6 バレた!
ジャージに着替えて校庭に出ると、皆整列していた。
「すみません、遅れました」
そう言いながら列の端に並ぶ
「瑞樹か、お前病み上がりだって聞いたが大丈夫か?」
「大丈夫です!」
「そうか、今日は体力測定だから、辛そうなら後に回しても良いぞ」
本当に大丈夫ですからと、正哉と組んで準備運動を開始する
どうせ苦手な運動だ、後回しにしようが大して数値に変わりはない
「なあ千尋、勝負するか?」
「何言ってるんだよ、僕が正哉に勝てるわけ無いだろ」
はっきり言って、僕は運動音痴だ
幸い、学年ビリには成ってないが、ワースト5に入っている
そんな僕に、学年トップクラスの正哉が勝負だなんて、嫌がらせも良いところだ
正哉の奴、結構女子に人気があるのだと、香住から聞いたことがあるが
休みの日は、大体僕と一緒に遊んでいるか、妹と出掛けているかの2択なので、女子と付き合ってる時間があるようには思えない
実に勿体無い奴である
「おーい瑞樹お前の番だぞ」
と先生から呼ばれる
立ち幅跳び…苦手なんだよなぁ
じゃあ、逆に得意な種目はなに?と聞かれると、そんなの無いわけで
詰まる所、全部苦手なのだ
踏み切り線の前に立つ
はぁ……
せめて、平均は行きますように……
願いを込めジャンプをする
「え?」
思っていたより視線が高い
クラスメート達の背を、遥かに超えるほどの跳躍
簡単に砂場を飛び越していた
何が起きたのか……頭で理解できずに全員が停まる
これって……龍神に変わり掛けてるから?
「も、もう一回計ろうか」
と先生が我に返る
次は失敗しないよう、無難に2メートル弱位で跳んでおく
加減して跳ぶなんて初めてだ
続いて50メートル走、ハンドボール投げ、持久走と終わらせる
全力で挑むよりも、気を使って余計に疲れた
「よーし、残りは後日、体育館で行う、解散」
と先生の合図で1時限目を終了する。
また、正哉に捕まり更衣室に連れて行かれる前に、急ぎ屋上手前の踊場に向かう
今朝の先輩が居ないか確認し、ジャージを脱ぐ
しかし、あの先輩……僕の正体に気付いているようだった
気になるので、お昼休みでも香住に聞いてみよう
ワイシャツを着ようとしていると
誰かが、階段を昇って来る音がする
マズイ
「確かこっちに来たと思ったんだけど……」
あの声……正哉!?
あぁぁどうしよう……
あたふたしていると、昇ってきた正哉と目が合う
「や、やぁ……」
そう一言絞り出すのが精一杯だった
「千尋……お前その胸……」
サラシで巻かれた胸を指差して正哉は固まっている
バレちゃった……