表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神の花嫁修行  作者: 霜月 如(リハビリ中)
分岐 『小鳥遊 緑』 『小鳥遊 小百合』ルート
54/83

40-2 お寺に宿泊

殆ど、有事の際の避難所と化している、寂れた公園を出た後

僕らは、先輩の御実家のお寺へ、集まっていた。


魔法少女の、変身解除を模索すると思いきや

まさか、悪役を作れば良いって発想に、行くと思わなかった。

この場合の悪役は、変身解除の為の『やられ役』となるのだが

どうせ、僕がやらされるんだろうな…



「一応、咲哉(さくや)君…咲哉さんのが良いかな?咲哉さんの実家の鞠菜姉さんの方には、ウチ(お寺)に泊まるって連絡しといたから」


「ありがとうございます。あと、『さん』じゃなく『君』で良いです。なんか…慣れてなくて、恥ずかしいから」

そう言って照れてる咲哉君

初々しいなぁ



て、ほんわか見ている場合じゃない

廊下に、先輩を連れ出して、小声で話す。

「先輩、僕は女の子って身バレするとマズイんですから!」

「そうは言っても、咲哉君…気が付いて無いみたいよ」

確かに、胸にサラシ巻いて、男の子の姿で学園通ってる、瑞樹千尋とは思っていないようだ。



「ねえ千尋ちゃん、バレちゃったって良いんじゃない?バレると何かペナルティでもあるの?」

「そんなのは…たぶん無いですけど…」

「じゃあ、いっその事、学園の理事長にでも、ぶち撒けて(おおやけ)にしちゃえば良いのに」

それが出来れば苦労しない

「先輩、一応戸籍ってのがありましてね…」

「さもなければ、顔が知られてない隣県の女子高にでも、一緒に転入しちゃう?」



凄いこと考えるな…

んー、それも有りか?

顔バレしてない遠方の高校なら、最初から女子でしたって通るかもだし


でもそれは、ただの人間の女子ならでの話である。

僕は今、龍神によって雌龍にされいてるのだ。

龍の命を削って、この地を災害から護ると言う契約は無くなっても、神祐地に管理者の居ない空白地にするわけに行かず。

今の龍神が天に帰れば、僕が次期龍神として残らねば成らない。

そう考えると、この地を離れる訳には行かないんだよなぁ



「まあ、バレて騒ぎにでもなったら考えますよ」

「あらら、そっか…龍神としての、務めがあるんだったわね」

「そう言うことです。出来るだけ学園には波風を立てずに、男の子で通すつもりです」

そう言って、貰った服とか荷物を纏め


「じゃ、僕はそろそろ帰りますね」

「ちょっと!元男の子の咲哉君と二人きりにするつもり?」

「先輩…一応、僕も元男の子なんですが…」

「千尋ちゃんは、もう戻れない女子でしょ、咲哉君は戻れる女子なんだから」

同じ元男の子で、変わりはないと思うが…



そこに、股間を押さえた咲哉くんが

「あの…お話のところ悪いですけど。トイレ貸して貰えませんか?オレ、ずっと我慢してて…」

「あ、ごめんなさいね。こっちよ」

そう言って、トイレに案内していく先輩

結構世話好きなんだよな、僕の服とか口利きしてくれたし、何だかんだ助けてくれる頼りになる人だ


「あれ!?…わああ!」

咲哉君の悲鳴が聞こえる

駆け付けてみると、トイレで泣きべそかいてる咲哉君が…

「あぁ…やっちゃいましたか…」

ウチの神社のように、外国人参拝者向けに洋式にしたのと違って、昔ながらの和式のままだったせいか、立ってしちゃったんだろう…



「ごめんなさい。女の子初心者だったわね、ちゃんと教えてあげれば良かったわ」

そう言って雑巾を持ってくる先輩

「あ、オレがやります。自分で拭きますから」

「ここは良いから、濡れたままじゃ、取り替えないと気持ち悪いでしょ。千尋ちゃんとお風呂行ってらっしゃい」

ちょ!さらっと凄いこと言うし


「あの~先輩、僕先輩の家のお風呂解らないんで、僕が掃除しておきますよ…」

「あら、お風呂の場所は、この廊下真っ直ぐずっと行ったところの、離れがそうだから」

そう言って意地悪そうにニヤリと笑う


意地でも泊まらせる気だな

貰った着替えがあるから、泊まれなくはないのだが…

女の子と入浴!?

咲哉君、元男の子でも、今はモロに女子なんですが…

「ほら、早く行った行った。着替えとバスタオルは、後で持ってってあげるから」


く、仕方がない

咲哉君と二人で風呂へ向かう

落ち着け…外見は女子でも、中身は同じ男子なんだ。

相手の身体見ないようにして、さっさと入って出ればいいだけのこと


となれば、相手が脱ぐ前に、自分が脱いで風呂に飛び込む!それしかない!


風呂に向かう廊下を、早歩きで進む

ん?

咲哉君も気が付いたか!?

僕を追い越す勢いで早歩きをしていく

先に脱がれてたまるかぁ!

お互いに速度を上げていき、最後は走っているのと変わらなくなっていた。


「こらぁ!!廊下を走るとは何事だ!」

住職に首根っこを掴まり、引き止められる

「先輩のお父さん、これには深い訳が…」

「キミにお父さんと呼ばれ…るのも悪くないが…」

おい、聖職者


「とにかく、二人ともこっちに来い!」

そのまま引きずられて御堂へ


どうしてこうなった…

お風呂に入ろうとしていたら、なぜか坐禅を組まされている


「あの~ご住職、ちょっとした誤解が…」

「私語は厳禁!」

そう言って、住職は警策(きょうさく)を振りかぶる

「甘い!白刃取り!」

小百合ちゃんの時は失敗したが、2度も同じ失敗はしない。見事今回は白刃取った!


「菩薩の手の代わりである警策を白刃取るとは、なんたる罰当たりな!」

「ウチは神道ですから良いんです!」

ぐぬぬっと住職と睨み合う


「もう、お風呂に居ないと思ったら、お父さんと二人で何やってるのよ」

先輩が御堂の入り口で呆れている。

「先輩、助けてお父さんに…ヤラレチャウ」

「キミ!そう言う誤解を招くような、言い方は止めたまえ。それからお父さんってもう一回言って」

ダメ坊主め…



「千尋ちゃんは良いとしても、咲哉君が濡れたままで可哀想でしょ」

「それは解ってますが…今力を抜くと、警策が炸裂するんですよ」

「緑!なんだこの娘は!さっきから罰当たりな事ばかり…」

先輩は、埒があかないと首を横に振るとご住職に向かって

因陀羅耶 莎訶(いんだらや そばか)

ちょ、帝釈天の真言!?

雷撃が住職を襲う

「んぎゃな!」

宮古島方言の苦菜とは、凄い悲鳴だ。


僕まで、警策伝いに電撃で痺れるかと思いきや、『守護神』の反射があったんだった、忘れてたわ


「先輩…やり過ぎなんじゃ?」

「大丈夫よ、ちゃんと加減したから」

加減!?

プスプス言ってますけど…


「ほら、お父さんは放って置いて良いから、お風呂に入ろ」

住職…存在(ぞんざい)に扱われてるなぁ


御堂で倒れてる住職を他所に、お風呂に向かう3人

3人!?

「まさか、先輩も一緒に入るんじゃ?」

「勿論、入るわよ。左手のギブス濡らさないように、ビニール袋被せるから、上手く洗えないのよ、だから背中洗ってね」

「ちょっと待って、先輩さっきどうやって、帝釈天の印を結んだんですか!」

「あのね、折れてるのは前腕、手首から先は普通に動くのよ」


咲哉君だけでも、目のやり場に困るのに…先輩も一緒だと!?

勘弁してください。



脱衣場で固まる僕と咲哉君

先輩…少しは元男の子の僕達を意識してくださいよ

普通に脱がれると…ねえ


「だいたい、先輩鼻血とか大丈夫なんですか?」

下着姿になった先輩の左手にビニール袋をテープで固定しながら尋ねる

「大丈夫よ!もうそこまで血が無いわ」

ダメじゃねーか!


「嫌ですよ、出血多量で救急車呼ぶなんて…」

それも鼻血で…


「お二人とも仲が良いんですね、どんな関係なんですか?」

どんなって…


ん~寺と神社で商売敵?

それとも、ただの先輩と後輩?

いや待てよ、『処女(はじめて)』を狙われてるんだし…

「痴女と被害者」

「誰が痴女よ!」

そう言って頬っぺたを引っ張られる



「あはは、ウチのねーちゃんとオレみたいですね」

それは何か?先輩と僕が姉弟、いや姉妹みたいだって事なのか…

「姉妹だそうですよ」

「違うわ、千尋ちゃんとは恋人よ」

「えええ!?」

僕と咲哉君の声が見事にハモる

「お二人共、女性に見えますが!?」

「僕も初耳です」

「どうせ、千尋ちゃんの『処女(はじめて)』は貰うんだから、恋人で良いんじゃないの」

僕は承諾してませんけどね



結局、咲哉君に先に脱いで入られてしまった

ギブスに、ビニールを巻き終わった先輩が、続いて入る

僕が、裸の二人が居る浴室に入るとか…1番緊張するじゃないか!


成るべく、天井に視線を向けながら、入っていく

それでも、足元確認するときに、視界にはいってしまうわけで…

湯船につかる咲哉君と、頭を洗う先輩が目にはいる



「頭洗い終わったら、背中お願いね」

ヤバイ、目のやり場が無い

こうなったら…頭が洗い終らぬよう、先輩の頭にシャンプーを追加する


「なんで、今日に限って泡立ちが…まさか…千尋ちゃん?やったわね!?」

「何の事でしょう」

先輩は目の周りだけ拭うと、後ろを振り返る

「先輩!こっち向いたら丸見えに!」

「うるさいよ!」


そのまま立ち上がろうとしたら、いつも以上の泡で脚を滑らせて、僕の上にダイブする

ごふ!!

僕の溝内に、先輩の肘がめり込むんで、痛みで動けない

「ほーら、今度はこっちの番よ」

そう言って僕に馬乗りになるが、暴れたせいか先輩の目にシャンプーの泡が入る

目があぁぁと痛そうに悶える先輩


「けほ…先輩落ち着いて、シャワーで目を流しましょ」

「ちょっと、どこ触ってるのよ!」

「だって、まず馬乗りを止めて貰わないと」

「どうなってるのよ!目が染みて何も見えないじゃない!」

「それ僕の胸です。あまり強く掴まないでくださいよ」

「こっちは片手なのよ、滑るし見えないし…わぁ!」

立ち上がりかけてたのが、また滑って僕の胸の上でバウンドする

「先輩、人の胸で遊ばないでください」



あーもー埒があかない

「ごめん咲哉君、シャワー出してくれるかな?」

返事がない

「咲哉君……わー!先輩、咲哉君が!」

鼻血を出して湯船の中で死んでいた。


……

「まったく、酷い目に遭ったわ」

「本当に…」

「誰のせいよ!」

「まあ、咲哉君も無事だったし、終わり良ければ何とやらですよ」

あの後、どうにかシャワーで泡を洗い流し、咲哉君を回収。布団に寝かせて事なきを得た


「もう!怒られる前に、真っ赤な湯船を掃除してくるわ」

そう言って先輩は部屋を出ていく

さすが、お寺だけあって、広い畳の部屋に布団を敷いて寝ることになった

ちょっとした修学旅行気分だ。



「こんばんは、えへへ私もお泊まり会に参加します」

そう言って、小百合ちゃんがパジャマ姿で現れる

「ちょ、小百合ちゃん、それで外歩いてきたの?」

「直ぐ隣ですから」

そう言えば、先輩と従姉妹でしたね

小百合ちゃんは、一度家に帰って、親と夕御飯を食べながら、宿泊許可を貰ってたらしい

無事許可されました、とピースサインをする

可愛いのぅ、正哉が妹を溺愛するのが、わかる気もする…ちょっとだけね



「瑞樹先輩、トランプ持ってきましたよ」

「二人だから…真剣衰弱しよう」

「良いですよ、ハンデあげます」

「ほほう?」

「瑞樹先輩は3回連続で引いても良いですよ」

「え?」

なにそれ…なにか仕掛けでもあるのかな?

カードを調べたが、穴も切り込みも無いようだ

取り敢えず、一回やってみよう


シャッフルして並べていく

「瑞樹先輩からどうぞ」

そう言われて3回カードを捲るが、当たったのは1組だけ

「じゃあ私の番ですね」

捲るカードが次々に当たっていく

「ちょ…」

「えっと、次はこれとこれ…」

1回も間違えがない…この娘…全部見えてる!?

結局僕は最初の1組だけで、残りは全部小百合ちゃんに取られてしまった


「あら、小百合のカードにやられたのね」

風呂掃除が終わって、戻ってきた先輩が覗き込んでくる

「姉様!ネタバレは駄目ですよ」

「やられたって?」

「小百合はね、1メートル以内の無機物を透視出来るのよ」

「なにそのチート能力」

「あーあ、ネタバレしちゃった」

「いやいやいや、凄いじゃん!!小百合ちゃん、一緒にラスベガスへ行こう!」

「まだ未成年ですよ、それにイカサマは駄目です」

だけど、1メートルって言うのが微妙な距離だ


その後、途中で復活した咲哉君も仲間に入れて、トランプをした

勿論、小百合ちゃんにカードを引かせるときは、1メートル以上離れてだが



そのまま、寝落ちするまで、カードゲームや雑談をして、元男子が入った奇妙な女子会?は続いたのだった。


そして、夜中の3時頃


僕はトイレに行きたくて目を覚ます。


トイレに向かい、廊下を歩いていくと


「小百合ちゃん?」

「瑞樹先輩…」

「眠れないの?」

「…はい…」

廊下の端に座って、夜空の月を見上げている

夜空が綺麗に見えるのは、街灯が少ない田舎の特権だ



「先輩…私はもう2度死んでるんです」

「え!?」

「おかしいですよね」

正直、言葉につまる

「すみません、変なこと言って、聞き流してもらって構わないですから」


「えっと…ごめん、トイレ行ってきて良いかな?漏れそうで」

「あ、はい。引き止めてしまって、すみません」



風邪引かない内に、部屋に戻りなよと声を掛け、その場を離れる


でも、何だ2回死ぬって…どっかの国の、殺しのライセンス持ったスパイかよ


また厄介なことに、巻き込まれなきゃ良いなぁ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ