人の女子が立ちはだかる。
前に立っているメガネで三つ編みおさげの子はいかにも気が強い委員長タイプという感じだ。
そんな委員長の後ろ隠れるのは、いかにも穏やかそうな顔つきで右の側頭部の髪を結った所謂サイドテールというのをしている。いらん情報だが、サイドテールの女生徒は胸が大きい。
「ちょっと」
委員長が威圧的に俺に向かって何か言ってくる。が、きっと俺の後ろにいる友達の女生徒にでも声をかけたのだろうと思い、タイガを引きずりながら委員長の横を通り抜ける。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
委員長がまたおれに対して何か言ってくる。
タイガを引きずってUターンし、自身を指さす。
「そうよ、アンタよ」
大体用件は察しがつくが、何となく訪ねてみる。
「あの、俺今財布持ってないんで……あ、でもジュース買おうと思ってたから百円くらいなら……」
「別にアンタの財布なんて欲しくないわよ!」
ムキにになる委員長。その後ろでは穏やかサイドテールが様子を伺うようにこちらを見ている。
「おいタイガ、あそこのツンデレ委員長がお前の財布欲しがってるんだけど……」
「誰がツンデレ委員長よ!」
ツンデレ委員長のことなど気にも留めず、タイガは答えた。
「僕今財布持ってなくて……あ、でもジュース買おうと思ってたんで百円くらいなら……」
俺は背後のタイガを親指で指さして言った。
「コイツも百円だけ持ってるってさ」
「なんでアンタら揃いもそろって百円しか持ってないの……」
それが俺たちに対する哀れみなのか、失望なのか、なんなのか……
「足して二百円だけど……どうする?」
そう聞くとツンデレ委員長は顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。
「どうするも何もいらないわよ!」
「そ、じゃあ俺たちはこれで」
「ちょっと待ちなさいよ!」
Uターンして去ろうとする俺を再び呼び止める。
「何だよ、金なら持ってねぇよ」
「別に欲しくないって言ってるでしょ‼」
涙目のツンデレは自身の目を拭い、落ち着いた声で話し出す。
「その人、どういうつもり?」
ツンデレが言っているのは今も俺の背から離れようとしないタイガのことだろう。
「それって俺に聞いてる?」
「あたりまえでしょ」
聞かれてもなぁ……
そう思い、本人に尋ねる。
「どういうつもりですか?」
「謝罪です」
「だ、そうです」
それを聞いたツンデレが激昂する。
「そんなわけないでしょ!どう考えたって言わされてるに決まってるわ‼」
こちらの話を聞こうとしないツンデレの背後から、サイドテールの女生徒が出てきた。
「チーちゃん、やっぱりイジメじゃないんじゃない?」
予想通りの穏やかボイスでサイドテールちゃんはチーちゃんと呼ばれているらしいツンデレに言った。
「でもサチ、イジメじゃないなら何?変態?」
こそこそ話にしては声が大きく、丸聞こえだ。まぁ返す言葉もないのだが……
「はぁ、ほらタイガそろそろ立って」
そう言いながら、タイガの首根っこを掴んで立ち上がらせる。
「怒ってないですか?」
怯えた子供の様な目でこちらを見るタイガに出来るだけ穏やかな笑顔で言った。
「あぁ、怒ってねぇよ」
その光景を見て、ツンデレは自分の間違いに気づいたようだ。
「誤解は解けたか、チーちゃん?」
俺がニヤニヤしながらそう聞くと、ツンデレは何か叫びながら走って行き、サチと呼ばれていた女生徒は俺たちに一礼してから追いかけて行った。
「何だったんだ?」
疑問が残る中、次の種目が何か聞くため弘樹の元へ向かった。




