49 星空の下で
ラストです。
後ちょっとだけ、お付き合い下さい。
香住と小鳥遊先輩が、別室に消えた後
僕も、女子の制服に着替える事になるんだが…
やっぱり緊張する。
ウチの中では、着たことがあったけど、外に着て出るのは初めてだ
取り敢えず、サラシを取ってブラジャーに取り替える
やっぱり、まだ1人では、ホックが上手く止まらない
もう胸の前でホックを止めて、前後回すかなと考えていると
小百合ちゃんが、後ろで止めてくれた。
「ありがとう、小百合ちゃん」
「確かに、慣れないと大変ですよね」
「そうなんだよ…腕がつりそうで…」
そのうち慣れますよと笑顔で言ってくれた。
確かに、数をこなす以外無いようだ。
後は1度着ているので、小百合ちゃんのサポートもあり、何とか女子の制服を着こなす
髪型は、後ろでまとめてポニーテールにし、リボン着けにしてもらった
「何か…すごい恥ずかしいんですけど…」
「大丈夫です。とても似合ってますよ千尋先輩、出来れば一緒に1枚お願いします」
小百合ちゃんが、スマホに自撮り棒着けて、僕にくっついて写真を撮る。
何か…また後で、香住の怒りを買いそうなフラグが…
龍神が、流れに乗かって、ローアングルで写真を撮ろうとしていたんで、カメラの上から蹴って置く
「エロ龍め、さすがにスカートにローアングルはマズイだろ」
パンツまで丸写りになるし
「ちょっとぐらい良いだろ!縞パン穿いてるか気になるし」
「ちゃんと穿いてるから、心配はノーサンキューだ、この野郎!」
ノーパンで歩くわけ無いっての
「こっちは、準備オッケーだけど、そっちは?」
そう言って現れる先輩だが…
「あれ?先輩声が…」
「あー、ちょっと失敗して煙を吸っちゃって…でも、ちょっとだけなんで、直ぐ戻るから」
「姉様が…兄様に…」
小百合ちゃんはショックが大きいらしい
「そうか…小百合ちゃんは、学園で起きた性転換パニックを、知らないんだったね」
「はい、話は聞きましたが…実際目にすると…」
初見なら仕方ないか
「こっちも準備は終わりましたから」
そう先輩に告げると、高月さんは外で待ってるから、頑張んなさい!と背中を押してくれた
あー緊張するわ
玄関の引き戸に手を掛け、深呼吸をし気持ちを整え
一気に戸を開ける。
境内の真ん中で、後ろ向きに立っている男の子
僕は、その人に向かって歩いて行く
直ぐ真後ろに立って
「背がやっぱり伸びたんだね」
そう言って苦笑いする。
4月の始めは、同じだった背丈の差が、絶望的な程開いていた
彼?はゆっくり振り返る
「千尋こそ、女子の制服…良く似合ってるじゃない」
「う、うん…ありがとう…」
声が低くなってるんで、まだ聞き慣れなくて、ちょっと笑ってしまう
「変かな?」
「あ、いやごめん、まだ聞き慣れないんで…でも格好いいと思うよ」
「本当?」
「うん、胸を張りなよ」
「胸…実はショックなんだ…本当に真平らになってしまって…」
あぶねー
胸でキレるかと思ったが、ここまでペッタンだと怒る気も失せたらしい
そりゃ、男の子だし仕方ないよね
「じゃあ、行こうか」
「うん」
鳥居をくぐり、石段を降りる
やっぱりサラシで抑さえてないと、胸が邪魔で足元が見えなくて危ない
揺れだけはブラジャーで抑えられても、死角はどうにもならないからね
あ!
僕は石段を踏み外し、転がり落ちそうになるが
香住が抱き止めてくれる
「大丈夫?」
ん?
この感じ…
「あー!あの時の人は、やっぱり!」
「バレたか」
そう言ってイタズラに舌を出す
性転換テロ騒ぎの時、僕が階段から落ちたのを受け止めてくれた人は、香住だった
「逃げないで、言ってくれれば良かったのに」
「あの時は、男の子の姿を見られるの恥ずかしくて…それに直ぐに戻ったし」
香住はそう言って苦笑いしていた。
「あーでも、今は男の子なのに、呼び方香住じゃない方が良い?」
「その辺は千尋に任せるよ」
「じゃあ、高月くんって呼ぶけど?」
「うん、今夜だけの一時的なモノだし…かまわないよ」
そう言って、高月くんは学園に向かい、歩いて行く
「ねえ、男の子ってどんな感じ?」
「男の子歴16年の千尋が、それを聞く?」
「だって、僕はそっち側には二度と行けないからさ」
「…後悔してるの?」
「してないって言うと、嘘になるかな…でも、もう受け入れたから」
仕方ないよねって微笑む
それにしても、今まで殆ど背丈の差がなかったから、気が付かなかったが
足の長さの違いから、どうしても此方は早歩きになって、並んで歩くのが大変だ
僕が、5~6センチ縮んでるので、実質20センチ以上の背丈差が出来たことになる
途中で、僕が早歩きしてるのに、気が付いたのか
「あ、ごめん、そうだよね足の長さ違うモノね」
短足と言われてるみたいで、ちょっとムッとする
「別に大丈夫だから」
そう言って、早歩きのまま歩き去のを、高月くんに笑われる
何かすごい遊ばれてるみたいで…
そう初期の龍神みたいな
イラッとする原因はそこだ、余裕があるみたいな感じなの
いつか逆転してやる
その後も、二人で他愛もない話をしながら、誰も居ない夜道を学園へ向かう
もしかしたら、今の性別の二人で、昼間に登校する並列世界があるのかも知れない
それはそれで、楽しかったかもね
でも、今の状況だって悪くない
だって、こんなにも星空がキレイなんだもの
昼間に登校してたんじゃ、この星空は見れなかっただろうし
「高月くん、僕…この世界も悪いことばかりじゃないと思うよ」
「そうだね…もう何処にも逃げたりしないよ」
そう言って苦笑いをする
そんな夜の登校も、校門前で終わりを告げる
「どうするの?」
「校舎内は無理でも、一応校庭まで行ってみよう」
僕は、そう言って高月くんを抱き上げ、センサーを越える
「なんか…男の子の姿で、抱き上げられてるのは、変な気がして…」
高月くんは、複雑そうな顔をしている
此ればかりは、龍じゃなきゃ出来ないからね
ちょっとだけ優越感
誰も居ない、夜中の校庭の真ん中で
僕は…深呼吸をし
いつも邪魔が入るので、その前に一気に言ってしまおうと
「た、高月くん…僕と…つ…付き合って下さい!」
「えっと、ずっと男の子になるのは無理だけど…今回みたいに、たまに男の子に成るだけなら…よろこんで」
そう言って、星空の下で二人キスをした。
女の子になった僕は、一夜限りの男の子に恋をする。
そして此れからも、龍神の花嫁修業は続いて行くだろう
だって
二人の恋愛はこれから始まるのだから
突貫で進めた、1ヶ月と1週間をお付き合いくださり、ありがとうございました。
本当は、龍神との別れまで書くつもりでしたが…
香住1人を決めた後に、話を続けても、中だるみしそうなので、ここで締め香住ENDとして、終わりにさせて頂きたいと思います。
御愛読、ありがとうございました。