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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

似たもの同士

 ベランダでタバコに火をつける。ドス黒いヤニを肺まで吸い込み、一秒、二秒、三秒、そして吐き出す。気持ちがいい。それを5、6回ほど繰り返し、タバコをスチールの灰皿に押し付けて消した。

 ベランダから家の中を見ると、女が倒れている。ガタガタうるさい女だった。今は静かだ。女はそのデカいケツで俺を誘惑してきたかと思うと、今度はデップリとした腹を見せつけてきて「妊娠した」と、のたまった。俺は仕方がないから結婚した。それからの日々は酷いものだった。俺は女を支配しようとしたが、女はそれに応えないようだった。だからウイスキーの空き瓶で女の頭を殴ってやったのだ。ウイスキーの空き瓶は女の頭より硬かった。

 さて、()()をどうしようか。女の頭は割れ、フローリングの隙間には血が入り込んでいる。このまま警察に捕まってしまうというのは、あまりにつまらない。幸い、女は叫び声をあげなかったし、隣人に聞かれていることはないはずだ。とはいえ、このまま死体を放置していればいずれ腐り、腐乱臭で勘付かれる。どうにかして処理をしなければならない。そう、行方不明にでもしたことにして。

 開けっ放しにしていたベランダから、焼き肉の臭いが漂ってきた。そう、これは肉だ。新鮮な食用肉なのだ。ならば、問題はない。食ってしまっても。


 俺は急いで食用肉の解体方法を調べた。イノシシの解体には骨から筋肉を削ぐ、骨スキ包丁が必要不可欠だ。とはいえ全身を解体するのだから骨を切断する必要があるだろう。ノコギリと大きい骨切り包丁も必要だ。硬いスジ肉を切るためには肉切りハサミも要るだろう。俺は用意するものを携帯のメモ帳に記してゆき、近所のホームセンターの場所を調べた。

 ホームセンターまでは車で片道15分ほどだった。焼き肉を食べるのは久しぶりだ。久しぶりに女のキンキンした声を聞かずに済んだのもあって、安心感からか腹が空いてきた。

 ホームセンターには俺が必要にしていた全ての道具は揃っていなかったが、それでも大まかには代用品となるような道具を買い揃えることができた。帰りにスーパーにも寄って、野菜と焼き肉のタレも買った。その頃にはすでに俺の腹は限界にまで空いていて、胃酸が煮沸しているようだった。

 

 俺は家に戻り、愕然とした。死体があったはずの場所にはわずかな血痕が残されているのみだった。そして、ガン!という強い衝撃を後頭部に感じる。俺は力を失って倒れた。薄れゆく意識の中見えたのは、ウイスキーの空き瓶を右手に握り立っている女の姿だった。ウイスキーの空き瓶は俺の頭よりも硬かった。


 俺は腹痛で目を冷ました。腹痛はいつものことだったが、これほど痛い腹痛は初めてだった。悪い夢を見すぎたのか。俺は起き上がり、いつものように目覚めの一本を吸おうとする。しかし体は起きない。

 俺の体に目を向けると、脚があったはずの場所に脚がない。その代わり、中途半端に折れた大腿骨が股間の両端から飛び出しているのが見えた。左腕も、肘の先から無くなっていた。折れた腕の骨が垂れ下がる筋肉繊維の中に埋もれていた。辺りには強烈な糞の匂いが漂っている。俺の腹は割かれ、大腸や小腸が体外に引っ張り出されてあらわになっていた。

 ほのかに焼き肉の臭いが漂ってきた。目の前のテーブルに女が座っているのが見えた。女はニタニタと笑いながら、美味しそうに()を頬張っていた。

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