38-2 着せ替えタイム
「唵阿毘羅吽欠娑婆呵!」
大日如来の真言で、不浄なるモノを成仏させる少女が居る。
背は縮んでいるが、黒髪ロングの姿…どうやら子供の頃の先輩だろう
じゃあ、これは先輩の記憶…
「やっぱ、姉様は凄いや!」
と言いながら、近くで燥いでるのは…小百合ちゃん?
いや、違う
だってその子は、Tシャツに短パン姿だし
「直ぐに出来るようになるわよ。だって私の弟ですもの」
そう言って、少年?の頭を撫でる
「うん!きっと…」
ねーさまのやくにたつから…
◇◇◇
「……ちゃ…」
う…
「ねえ……ちひ……ん」
誰かに揺すられてるが…気持ち悪い…
「千尋ちゃんてば!大丈夫!?」
「先輩?…今は駄目…そっとしといて…」
胃がムカムカして…吐きそう
まさか、先輩のシチューが、あれほど危険なものだとは…
『守護神』が効かないって事は、モロ物理ダメージだし
もう少しで、黄泉送りに成るところだった。
そんな時、頭の下に柔らかいモノが差し込まれる
何だろう…目を開けると、覗き込む先輩の顔があった
「何やってるんですか?」
「いや~膝枕をね、一回やってみたかったのよ」
「そう言うのは、彼氏にやってあげてください」
「じゃあ、千尋ちゃんが彼氏になって」
「僕は…もう男の子には戻れませんから、彼氏には…」
「彼女でも良いわよ」
「先輩、何でもありなんですね」
「何でも…と言うと語弊があるわ、私は可愛いなら、男女問わないってだけよ」
ダメじゃねーか
可愛いは正義よ!と拳を握りしめ豪語する先輩
巨乳が正義!と言ってたバカ龍と、同じ思考回路だ。
どうして、こう変な人ばかり集まるんだか…
「あ、そうそう、服貰えるかもって話ね、連絡したら夕方5時頃迄なら、お店暇だから大丈夫だって」
「そうなんですか!?」
「うん、今から行ってみようか」
「お願いします!」
と言うか、喫茶店が5時まで暇って…大丈夫なのか?
その時間こそ、食後のコーヒーとか飲みに来るもんなんじゃ…
だいぶ体調も回復したので、先輩の膝枕から起き上がり、着替えてきますねと自室へ向かう
巫女服のまま行く訳にはいかないし、下はジーンズで良いとして
「上かぁ…」
まず胸を何とかしない事には、Tシャツすら着れない
仕方ないのでサラシを巻いて出来るだけ潰す
「やっぱり、香住に引っ張って貰うほどは潰れないか…」
それでも、何もしていないよりは、だいぶ引っ込んだ。
後はTシャツにパーカー引っ掛けてっと…
何か、それしかないって言うのが、いかにファッションに気を使わなかったのかが、今となって身に染みる。
他は、龍神が買って寄越した、メイド服だのナース服だのそんなのばっかだ。
もっと普通の服を買ってくれれば良いのに…勿体無い。
しかし、あの気を失ってた時に見た夢?
あれ…先輩の記憶…だよな?
弟って言ってたけど、あの感じじゃ、小百合ちゃんと同じ歳位のはず
双子だったり?、もしかしたら年子とか?
まあ、他人様の家庭事情をあれこれ聞くのも悪いし、取り敢えずこの話題は保留にして置くか
部屋から出ると、龍神が大きな箱を担いで帰って来た。
コイツめ、上手く逃げやがって…
「おい!テレビ大きすぎだろ!」
「ふふ、刮目せよ!超高画質8Kだぞ!良いだろう」
またハイスペックな…
「こんな大きいの必要か?」
「ふ、これで画面外に食み出したパンツまでくっきり収まる!」
「あのなぁ…そう言うのは、テレビ大きくしても映らないと思うぞ」
「なんだと!?」
「そもそも、ブルーレイとか買ってくれたファンに、サービスで入れてるようなもので、テレビの大きさは関係無いから」
「おい、じゃあ俺は何のために、大きなテレビを買って来たんだか、解らんではないか!」
知るかそんな事…
「だいたいそのテレビ、大きすぎて廊下の角を曲がれないと思うんだけど…」
「え?」
やっぱり考えてないか…アホだな
自室に搬入出来ないの買ってきて、どうするんだか…
一緒に、テレビ設置で着いてきた、電気屋のオッサンも途方に暮れてるし
電気屋さんには悪いが、アホ龍を任せて、僕は先輩の所に向かう
「先輩、お待たせしました」
「あ、千尋ちゃん、やっぱり鍋にくっ付いちゃったわ」
そう言って、固まったシチュー?の入った鍋をポコポコ叩いている
本当に固まるんだ…
食べた僕としては、何入れたんだか、非常に気になるんですが…
「後で金槌で叩いてみますよ」
それで駄目なら、廃棄しかない
ごめんね~と渡された鍋を台所に片付け、件の喫茶店へ向かう
さすがに、平日なので補導されないか心配だ
先輩は、左手ギブスなので、病院帰りと言い訳できるが
僕の方は、重症だったけど傷治っちゃったし、どうしようかなぁ
補導されたら、『付き添いです』とでも言おう
いつも買い物に出かける、街の方とは逆方向に向かう
確かこっちは…中学校があったはず
今年、卒業するまで通っていた道なので、なんだか懐かしく感じる。
「あの先輩…あまり中学校の周りを彷徨くの止めましょうよ、知った先生とか、逢うと気まずいですし」
「でもね、喫茶店はこの先なのよ」
そう言って、先輩の妹小百合ちゃんや、正哉の妹の紗香ちゃん達が、午後の授業を受けてるであろう、中学校を横切り、更に山手に進む
これは、暇だと言った、喫茶店の状況に納得がいったわ…
立地が悪すぎる。
少し進むと、山際に旧中学校が見えるが、老朽化が酷すぎて、だいぶ前から廃墟となっているらしい
らしいと言うのも、僕が中学校へ入学するよりも前から放置なので、正直、何時からあの状態なのか、よくわからいのだ。
「ねえ千尋ちゃん、あの山際の建物知ってる?」
「中学校の旧校舎でしょ、知ってますよ。色々な怪談話で有名でしたから」
中学時代では、『オバケ』や『夜中に変な声が聞こえる』等の噂で持ちきりだった。
「そっか、千尋ちゃんの在学中も、似たようなものね」
「まあ、1学年違うだけなので、殆ど同じ噂だと思いますよ」
「……でも、こう言うのは知らないでしょう。あの中で、本当に人が死んでるの…」
先輩は、それだけ言うと、スタスタと歩いて行ってしまう
…
はい?
いやいやいや、無理に入って、中で怪我したと言う話は聞いたが、死人が出たと言うのは初めてだ。
そもそも、死人が出ているなら、ニュースや新聞に載ったはず
そんな事件、聞いた事もないし
だいたい、何年も前から、危ないと言うことで、窓や入り口に板が打ち付けられ、入れなくなってると言うのだから、先輩の話も所詮は噂話なのだろう
きっと、僕が怖がると思って、話を振ったな
お生憎様、僕だって神社の息子…いや、今は娘だが…幽霊など怖くないですよ
だいたい龍の完全体になってから、そう言った類いは、寄って来なくなったし
遠くから、様子を伺って居るような感じだ。
まあ、此方から手を出すつもりはないし、このまま何事もない方が、平和なので言うこともない。
やがて喫茶店が見えてきた。
看板には『カクリヨ喫茶』と店名が書かれている。
隠世って…
こんな辺鄙な処に在るだけあって、言い得て妙だ。
営業中と札の掛かったドアを、ドアベルを鳴らしながら中に入る
本当に誰もいないし…大丈夫かこの店…
「こんにちは、鞠菜姉さん居ますか?」
「はーい、今いきまーす」
そう言って出てきたのは、髪を編み下げにした眼鏡のお姉さん、店のロゴが入ったエプロンが、似合いすぎている。
「お帰りくださいませ、ご主人様…いや、お嬢様のが良いのかな…」
帰らせてどうする、それにメイド服でもないし、色々ツッコミ処が満載だ
「千尋ちゃん、こちらが安藤 鞠菜さん、そしてこちらが後輩の…」
「千尋さんね!小さくて可愛いじゃないの!何処で拾ったの?」
そう言って抱き締められる
エプロン越しだが、巨乳の柔らかい感覚が…
「学園で色々あって…今は私の僕よ」
「違いますから、僕はただの後輩です」
直ぐ様訂正を入れる
「わあ、ボクっ娘だ!良いなぁ、アタシもこんな可愛い妹が欲しいわ」
「ダメですよ、いくら鞠姉でも、千尋ちゃんだけは譲れません」
「じゃあ、一晩だけで良いから貸してよ」
一晩って、何されるんだろ…
「お二人とも、何処で知り合ったんですか?ただの先輩後輩って間柄じゃなさそうだし」
「鞠菜姉さんは、ウチの兄と付き合ってたのよ」
「付き合ってたって、過去形にしないでよぉ、別れたわけじゃないんだから」
「そうなんですか?私はてっきり、鞠菜姉さんがズボラな兄を見限ったものだとばかり…」
祓い屋としては尊敬しますが、人間としては最低ですからと、お兄さんをメソクソに言っている
「ん~なんかね、付き合ってるから、いつも一緒に居ないとって言うのが嫌なのよね」
「え?それって、寂しくないんですか?」
「寂しく成ったら逢えば良いのよ、顔だけ見て満足して帰るって事もあったし、お互いイイ加減な性格だから、微妙な距離感が良いのかな」
そう言って苦笑いをする鞠菜さん
また違った恋愛の形を見せられたようだ。
「さて、千尋さんに服着せちゃいましょうか」
「え?いや今日は、お古をいただくだけで…」
ちょ…着るとか話が違う
強引に、2階の鞠菜の部屋へ連れていかれ
「さあ、千尋さん、自分で脱ぐか、アタシ達に脱がされるか、どちらか選びなさい」
「どっちも脱ぐんじゃないですか!」
「脱がなきゃ着替えられないでしょ」
「先輩、今日着替えに来た訳じゃないですよね?」
「実際に着れるか調べるんだから、試着してみないと、貰って帰って着れなかったじゃ意味ないでしょ」
「それはそうだけど…」
く…
人前で脱ぐとか…恥ずかし過ぎる
落ち着け…今は彼女等と同じ、謂わば同性じゃないか
二人に背を向け上から脱いでいく
「あら?サラシ?」
「これがないと、服が着れなかったんです」
「ふ~ん、ちょっと測ってみよっか」
「ええ!?」
「どうせ、お店で買う時だって、測る事になるんだから」
そう言って、裁縫箱からメジャーを持ってくる鞠菜さん
「先輩、助け…」
「こっちは準備オッケーよ」
スマホを構えて撮影の準備してるし
やっぱり、この人…何処か龍神と、思考が同じだ
ここのところ色々あって、すっかり忘れていたが、往来で『処女』をくれと言うような人だったわ
仕方ない、観念してサラシを外し、手で押さえてるだけの状態になる
「じゃあ御辞儀して」
「?」
「そのままじゃ、大きすぎて垂れるから、ちゃんと測れないのよ」
成る程
言われた通り御辞儀をする
「ひゃあ」
「あ、ごめんね、メジャー冷たいよね…ちょっと我慢して…」
うう…あんな悲鳴あげるなんて…
自分でも信じられない
先輩に動画録られてるんだろうな…いっそコロシテ
「アンダーが65.8のトップが…92…HよりのGって処ね」
「えっと…それはどっち買えば良いんですか?」
「んー、胸もねサイズが一定じゃないのよ、生理始まると胸が張って1カップ位すぐ上がるんだから」
「マジですか?」
「個人差があるみたいだけどね、2割増しに成る人も居るらしいわ」
2割増しって…スゲエな(注、個人差があります)
「わざと大きい方買って、あんこ入れて調整するって言う手もあるわ」
「アンコ?」
「あ、えっとね、あんこって言ってもパッドの事よ、本当の餡じゃ無いから」
成る程、生理が近付いて、胸が張ったら抜けば良いのか
「まあ、お金に余裕があるなら、両方買って置けば間違いないわね」
パッド使うと、巨乳好きの龍神が五月蝿そうだな…
う~ん、財布と相談って処か
「じゃあ下も脱いで」
「え?上だけじゃ駄目なんですか?」
「ダメ~」
「ちょ、本当に下はジーンズで良いですってば」
胸を押さえて居るので、手が塞がっていて上手く抵抗出来ない
「もう、聞き分けない子ね、緑さん!手伝って」
「了解です」
「あ、ダメですって、マジで下は…」
…
「ねえ緑さん、この子何でトランクスなんて穿いてるの?」
「あ~、千尋ちゃんは女の子になって、まだ日が浅いですから…」
「でも、トランクスは無いんじゃない?せめてブリーフとか…」
いいからズボン返して…
トランクス一丁の姿で泣き崩れる僕を他所に
「此れは由々しき事態だわ」
そう言って、引き出しからショーツを持ってくる鞠菜さん
「これ、買って一度も使ってない新品だから」
「あの…まだ心の準備が…」
「問答無用」
「ひっ…」
…
……
もうダメだ…お嫁に行けない…
「まさか、つるつるだなんて…ねえ緑さん今の…」
小鳥遊先輩は鼻血出して倒れてるし
「ちょっと緑さん!大丈夫!?」
「ど…どうにか…少し貧血気味ですが…」
「しっかりなさい、此れから本番の、着せ替えタイム何だから」
え?
今なんつった?
此れから本番とか言いませんでした?
「じゃあ、このワンピースから行ってみようか」
「…拒否権は?」
「ありません」
そこから、喫茶店にお客が来店するまで、着せ替えタイムは続くのだった。
バストサイズ修正
HよりのGにするつもりが、モロにHカップでした。




