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46 常夜~現世へ

香住を助ける為には、龍神に相談すべし

そう言った、小鳥遊先輩の言葉に従い

神社の龍神の部屋へ向かう


アイツ(龍神)の事だ、アニメのブルーレイディスクを視てるかも知れない

「おい!入るぞ!」

そう言って、乱暴に襖を開けると


そこには、一糸纏わない裸の龍神が立っていた

「裸族に目覚めたのか?」

「沐浴を済ませたばかりでな」

「脱衣場で着替えてから来いよ!」

「いや、着替えを忘れて出てきたんだが、だんだん気持ち良くなって…この解放感が良いと思わんか?」

「思わないよ!!」

バカ龍め

あー、でもなんか、コイツ(龍神)が通常運行なんで、かえって安心したわ


とりあえず、香住が消えた経緯などを説明しておく

「成る程な、たぶん祓い屋娘の言う通だろ」

「そうか…じゃあやっぱり蛍の処に…」

「まずは、その場所を見てみないとな…よし!案内しろ」


そう言って龍神は部屋を出ていこうとする

「待て!その格好()で行く気か?」

「神社の敷地内なんだろ?なら問題無いだろ」

「アホか!藪を抜けるんだぞ!自慢の愛棒が傷だらけにっても責任取らんからな」

「それは問題だな、服着てくる待ってろ」

早くしろよーと声を掛ける外で待つ


しかし…

アイツのデカイな…

あんなの本当に入るのか?

男の子だった時、童貞だった僕には想像も付かないが

教科書代わりのエッチな本では、ちゃんと入っていたものなぁ

「女体って、すげえな…」

自分の下腹部に、手を当てながら呟く



着替えが終わって出てきた龍神と合流し

藪に分け入る


もう少しで、藪を抜けると言うところで

足下の感触が消え、落下する

「え?」

何が起きたか理解できに居たが

落下寸前に、龍神が手を捕まえてくれたので助かった

「地面が無くなってる」

「どうやら、人間達が掘って削ってったみたいだな」

そう言って、僕を引っ張り上げてくれた


切り立った崖の上から見下ろすと、遥か下に重機が掘削してるのが見える

数年前から始まった新都市計画でと言う奴だろう

だが、その都市計画のお陰で、蛍の場所へ行くことができなくなってしまった。

小川を辿(たどろ)うにも、仮設の黒いパイプに、川の水が入ってしまっていて、どうにもならない。


「此じゃ、常夜(とこよ)に行くことが出来ないじゃないか!」

絶望し地面を叩く僕に

「そうでもないさ、見ろよ」

龍神は、そう言って顎で空中を指して、見るよう促す

そこには、本当に薄っすらとだが、蛍の群が空中に映っていた

「まさか…あそこが」

「そうだ!常夜(とこよ)だ」

「でも空中だぞ!どうやって行くんだよ」

「まあ落ち着け、お前の龍の力での跳躍なら、何とか届くんじゃないのか?」

「ん…ギリギリ…届くかも」

「じゃあ問題ない、1度神社に戻って段取りを説明する」

「すぐ行かないのかよ」

良いから来い!っと神社に連れ戻される


龍神の説明だと

まず常夜に入るには、時間がキモなんだそうだ

日の入り寸前しか、開けることは出来ないらしい

ネット調べでは、5月1日の日の入りは6時半位なので、それが開始時間


そして開けるときは、僕と龍神の両方の力で開け、その後婆ちゃんと龍神で開けた穴を維持

中へは、呪いや術を弾く『守護神』を持つ、僕しか入って行けないと言うことだ

他の者では、常夜の中の時間が停止した、永久世界に取り込まれ、帰ってこれなくなる

そう言っていた



それならば、ただ時間を潰すのは勿体無いので

少しでも霊力を上げるため、御祓をし巫女服に着替える。


一応、お仕置きを抜けられたら、駆け付けると言ってくれていた、小鳥遊先輩にも詳細をメールしておく。

これで、事前にできることは、すべてやった


あとは僕次第

決行の時を崖ギリギリで待つ


「よし、そろそろ始めるぞ」

龍神の言葉に頷く

僕は、術とか全然出来ないので、龍神の手を握り霊力を送るだけなのだが

始まると同時に凄い脱力感に襲われる

こんなに疲労して、龍神達は穴を維持できるんだろうか…

と言うか、僕が動けなくなったりして


薄く、現実と曖昧だった蛍達が、ハッキリと見えるようになってくる

やがて龍神が何やら叫ぶと同時に、直径2メートルちょっと位の穴が完全に空いた

「よし!後は俺と和枝に任せて、お前は嬢ちゃんを連れ戻してこい」

「わかった、ありがとう2人とも」

「ほれ、早よ行かんか、年寄りを酷使するで無い」

そう言う婆ちゃんに頷くと、助走をつけてジャンプする


あ、やべ

御祓の時サラシ取っちゃったんだ

胸が跳ね回り、助走が上手く行かないまま、踏み切ってしまったのだ


届くか?

無駄だと思っても、空中で平泳ぎをする

その時、ギリギリ右手の指が穴の縁をとらえた

「あ、あぶねえ」

そう言ってどうにかよじ登る



「まったく、冷や冷やさせる…」

「本当に…婆も5年は寿命が縮みましたわ」



そんな2人を他所(よそ)に、常夜(とこよ)に踏み入る



そこには、不思議な光景が広がっていた

削られて、無くなっていた地面があるのだ。

そして季節外れの蛍の群も…

何もかもが、香住と約束を交わした日、そのモノだった


龍神が、常夜(とこよ)の中は永久に時間が止まっていると言って居たのはそう言うことか…


僕は、とにかく香住を見付けようと歩く

暫く進むと、神社の境内に出て

そこで、一人の少女を見付ける

しゃがみこみ、顔を両手で覆い

「もーいーかい?」

そう声をあげている


だが、たった一人で居る彼女は、何時まで経っても『もーいーよ』と言って貰えずに居た

そんな彼女を不憫に思い、近寄って『もういいよ』と、言ってあげようと思ったら


目の前に子供が飛び出した

7年前の僕そっくりの男の子だ


「良く来たね、でも、もう君の時間は終わったはずだけど?」

そう言ってくる

「僕は香住を連れ戻しに来たんだ、邪魔しないで」

「へえ、連れ戻す?そんな事良く言えたね、何時までも想いが伝えられなかった癖に」

「それは…」

図星を突かれ、何も言い返すことができなかった


「香住はね、男の子のボクと常夜(とこよ)で一緒のが良いんだってさ」

「でも、永久に止まった世界にいるのでは、死んでいるのと同じゃないか」

「それでも、彼女は現世(うつしよ)に居るより良いと願ったのさ、女の子になった誰かさんのせいでね」


解っていた

香住が、女の子になった僕とは、もう添い遂げる事が出来ないと、諦めてしまったんだと

でも

それでも

「僕は、現世(うつしよ)で、香住と一緒に生きて暮らしていきたい」

「ふーん、でも彼女が何て言うかね」

香住の方へ視線を向けると

完全に眼から光が失われていた

そんな彼女に

「香住…一緒に帰ろうよ」

そう声を掛けると

「いや…帰りたく…ない」

生気のない声で返してくる

「ほら、彼女は帰りたくないってよ、香住はボクが代わりにお嫁さんに貰ってあげるから、心配しないで独り現世(うつしよ)に帰りなよ、オネーサン」

「そんな…」

僕は絶望した

もう…香住を連れ帰る事は、出来ないのかと

「だいたい、香住は女の子になった君の姿に絶望したのに、わざわざそんな女の子を強調した大きな胸で来るかね」



あ、馬鹿だ

胸の話…特に巨乳はNGワードなのに

香住が、ゆらりと身体を揺らしながら歩いてくる

「大きな胸ですって…」

そう言って7年前の姿の僕の頭を鷲掴みにする

「痛てててて…頭が割れる」

容赦の無い、アイアンクロー…うぁ痛そう

そのまま振りかぶると、竹林に向かって偽僕を投げる

悲鳴をあげながら竹にぶつかると、シナッタ反動で返ってくる


その返ってくる、偽僕を迎え撃つ香住は、腕を横に付きだし


あれは!?


ウエスタンラリアット!!


ダンプカーにでも跳ねられたかのように、宙を舞う偽僕

何か…吹っ飛ばされたのが、7年前の僕の姿なんで複雑な気分だ


僕が、香住の勇姿にガクガク震えていると


「何で千尋が二人いるのよ」

いつの間にか、香住の眼に光が戻っていた


最後のチャンス


「香住!聞いてくれ!」

「うん?」

「僕は香住と現世(うつしよ)で生きていきたい、僕は香住を…」

深呼吸し

「か、香住の事が好きだから!僕とつ…つき…」

「つき?」


「そうはさせないよ!」

いつの間にか立ち直った偽僕が物の怪を呼び出す

十二支の動物が黒い闇を的って現れた

「あーもー良いところで!」

そう言って、小さい香住を抱き上げ、現世(うつしよ)への穴へ走る


サラシを巻いて来なかったのは失敗だった

胸が邪魔だし、香住を抱いているせいで、重心が前に寄りすぎていて

何度も転びそうになる


黒い丑と亥が竹を砕きながら追ってくる

その背中に小物を載せて

あのネズミのせいで猫様は十二支に入れなかったのを思うと

猫耳党としては、あれだけでも倒してやりたい

まあ、大物が邪魔で無理だけどね


走りずら過ぎるが、うっかり胸の事言って、香住がウィーっと雄叫びをあげると、ラリアットが来てマズイので我慢して走る

やがて

蛍の群が見えてくる

現世(うつしよ)の穴だ!


後は飛び込むだけ、そう思ったら目の前に黒い龍が立ち塞がり火を吹いてくる

「もう!同じ龍なのに、何で向こうは火を吹くんだよ!」

泣き言をいいながら横に避ける

ヤバ

2回目の炎が来る

とっさに、小川に片足をいれて蹴り上げると

水のカーテンができ、どうにか炎を防ぐ事ができた。


そのまま、3回目のブレスの前に黒龍の下を駆け抜ける

後ろから他の黒十二支が追ってきている気配がするが

止まったら最後だ


そのまま助走をつけ蛍の群の中にジャンプする


その蛍の群をくぐると

現世(うつしよ)に出る


現世(うつしよ)に出た途端、香住が元の大きさに戻る


しまったバランスが

せめて香住だけでも…

「香住ごめん!」

そう言って香住を崖の上に放り投げる

僕はそのまま落下していく


はずだったが


誰かがギリギリ捕まえてくれた


「どうにか間に合ったようね」

その声は

「小鳥遊先輩!」

「誰か、手伝って頂戴、私骨折してて片手なんだから」

先輩がそう言うと、龍神が手を貸して引っ張り上げてくれた

「本当に無茶するなお前は」

「済まない、本当にありがとう」

そう、お礼を言ったとたん


お腹に激痛が

「な、なんで…」

今回は、一撃も貰って無い、はずなのに…


僕は、痛みに耐えられず気を失った


ハンセンは『ウィー』じゃなかったらしいですがね

私の思い出では『ウィー』なんで、そう表記しましたが

正確に直した方が良い、と指摘があったら直します。

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