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龍神の花嫁修行  作者: 霜月 如(リハビリ中)
龍神ルート
79/83

49-3 柊の八尋鉾(ひいらぎのやひろほこ)

淤加美神(おかみのかみ)龗神(おかみのかみ)と二通り有りますが、

後者は、変換が難しいので、淤加美神(おかみのかみ)の方で行きます。

オロチに捕まって、隠世(かくりよ)籠雌(カゴメ)に閉じ込められた僕は、その世界から脱出を試みたのだが、あと一歩のところで上手く行かず。


そこで、突然聞こえた声の主『淤加美(おかみ)(のかみ)』様から助けてやろうか? とありがたい御言葉をいただいた。



淤加美(おかみ)(のかみ)……日本神話に出て来る、その御方は


『古事記』では淤加美神(おかみのかみ)、『日本書紀』では龗神(おかみのかみ)と書かれており


どちらも呼び方は『おかみのかみ』と呼ぶのです。



日本神話で、国産み、神産みをした伊邪那美命(いざなみのみこと)を死なせてしまった。火の神『迦具土神(かぐつち)』を倒した際に、剣の柄に溜まった血から、産まれたとされている神様で、龍神である


つまり、淤加美神(おかみのかみ)は、日本神話の古い龍神水神なのだ。



最古の水神様なら『綿津見神(わたつみ)』や『速秋津比売神(はやあきつひめ)』他四対八柱の神様が、水神様なんだけどね

(※四対八柱の神様は、男性女性それぞれの姿と呼び名がある為、四柱でも男女で倍の八柱神となっている)



名前の前に『高』と『闇』が着くが、『高』は山の日光の当たる、高いところから流れ出る源流、『闇』は暗い谷間から、出る源流を指す



なので、『高淤加美神(たかおかみのかみ)』なら、光の水(源流)を司る龍神


闇淤加美神(くらおかみのかみ)』なら、闇の水(源流)を司る龍神


でも両方とも同じ淤加美神(おかみのかみ)なんですよ



分かりやすく例えるならば、格闘ゲームで言う『1Pカラーと2Pカラー』って処かな

(※『光』と『闇』で属性が真逆だけど、同一の水神様です)



『御主、千尋とか言ったかや? 先程から聞いておれば、1Pだの2Pだの無礼ではないか?』


あらら、念話と同じく、考えてる事が伝わっちゃうのか


「やだなぁ、淤加美(おかみ)様。聞いてたんですか? ちょっとばかり、自分自身へ神話知識の確認をしていただけですよ」


『まあ、概ね合っておるが、妾が産まれた時、妹も居った筈じゃ』



淤加美(おかみ)様の妹の龍神様、御津羽(みつは)(のかみ)……双子神の妹で、同じく龍神

(※闇山祇(くらやまつみ)を加えた三柱神だと書かれた別の書もあります)



御津羽(みつは)(のかみ)は、灌漑(かんがい)の神様 井戸の神様として信仰されている



たぶん、そちらは僕の双子の妹である魑絋(ちひろ)の中に、居られたのかもしれないね


今となっては、分からないけど



『なんか妾達の紹介が、いい加減じゃのう』


「仕方ありませんって。本気で語りだしたら日付が変わってしまいます」


『うむ……』



余り納得されて居られぬようですが、我慢していただきましょう



「でも、淤加美(おかみ)様。ずっと僕の中に居られたんですか?」


『分からぬ。気が付いたら、御主と話せるように成って居った。たぶん御主が先祖返りしたのが原因じゃないのかえ?』


先祖返りか……そう言えば、赤城の龍神様が、その様な事言ってたっけな


ん?


じゃあ、淤加美(おかみ)様が僕の御先祖!?




「あの……淤加美(おかみ)様、この世界から抜け出せる方法って有ります?」


『急いでおるのか?』


「……はい」


『ふふ。あの雄龍が、心配なのであろう?』


「べ、別に。セイの事なんか…………」


『妾は、別に雄龍と言うただけで、名前は言うて、居らなんだがのう』


「うくっ……」


『御主の惚れた雄は、セイと言うのか……うん?』


僕の中に居て、声だけで顔は見えないが、イントネーションの感じから、面白がっているのが分かる。


「…………です……」


『なんじゃ? よく聞こえんぞ』


「そうです! これで良いでしょう……もう……」


どうせ、僕の中に居る以上、思ってることも伝わってしまうのだから、隠しても無駄なので白状した。


余りの恥ずかしさで、顔が火照ってるのが分かる


たぶん、鏡があれば、僕の顔は真っ赤であるだろう


『御主、初よのう。男経験は無しかえ?』


「あるわけ無いでしょ! 先月まで男の子だったんですよ!」



まったく、淤加美(おかみ)様は……どの辺から見てたんだろうか……


おそらくだけど、勾玉を貰って、先祖返りが始まってからじゃないかな? と僕は思う


何はともあれ、これ以上セイとの事で、からかわれるのも嫌なので、さっさと話を変えて仕舞た方が良いな



「えっと、淤加美(おかみ)様。この竹林に覆われた世界……籠雌(ここ)から出られるんですか?」


『なんじゃ、もう恋話は終わりかえ?』


「終わりです!」


『つまらんのぅ。まあ、今のままでは、出らんじゃろうて』


「え!? それじゃ……」


『慌てるでない、今のままでは無理でも、御主の身体を使わせて貰えば大丈夫じゃ』


「どうするんです?」


『交代するぞ』


淤加美(おかみ)様が、そう言ったとたん、僕の意思で動いていた身体が、淤加美(おかみ)様の意思で動き始める

(注、「」と『』の中が入れ替わります)



「なかなか、良い身体じゃ」


『あのぅ……後でちゃんと返してくださいね』


「分かっておる。おお、昔の妾程では無いが、胸もまあまあに有るではないか」


『いちいち、揉んで確かめないでください!』


巫女装束の白衣(しらぎぬ)の中に、手を突っ込んで居る淤加美(おかみ)様を、(いさ)める


まったく、このお方は……



淤加美(おかみ)様は、何処から出したのか、変わった種を取り出すと地面に落とした


すると、驚くことに、(たちま)ち芽が出て来たではないか


「このままでは、埒が明かんのう……少し早めるか」


そう言って、何やら唱えると、縁日の綿菓子を少し大きくした程度の雲が出来上がった。


雲からキラキラ光る雨が降り注ぐ


すると、あの小さな芽が、どんどん大きくなって、樹に成っていった。


『すごい』


「ふむ、元々龍神は『恵みの雨』と『五穀豊穣』の神だからのう。これぐらい朝飯前じゃ」


あっという間に大きくなった幹を前に、えっへんと胸を張る淤加美(おかみ)


『この葉は……柊? ですか?』


「うむ、正に」


『ええ!? 普通、柊って4メートル……大きくても8メートル位ですよね? これ10メートル超えてますけど!?』



「ふふ。では、見せてやろう! 剣だけが神器では無いとな!」


淤加美(おかみ)様はそう言うと、大きな柊に手を当てる


すると、手が幹の中に吸い込まれていき、中で何かを掴むと


今度は、中で掴んだモノを引きずり出した


『鉾!?』


「そう! これが『柊の八尋鉾(ひいらぎのやひろほこ)』じゃ!!」


柄の部分は柊で出来ており、その長さは10メートルを超え、尖端には金属の刃が付いてはいるが……


『長げぇ……』


とても、人の振り回せる代物じゃなかった



「千尋や、コイツを振り回して、槍のように扱うと思うて居るのかや?」


『違うんですか?』


「見ての通り、この長さじゃ。振り回すのは無理がある。八尋鉾はのぅ、術の媒体……『術師の杖』の役割で使うのじゃ」


確かに、それなら納得だ。


棒高跳びの棒だって、4メートル前後なのに。その3倍近い長さの鉾を、振り回そうとは思わない。



『でも、それでどうやって、この籠雌(カゴメ)から出るんです?』


すると、その柊の八尋鉾を、脇に構えると


淤加美(おかみ)様は、僕の見付けた現世(うつしよ)への小さな孔に、鉾を突き刺した。


「この柊の八尋鉾はのう、別名『日開きの八尋鉾(ひひらきのやひろほこ)』と言うての……」


突き刺した八尋鉾が、光輝いて行く


「こうして、日の本(ひのもと)への境界を開く!!」


そう、叫んだ途端。突き刺した孔が大きく開いた!


今じゃ! 淤加美(おかみ)様は、掛け声と同時に、外へ駆け抜ける


後ろを振り返ると、既に孔は閉じられていた


「間一髪じゃったのう」


『そうでね……』


さて、問題はどこに出たか? という事だけど


まさか、日本神話のオロチの癖に、外国へ通じる孔は創るまい


となると、日本の何処からだろう


周りの風景から察するに、何処かの山頂らしい



「お!? 此方に社があるぞ」


そう言って、淤加美(おかみ)様は、勝手に僕の身体を操り歩いていく


手に持つ長い八尋鉾が、時々斜面に突き刺さり、非常に歩きずらそうだ


淤加美(おかみ)様~。そろそろ、身体返してくださいよ』


「まだ良いではないか」


そのまま建物に向かって、歩いて行くと案内板が出ている


『大剣神社……四国のT県、剣山じゃないですか!?』


「ほう。関東から、また遠くまで飛ばされたのぅ」


『つい何日か前に、内海で宝剣探しを、したばかりなのに……』


「しかし、好都合ではないか? ここが神社なら『龍脈移動』が使えるゆえ」


『そうか! その手があった!』



淤加美(おかみ)様は、言うが早いか、龍穴を開く





「むう……八尋鉾がつっかえた」


『アホー、何でこう龍神様ってアホばかりなんですか!』


「仕方なかろう。八尋鉾が阿呆みたいに長いのだからの。妾のせいでは無いわ」


『もう、八尋鉾って、仕舞えないんですか?』


「…………どこに仕舞うんじゃ?」


『いや、なんかマンガとかで良く有る、5次元ポケットみたいなのは無いんですか?』


「ごじ……? 何んじゃソレは?」


『いえ、知らないなら良いです』

そうか。セイと違って、漫画やアニメとかの話しても、分からないよね。


でも、困ったな……



「八尋鉾を、置いていく訳には、行かないですよね?」


『神器を棄てて行くのかえ?』

不味いですよねえ




その時、スマホが振えだす。



「なんじゃなんじゃ……この板が、怒り狂って振るえて居るぞ」


『あ、えっと……画面の通話って書いてある処を、押してください』


「ここか? ここを押せば良いのじゃな?」


『そうです、軽くで良いですから、指先でタッチする感じで……』


ぎこち無い手付きで、何とか通話を押して貰うと、向こうから西園寺さんの声がする



『えっと、千尋君?』


「うわぁ! 板が喋ったぞ!」

そりゃあ、電話ですから喋りますって


『……あれ? 掛けた相手間違えちゃったかな?』


「こ、これは……板に、話し掛ければ良いのか?」

そうですよ、話してみてくださいと促す


「ほ、本日は晴天なり……」

天気予報か!


『……あの、千尋君だよね?』


「あ、いや。千尋は訳あって交代しておる」


『え? どちら様で?』


「妾か? 妾は、淤加美(おかみ)(のかみ)と申す龍神じゃ」


淤加美(おかみ)神様って、日本神話の龍神様!?』

あ、西園寺さんの声が上擦った

そりゃあ、神話級の神様が相手じゃ、そうなるよね


「うむ! 今、妾は千尋の身体を借りて、顕現しておる」


『えっと、じゃあ千尋君も聞いてるんですね?』


「一緒に居るからのぅ」


『では、草薙の剣は、無事に()()()()へ預けてきたと、御伝えください』


「ほう、アレを研げる者が、人間に居るとはのう」


『ただ……時間が掛かりそうなのですよ』


あらら、出来れば直ぐに、使いたかったのになぁ


残念



「まあ、モノがモノだけに、人間には手に余るじゃろうて」


『という事で、職人さんの邪魔になっても行けないので、此方も瑞樹神社へ向かってるところです』



僕は、オロチのもう一頭が、封印が解けて居ることを、淤加美(おかみ)様に伝えて貰う


『それは、本当ですか?』


「うむ、妾も千尋の中で聞いておったが、間違いない」


『……2頭もですか……厄介ですね』


「しかし、協闘して居るようには、見えんかった」


『そうなんですか?』


「うむ、どちらかと言うと、先に心臓を手に入れ。身体を独り占めしたいような、口振りじゃった」

確かに、オロチは焦って居た


夜のコンビニで、逢った時みたいに、余裕が感じられなかったし


『しかし、協力して無いなら、好都合ですね。再封印の道具も持ってきてますから、弱らせて貰えれば……』


「弱らせるなら、問題は無いが……再生が強すぎて、直ぐ戻ってしまうじゃろうて……」


『タイミングが重要ですね。とりあえず、此方は高速飛ばしてますので……約1時間弱位で着きます』


「妾達は四国じゃが、急いで向かおう」


『四国!?』


「大丈夫じゃ」


『わ、分かりました……宜しくお願い致します』

そう言って電話が切れた


西園寺さん、最後声が裏返ってたし




『でも、淤加美(おかみ)様。本当に大丈夫なんですか? 八尋鉾が邪魔で、龍脈通れないし』


「ふ、千尋や、我らは龍神ぞ」

正確には、僕はまだタダの龍ですけどね


『それで?』



「龍神は空を舞えるのじゃ」


…………


『ええええええ!? 空を舞うって……翔ぶって事ですよね?』


「いかにも!」



マジかー


出来れば、墜落しないでくださいね。


僕は、ただ祈るばかりであった。



さて、終わりが見えてきました。

何故か、最終話が先に書き上がってしまい。それに合わせて調整してます。

と、同時に。斎藤正哉君が主人公の話も少しずつ書いてますが、そちらは新規でコメディ枠にするか悩み中です。

それでは、あと数話ですが、お付き合いくださいませ。





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