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龍神の花嫁修行  作者: 霜月 如(リハビリ中)
分岐 『小鳥遊 緑』 『小鳥遊 小百合』ルート
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37-2 先輩の手料理

『小鳥遊 緑』『小鳥遊 小百合』ルートです。



魑絋(ちひろ)との一件の後

ようやく傷も癒え、僕はリハビリも兼ねて社務所を手伝っていた。


さすが、龍の完全体となっただけはあり、たった3日で完治するとは…

自分の事とは言え、正直ビックリだった。

動けない間、朝夕とご飯作りに来てくれた香住には、感謝しなくてはならない。



しかし…もう男の子には戻れない…か…


今まで男に戻るんだ!って女子の服着るのとか、色々拒んできたが

そうも言ってられ無くなってしまったなぁ

今度、香住に着いて来てもらって、下着とか服とか買いに行くか…餡蜜も奢らなきゃ成らないし


はぁ…出費がかさむ

さすがに、香住の服を借りようにも…胸が入らないだろうな

本人の前で言ったら殺されるから言わないけど



「あー、そろそろお昼か…」

僕は、体を(ほぐ)すように伸ばし呟く

社務所は婆ちゃんに任せて、僕は昼食の用意をしに、主屋へ戻ろうとする…と

ウチの玄関を飛び出して来た『魔法少女』を目撃したのだ

誰?


よくテレビでやる、女児向けアニメに出てくる魔法少女の格好で、魔法?のステッキを持っていたので、恐らくそうだろう


こんな非日常的な事が起こるときは、あのバカ龍の仕業と決まっている



「おい、龍神入るぞ!今度は何をし…た…」

そう言って、龍神の部屋へ踏み込むと、龍神はゲームでドラゴンと戦っていた


「なあ龍神(おまえ)さ…ゲームとはいえ、同族(ドラゴン)を狩って楽しいのか?」

「馬鹿者!コイツはよりによって、水神である俺に水のブレス吐いたのだぞ!許せん!」

そんなプライドがあるなら、御神体として自覚を持ってください


「だいたい、さっきからヤラレてばかりじゃんか」

「仕方なかろう、くっついてきた猫が、俺に爆発物を投げ付けるんだ、実質2対1なんだぞ!」

その猫、もう一匹龍が居るの解ってるんじゃ…



「そんな事より、さっき玄関を魔法少女が飛び出して行ったぞ」

「ああ、あれか…実はな、祓い屋の娘が居ただろ」

「小鳥遊先輩の事?」

「うむ、その祓い屋の娘に、変身ステッキが作れないかと持ち掛けられてな…」

「…それで?」

「戯れに作ってみた」


また厄介なモノを…


「たまたま、神社に願い事をしに来た少年の願いが『女の子に成りたい』だったのでな、変身ステッキをくれてやったのだ」

「アホか!自分達で使いもしないモノ作って、剰え(あまつさえ)くれてやるとか…どうすんだよ」

「仕方ないだろ、いざ作ったら俺に雌化願望はないし、祓い屋娘も元から雌だから必要無くてな」

「必要無いもん作るな!」

「本当は、雄に戻ったお前に持たせるつもりだったらしいが…お前、雄に戻れ無くなったしな」



確かに、魑絋(ちひろ)と一緒に取り込んだ『祟り神』が『守護神』に成った為に、術や呪いを反射するので、解除の術を反射して、男の子に戻れなく成っているのだが…



もし、男の子に戻っていたら、魔法少女にされるところだったのか…

なんで、僕をそこまで女の子にしたいのか、良く解らん



「だいたい、さっきの少年の願いは、人間の雌に成ることなんだから、願い叶って良かったじゃないか」

「そう言われれば…確かに…良い事なのか?」

なんか、上手く言いくるめられたような…

まあ、僕のように無理やり女の子にされた訳じゃ無いんだし、良いのか…


あまりに非日常を過ごしている為か、危機感が無くなっている気がするが

龍神と先輩のダブルチームに、平坦な日常を求めようとしたところで無駄なのだ。

それ以上深く考えるのは止めて、昼御飯の用意に台所へ行き

材料を見ながら、献立を考えていると…



「ごめんください」

この声は…小鳥遊先輩?

はーいと返事をしながら、玄関へ向かう

祟り神討伐戦で負傷し、左手を骨折しギブスで固めた、痛々しい姿の先輩が立っていた。


「千尋ちゃん、こんにちは」

「先輩、学園はどうしたんです?」

「そんなのサボリに決まっているじゃない!」

「威張って言わないでくださいよ」

「まあ、サボリは冗談よ。病院で検査して来た帰りに、寄ってみただけだから」

成る程


「さすがの先輩でも、数日で骨はくっつかないでしょ」

「そう言う千尋ちゃんは…凄いわね、取れ掛けた脚が治ってるもの」

「まあ、その辺は龍と人間の違いですかね」

私も、そう言う力が欲しいわ…と先輩は寂しそうに言う


龍化は、代々龍神に仕えてきた、瑞樹の血筋しかできないらしい(龍神談)

なので、女体化みたいに誰某(だれそれ)構わず龍化とは行かないので、羨ましがられても、どうにも成らないのだ。



「あ、そうだ、先輩もう着ない古い服とかあったら、貰えませんかね?」

「何?千尋ちゃん、私の服をイケナイ事に使うの?」

「違います!女性服や下着を買いに行く時に、着る服が無いんです」

さすがに、男の子の格好で、女性下着売り場に入る勇気はないよ


「お、ついに女の子デビューかぁ」

「もう…戻れないみたいですから…」

そう言って、苦笑いをする


「ん~、でも千尋ちゃんの胸じゃ…私の服でも入らないと思うわよ」

「そうですか…」

香住よりは胸の大きい、先輩の服でもダメかぁ



「あ、でも、もしかしたら…。ウチの学園の卒業生なんだけどね、千尋ちゃんと同じか…それ以上のバストの持ち主を一人知っているわ」

「本当ですか?」

「ええ、確か…Hカップ…いやIだったかな…。その人、卒業後に御実家の喫茶店で、ウェイトレスをやってらっしゃるわ。今日も、営業してるはずだから、行ってみましょう」

「あ…でも、龍神と婆ちゃんのお昼御飯作らなきゃいけないので…その後で良いですか?」

「構わないわ、先方には連絡しておくから」


正直ありがたい。

下着だけは、他人のって訳に行かないが

服だけでも貰えるなら、女性服のお店に入りやすくなるし

何より財布にやさしい


ここ数日、ケガでよく動けなかった時に、ネットで女性服の相場みてビックリしたぐらいだ

他にも、ブラジャーの付け方なんか勉強したが、上手く出来るか…

まあ、実際に店に行かなくも、ネットで買う手もあるのだが、自分のサイズが良くわかって無いのもあってか、手が出しにくい。



「それじゃ、ちゃっちゃと昼食作っちゃいますね。先輩、お昼まだなら一緒にどうですか?」

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

お邪魔します。そう言って僕の後について、台所に入って来るので


「先輩、お客様なんだから、待っててくれれば良いのに」

「私だって、お料理ぐらいするのよ」

「先輩の実家…お寺でしたよね?」

「そうだけど」


と言う事は、先輩の料理も和食か…得意料理が被ったな

ウチの婆ちゃんは、和食の方が喜びそうだが

龍神には、天に帰る前に、洋食や中華等、和食以外も食べさせて遣りたいんだ

まあ、半分は僕が和食ばかりに飽きて、たまには洋食が食べたいと言うのもある。



「千尋ちゃん…もしかして、私が寺生まれで、和食しか作れないと思ってない?」

「え?他も作れるんですか!?」

「当たり前でしょ、私が何年女の子やってると思ってるの?」

「…17年ですか?」

「そう!千尋ちゃんが生まれてない頃から女の子やってるのよ」


実年齢は、1歳しか違わないのに…

だが、女の子歴だと、10日ちょいの僕よりは、長いので何も言えない



「よろしい、ならば私がスペシャルな洋食をご馳走するわ」

おお!先輩がやる気満々だ

エプロンを渡すと、無駄にカッコ良く着こなす

「先輩…否、小鳥遊先生お願いします!」

「うむ、助手は邪魔なので、御当主様と龍神様を呼びに行ってちょうだい」

「え?大丈夫なんですか?」

「先生の言うことが聞けないのかしら?」

包丁を持って睨まれたので、かしこまりましたと逃げるように台所を出る



左手骨折してて、右手しか使えないのに、大丈夫なのかな…

まあ、先輩を怒らせても仕方ないので、龍神の処へ呼びに行く


「おーい、先輩がお昼作るんで、食べに出て来な…」

「おのれ!作り物の龍の癖に小癪な!本物の水ブレスを見せてやる!」

龍神は、テレビに向かって水のレーザーブレスを撃ち込む


テレビは真っ二つになり、もう2度と映像は映らんだろう


「ゲーム、まだやってたのか…」

「ふん、成敗してやったわ!」

テレビごとな


「僕は別に構わないが…深夜アニメをどうやって視る気だ」

「はっ!?」

龍神は、しまったぁ!っと大声を上げて、(かつ)てテレビだった残骸を、くっ付けようとして

「な、何か、くっ付けるモノは無いのか?」

「ご飯粒で良いなら…」

「戯け!それでくっ付く訳……くっ付くの?」

「付くわけ無いだろ、接着剤持って来てやる」

まあ、くっ付いた処で映るわけ無いと思うけど



接着剤を取りに行く為に廊下に出ると、凄い煙で視界は遮られていた

火事?

まさか…先輩が火事に巻き込まれて…


「龍神!テレビなんか後にして、火事をなんとかしないと!」

「馬鹿者!テレビ後にしたら深夜アニメが…」

「全部燃えたら、集めたアニメグッズも円盤も灰になるぞ」

「其を早く言え!火元はどこだ!?」

「恐らく台所だと思う、龍神は水の神だし水出せるんだろ?」

「さっきブレスで全部吹いてしまった」

使えねー

ダメだ、龍神は当てにならない


煙を出来るだけ吸わぬよう、口元をハンカチで抑え低姿勢で廊下を駆ける

視界はほぼゼロに近いが、そこは長年住んだ家だけあって、間取りはバッチリ頭に入っているので、問題はない。


台所に近付くにつれ煙の濃度は濃くなっていく

やはり、台所が火元か

怪我人の先輩を、一人にして置くんじゃなかった。

台所の入り口から、先輩に呼び掛ける


「先輩!?何処ですか?返事を…」

「千尋ちゃん?」

良かった無事みたい

「凄い煙ですけど…火事ですか?」

「いや…なんかね、シチューが爆発して…」

…は?

シチューって爆発するもんだっけ?

ダメだ、想像が追い付かない


「と、取り敢えず窓開けましょうよ」

そう言って窓を開け、オボンを使って煙を扇ぐ

換気扇が間に合わない程の煙とか…炭火で秋刀魚焼いても此処まで成らないわ


やがて煙は晴れ、視界がはっきりしてくる

先輩がシチューと呼んだ物体が…見えてくるのだが

なんて言い表したら良いか…黒みかかった青紫色の液体?


「我ながら美味しそうに出来たわ」

そう呟きながら、満足そうに鍋をかき混ぜる姿は、魔女そのものだ

と言うか、ソレ食べ物なんですか?



「せ、先輩…僕は婆ちゃん呼びに行ってきますね」

「オッケー、もうちょっと煮込めば完成だから」

そう言って、鼻歌うたってる先輩を他所に、社務所に向かう

こうなったら、一人でも多く呼んで、鍋のシチュー?の量を分散させないと…



「婆ちゃん、お昼ご飯でき…」

いねえ…

社務所の机の上に『老人会の寄合を忘れて居たので行ってくる』と書き置きが

に、逃げられた!



せめて龍神だけでも道連れに…

「おい、俺はちょっと電気屋行って、テレビ買ってくる」

「な!?」

「仕方ないだろ、流石に天蔵(あまぞう)さんのお急ぎでも、今日中発送は無理みたいだしな」

「待て龍神、買い物初めてだろ?僕が一緒に行ってやるから…」

「はっはっは、『たぶれっとぴいしー』で動画視て勉強したから大丈夫だ」

「一人だけ助かろうなんて、ズルいぞ!コノヤロウ」

龍神は、はっはっはと笑いながら、鳥居を潜って行ってしまう

あんにゃろう、石段転がり落ちろ!



「千尋ちゃーん、出来たわよー」

いよいよ生死の裁定が下るのですね

あの手のモノは、2パターンある

見てくれ悪いだけで、超美味いか普通に食えると言うパターンと

見てくれ通り、味が最悪でヤバイパターン…

前者であってくれ…



居間へ行くとあの謎の物体X…元い、黒みの青紫シチュー?が深皿に盛られて居た

「龍神様と御当主様は?」

「…う、うん…2人とも用事思い出したって…」

「そっか、じゃあ二人の分は千尋ちゃんが食べてね」

はい?


「ちょっと待って先輩、残しといて温め直せば良いんじゃ?」

「それが、そうも行かないのよ、時間が経つと、カチンコチンに固まって、鍋ごと棄てることに成るから…」


そんなシチュー聞いたことがねぇ…

その奇妙キテレツな食べ物?を、僕は此れから食べると言うのか…


スプーンを手に取り、シチューと呼ばれるモノの中へ沈めていく

どうやら、スプーンが溶けたりはしないようなので、少し安心した

さて…口元に持っていき、匂いを嗅ぐと、普通にシチューの香りがする。

これは、本当に見た目だけ悪いってパターンかも

だと良いなぁ

淡い期待に願いを込めて、シチューを口に含む


……

美味い…わけでもなく

不味い…わけでもない

なんだろう…

普通に食えるが、明らかに一般的に言う『シチュー』ではない

説明が上手く出来ないが…食えなくはないので、まあ助かったと言うべきか


「千尋ちゃん、どう?」

「…不思議な味です」

「意味わかんない。もっと他に表現ないの?出汁が利いてるとか、隠し味が良い仕事してるとか」

出汁?隠し味?

先輩…貴女は一体何を入れたんですか

まあ、食えなくは無いんで、良かったですがね


もう一口、スプーンで掬おうとしてたら、指の間からスプーンが滑り落ちる

え!?

力が…入らない


身体全体が、激痛を訴える


遅効性かよ…


そのまま意識がフェードアウトして行きながら


もう先輩に、二度と料理はさせてはいけない…そう思うのだった。


出来るだけ頑張りますが、さすがに毎日更新は、ちょっと無理かもしれません。

龍神ルートの方の、資料を集めたいので、すみません。

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