8 祓い屋
正哉の話の後、そのまま屋上でお昼を食べていたが……
寒い!
まだ風が冷たくて、移動も考えたけど
此れからまた、場所探しで校内を歩き回るのも嫌なので
仕方なく、ここで食べてしまおうと、残りのお弁当の中身を掻き込む
「ちゃんと味わって食べてよね」
「解ってるけど、早く食べて中に入らないと、凍り付きそうで……」
「もう、千尋が屋上に連れてきた癖に」
それを言われると、返す言葉は御座いません
まあ、早く食べた処で、香住が食べ終わるのを待つ事になるんだよね
そう思いつつ、最後の卵焼きに箸を入れる
うん、相変わらず甘い!
それも、尋常じゃなく甘い!!
甘過ぎるので、オカズと言うより、デザートとして、毎回最後に食べる
他のオカズは、最初の頃よりかなり上達してるのに、この卵焼きはずっと昔のままだ
まあ、甘い卵焼き好きなので、別に構わないのだけどね
甘過ぎる卵焼きに、舌鼓を打ちながら、お茶を飲んでいると
今朝出会った、不思議な先輩の事を聞いてないのに気が付く
「あ、そうだ!今朝その踊場を見付けたときに、不思議な人に会ったんだ」
「不思議な人?」
「うん、リボンの色で、上級生ってことは解るんだけど、背は香住と同じぐらいで、長い髪の……」
「んー、それだけじゃ…私と同じ身長で長い髪ってだけじゃ、沢山居るもの」
他に特徴ないの?と聞かれるが
「後は、その人『変わった身体してるのね』って言ってたんだ。まるで僕の正体に、気が付いているかのように…」
香住は暫く考えた後
「もしかしたら、『小鳥遊 緑』センパイかも」
まだ決まったわけじゃ無いけど、と付け加え
「隣の町にある、大きなお寺が御実家らしいんだけど、所謂『みえる人』って噂よ」
「みえる人?」
「うん、霊感が強くて幽霊とかそう言う類いが見えるみたい」
あくまで噂よっと付け足す
成る程
霊感が強いと言うことなら、僕の龍神化の事なんか見えてるのかも
「なんでも、小鳥遊先輩のお兄さんも、この学園の卒業生で、超イケメンだとか」
「そうなんだ……」
イケメンは別に要らない情報だ
そうでなくても、ウチには龍神が居るのに……
と、アイツの顔が浮かんでムッとする
「そのお兄さんも、霊感が強くて。今は、昼間大学へ通いながら、夜はお祓いを仕事にしてるんだって」
祓い屋かぁ
まさか、僕が祓われたりしないよね
その小鳥遊先輩だって、敵か味方か解らないし、出来るだけ近付かないように気を付けよう
あ、でも逆にそれだけ霊感強くて、色々祓って来てる人なら
この身体を元に戻す方法、知ってたりするかも
うーん
どうしたら良いのか
虎穴に入らずんば、虎児を得ずと言うが、入った途端に齧られてる絵図しか浮かばない
先輩については、暫く様子見かな