生ゴミ爆誕-6
「あなたですねぇ? バーニャちゃんの裸を見た不届きものは! 覚悟してください!」
ターゴンと話すために席に向かう途中、さっき謎の美少女が逃げていった部屋から、気の抜ける甘ったるい声が聞こえた。
「喰らうですぅぅぅぅぅ! あぁ!? ぐぶぅ!」
すぐさま顔を向けると、さっきの謎の美少女よりも身長が頭一つ分高い代わりに、貧相な胸をした長いツインテールの青髪の少女が、杖を両手に俺へと殴りかかろうとしていた。
だが途中で、何もない場所で足をくじくと、そのまま顔から地面に転んでしまう。
「……なんだこいつ」
心の声が思わず飛び出してしまうほどの間抜けぶり。何もしていないのに自爆して、涙目になる少女を前に、俺はどんな顔をすればいいのかわからなかった。
「…………なんだこいつ?」
俺は改めてターゴンに向き直り、再度問いかける。
「二回も言わなくていい。その子はメイプルと言って……まあ本人から聞け」
ターゴンがそう言うと、倒れていたメイプルとやらはよろめきながら起き上がる。
メイプルは、さっきの謎の美少女、バーニャとやらとはまた別種の幼い顔をしていた。身長は高いがどこかシルと同じ幼い雰囲気を纏っており、俺より年下に見える。
疑いを知らなさそうなパッチリとした目と、空のように青い瞳なんかはシルにそっくりだ。胸はないがボディーラインは引き締まっており、白い魔道服を着ていてもスタイルの良さがはっきりとわかる。
「はれぇ~? ターゴンさんと知り合いなんですかぁ? 不審者じゃなくて?」
「ここに来る奴は大体俺を知っていないと来られない。それくらい知っているはずだが?」
「あ……そうでした。バーニャちゃんが涙目で不審者がいるっていうから飛び出しちゃいました」
「というより、ここで着替えるなと何度も言っているだろう。ここで着替える奴が悪い」
素っ気なくターゴンは言い切る。だよね? 俺は悪くないよね?
「まあ、お風呂に脱衣所がないので気持ちはわからなくもないですけどね~? ターゴンさんもたまにしか帰ってこないですし、バーニャちゃん……ターゴンさんに心酔してますから、見られてもいいとか思ってそうです。スケベですよねぇ~」
風呂と聞いて俺は首を傾げる。だがすぐに察しがついて、俺は背後の扉に手を触れた。
「なんて言えば風呂に繋がるんだ?」
「察しがいいな、【ゲート】という始動キーを唱えたあと、行き先を言うだけでいい。とはいえ、行き先は俺が登録してある場所にしかいけないが」
「あんたが作ったのか、これ?」
「不思議か?」
ターゴンの問いかけに俺は「別に」と首を振って返す。
正直なところ、魔法を使うタイプではなく、武器を使って殴りこむ戦士タイプの人間だと勝手に思い込んでいただけだからだ。眼に傷を負ってるし。
しかし……村で魔法を使えるのが教会のコビル神父くらいなのでこうやって魔法を見るのは久しぶりなのだが、本当になんでもありで笑ってしまいそうになる。
ちなみに魔法とは、ソウルジュエルを経由して、体内に循環された魔素を利用することで発動可能な超常の力のことだ。
炎を作りだすこともできるし、この扉のように空間と空間を繋げることもできてしまう。
その他にも品質の維持とか、空気の清浄とか、氷を作って食べ物を保管しておくとか、ありとあらゆる便利なことが魔法でできてしまう。魔素のないレベル0には絶対に使えない力だ。
「いやはや失礼しました~! バーニャちゃんの裸を見たって言うし、なんだか汚らしい恰好をしているので、ただの不審者かと思っちゃいましたよぉ~」
「この子、何気にオブラートに隠さずストレートにものを言うよね」
恐らく悪気はないのだろう。何もないところで足をくじいて転んでいたし、一人の話から勝手に想像を膨らまして暴走していたあたり、天然系不思議ちゃんなのだろう。かなりアホ寄りの。
「ということは新しいお仲間さんということですね? 改めまして私はメイプル・オーガストと言いますぅ~。歳は十四歳! これからよろし…………くっっっっっっっっっっっっっっさ!」
メイプルが笑顔で俺に近付き、握手を交わそうとした瞬間、信じられない速度で飛び退き、心から叫んでいるのがわかる力強い声でそう叫んだ。
なんだろう? すごく傷つく。
「ふぇぇぇえ~ごめんなさい。多分下水道のルートを通ってきたんですよね? それなのに私ったらおぇえええ! 失礼なことして本当にうげぇぇぇぇぇええ! すみま……おぇ!」
「申し訳ないと思う気持ちを少しも感じとれないんだけど?」
この子あまりにも酷すぎる。リューネでもここまで酷い仕打ちしてきたことないのに。
気付けばメイプルは部屋の隅っこで、汚物を見るような視線を俺に向けていた。
その顔で俺に申し訳ないとか言ってくるのだから、めちゃくちゃ残酷だよね?
「……とりあえず風呂に入ってこい。服は洗っといてやるからこれに着替えろ。話は……それからにしよう。俺は別にどうでもいいが……お前が耐えられなさそうだ」
俺は無言でターゴンが差し出してきた、これといって特徴のない布の服を受け取る。
あんた……気の利く、いい奴だったんだな。




