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龍神の花嫁修行  作者: 霜月 如(リハビリ中)
分岐 『小鳥遊 緑』 『小鳥遊 小百合』ルート
53/83

39-2 魔法少女

「先輩大丈夫ですか?」

喫茶店を出てから、ふらふらと歩く小鳥遊先輩に声をかける


「し、心配無いわ…血が欲しいだけだから」

「なんだか、吸血鬼みたいな台詞(せりふ)ですね」

「千尋ちゃんの血を吸えと?」

「先輩になら構いませんけど…美味しいかどうかは、保証できませんよ」

そう言って肩口の服をずらし、首肩を露出させる。


「ちょ…せっかく止まった鼻血が…これ以上血を失ったら…マズイのに」

ダメじゃねーか


だいたい、何で女の子の裸に、鼻血吹くかなぁ

先輩…本当にソッチの気があるんじゃ…

まあ、女の子って言っても、中身男の子ですけどね



「先輩…無理しなくも送っていきますから、御実家のお寺って、こっちで良いんですか?」

「いえ…大丈夫よ、はぁはぁ…私が千尋ちゃんを送っていくわ」

そんなに、ふらついてて、無茶ですってば…


仕方ない…小百合ちゃんに電話をして、住所を聞こう


『はい、小鳥遊です』

「小百合ちゃん?お姉さんの身柄は預かっている、返して欲しくば住所を教えなさい」

『あ、あの…私が、身代わりに成って、瑞樹先輩と一緒に居ちゃダメですか?』

「小百合ちゃんが身代わりにになっても、送って行くのは変わらないんだけど…」

『え?』

「え?」

おかしいな…話が通じていないぞ



「ちょっと…はぁ…誰に…電話してるのよ…」

「先輩が、御実家のお寺に案内しないから、小百合ちゃんに聞いてるんです」

「余計な…ことを…ちょっと貸して…もしもし小百合?…」

スマホ奪われたし


「はぁはぁ…私は無事なんで…はぁ…心配しないで…うん、はぁ…うん、千尋ちゃん送ったら…帰るから、うん…じゃあね」

ちょっと先輩…その苦しそうに、はぁはぁ言ってると、誤解されそうなんですが…


「はい…スマホ返すわよ、はぁはぁ…じゃあ遅くなる…前に…帰りましょ」

貧血起こしてるのか、ちょっと動くだけで苦しそうだ

その原因が、鼻血による大量出血とか…嫌すぎる



仕方ない

僕はしゃがんで、先輩を背中に負ぶさると、そのまま歩き出す

「ちょっと…千尋ちゃん」

「一応、これでも次期龍神なので、力は人間よりあるんですよ」

そう言って大通りへ向かって歩く



「あの~先輩?間違った方向に進み過ぎる前に、道教えて下さいね」

「どうしようかなぁ、このまま町内一周させちゃおっか」

この人は…

「…本当に、一周したら捨ててきますから」

「ウソウソ、だから捨てないで」



街灯の灯りに照らされて、殆ど人通りの無い田舎道を歩いていく

4月下旬とはいえ、夜はまだまだ少し冷える


「先輩、寒くないですか?」

「うん大丈夫…千尋ちゃんの背中温かいもの」

そう言って、ピタッと頬をくっ付けてくる感触が、背中越しに伝わる


中学を卒業以来、この山手方面には用事が無くなり、もう来ることは無いと思ったが

意外な縁ができて、また来ることになるとは…

女の子されて、良いこともあったって事…かな



しばらく無言で歩いていると

「千尋ちゃん、シュレディンガーの猫って知ってる?」

「えっと、確か…中身が見えない箱に、猫と毒瓶を入れてってヤツですよね?」

「そう密封の箱の中で毒瓶を割って毒ガスが発生しても、中身を確認するまでは猫の生死は解らない」


生きていると死んでいるの両方の状態が同時に存在する。そう箱を開け中を確認するまでは…



「そのシュレディンガーさんが、どうしたんです?」


「私の弟もね、正にそんな状態なのよ」


「はい?」

先輩の弟さんって…あの気を失ってる時に見た、Tシャツ短パンの男の子だよな…


「今、ここに居れば13…いや14歳かな」

「小百合ちゃんと、年子って事ですか?」

「あ、言ってなかったっけ?厳密に、小百合は私の妹じゃないわ」



「えええええ!?初耳ですよ!!でも姉様って…」

「ん~従姉妹(いとこ)になるのかな、私の父の弟…つまり叔父さんの娘だから」

知らなかった…てっきり実の姉妹だとばかり…


「じゃあ、苗字が同じってだけで、血の繋がりはないんですね」

「全くゼロって訳じゃ無いわよ、従姉妹(いとこ)なんだし。姉と呼んでくれてるのだって、慕ってくれてるからだもの、無理に止めさせて、小百合の気持ちを無下にする事も無いでしょ」

「それはそうだけど…ビックリしたなぁ」



「何がビックリしたんです?」

「うわ!出た!」

噂をすれば何とやら、小百合ちゃんがいつの間にか現れていた。


「もう、出たとは失礼ですよ」

「あ、いや、ごめん急に現れたからつい…」

「姉様が、電話越しに、呼吸も荒く辛そうだったので、探しに出て来たんです」


何があったんです?と聞かれたが、まさか鼻血出しすぎて、貧血起こしたと言えず

先輩も、自分で説明するかと思いきや、背中で狸寝入りしてるし

僕は笑って誤魔化すしかなかった。



「小百合ちゃんの家は、この近くなんだ?」

「この先の大通りを渡った反対側です。姉様の実家のお寺も近くですよ」

なんだ案外近いじゃん

やっぱり先輩を、先に送る方が正解だった

先輩も、とっとと教えてくれれば良いのに、まったく強情なんだから


「それにしても、今日の瑞樹先輩は、とても可愛いらしい姿なんですね」

「まぁ、色々あって、先輩の紹介でお古を貰って来たからね」


そりゃあ、3時間以上も着せ替え人形にされた挙げ句

スカートにブラウス着せられて、外に放り出されましたから


それにしても、スカートが凄い頼りない

こんな無防備で、外を歩いてるなんて…ヤバすぎる

1度、ウチで女子の制服を着て以来、スカートは2度目だが、外を歩くのは初めてだ。



「僕は、やっぱりズボンが良いな、動きやすいし、色々見えちゃう心配もないし」

「そうですか?私は今の瑞樹先輩のが、可愛いくて良いと思いますけど」

「ん~、もし風が吹いてパンチラしたりしても、僕のパンツなんか誰得って思うじゃん?」

「私はむしろ興奮します!」

おーい、いくら目標の姉だからって、そんな処まで似なく良いんだぞー


今、背中で寝た振りしてる人みたいに、鼻血で貧血になるから、そこは真似しちゃいかん。



「あら!?あの娘」

背中で狸寝入りしてた先輩が、声をあげる

先輩の視線の先には、公園のブランコに座って佇む…


「魔法少女!?あの娘…確か昼間、ウチの神社から飛び出して行った…」

「じゃあ、龍神様が魔法のステッキを授けたって言う?」

「あー、思い出した。ステッキ作製は、先輩の依頼だったらしいですね」

「何の事だか解らないわ、それより彼女、どうしたのかしら」

そう言って僕の背中から降りると、ふらつく足取りで公園へ入っていく

逃げたな…


どうする?って目を小百合ちゃんに向けると

「行ってみましょうよ、瑞樹先輩」

そう言って、公園の中へ走っていく

結局関わる事に成るのか…



最初に、到着した先輩が

「ねえ、キミは魔法少女になってるけど、元男の子でしょ?」

「どうして、それを…」

「そのステッキ、作製依頼したの私だし」

やっぱり先輩か…


「で、どうしたの?」

「オレ、学園に通う、1-Eの安藤 咲哉(あんどう さくや)って言います」


ヤバイ、隣のクラスだ

僕、学園じゃ男の子として通ってるし…マズイよ。出来るだけ先輩達の後ろにまわって、今回は会話に入らないようにしないと…


ん?安藤?

さっき寄って来た、喫茶店の鞠菜さんの苗字と同じ…まさかねえ



「ウチはこの先で、喫茶店やってるんですけど、オレのねーちゃんが、日頃『妹が欲しい』って言ってたんで、この魔法のステッキで女の子になって、会いに行ったんです」


あー、あの鞠菜さんなら言いそうだわ、僕のこと小さくて可愛いって抱き締めてたし

そんなに縮んだかな?自称156センチ位だと思ってたけど(実際150センチです)


「ねーちゃんに会った第一声が、『誰?』ですよ、酷いと思いませんか?」

面影残した性転換じゃなく、まるっきり別人の姿に成っちゃう、変身性転換だもの…それは解んないって


「ムカついて、ねーちゃんの前で元の姿に戻ろうとしたら、今度は戻れなくて…」

「それで、途方に暮れていたと?」

先輩の言葉に頷き、項垂れる



仕方ない、ウチに電話して、龍神を電話に出してもらう

『おう、テレビ搬入できたぞ!だいぶ苦労したがな』

「どうやって入れたかは、ちょっと気になるが、今はそれどころではない。おまえの作った魔法のステッキの解除方法を教えろ」

『ああん?ステッキに変身解除なんて、付けてないぞ』

「付けろよ!必要な機能だろ!」

ん?

()()()()に付けてない?


「まさか、他に方法が?」

『ああ、一つだけある。それは()()()()()!!』

「アホか!!アニメの中じゃあるまいし、どこに悪者が居るんだよ!」

『そんな事まで知るか!』

「知れよ!考えとけよ!」

『あーもー煩い奴だな、こっちはテレビの設定で忙しいんだ!もう切るぞ!』

あ、バカ龍!本当に切りやがった。



仕方ない、先輩に解除方法の話を伝える

「成る程!良く解ったわ!じゃあ彼女?を元に戻しましょう」


「でも、姉様、戻すってどうするんですか?」


「悪役が居ないなら、作れば良いのよ」



「ええええええ!?」

周りが、田畑ばかりの田舎の公園に、僕と小百合ちゃんの声が木霊(こだま)した。



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