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44 巨乳連合

ふっふっふ

まさか、僕が起こされる方でなく、起こす方になる日が来るとは…


朝餉(あさげ)の用意が出来たのに、一向に現れない龍神に腹を立て

アイツ(龍神)の部屋へ向かっていた


契約を終わりにしてから、電気のない裏の洞窟より引っ越し、主家に住むようになったんだが

此処のところ、輪を掛けて駄目龍っぷりに、磨きがかかっている



香住みたいに、力技に訴えて起こすべきか…

いや、あれはあれで、掛ける方の技量も必要になってくる

流石に、僕では、あの技のキレはない


だからと言って、部屋のモノを利用して、凶器攻撃するのは、ちょっと可哀想な気がする。

香住なら、容赦なく椅子やテーブル(小)が飛んでくるが…

まだ、チェーン振り回したり、毒霧を吹いたりしないからヨシとしよう



龍神の部屋の前で

「おい!まだ寝てるのか!?」

と、声を掛け

一応ノックしてから襖を開ける

「うぁ…」

その部屋は、棚に巨乳キャラのフィギュアを飾り立てられ

床は、山のように積んである、天蔵(あまぞう)さんのダンボールで埋め尽くされていた

BDデッキの周りには、アニメの円盤がタワーとなり、積み上がってる


馬鹿龍を捜そうにも、未開封のダンボールが邪魔で部屋に入って行けない

新しいの買う前に、まず開けろよ!

だいたい、どこ行ったんだアイツ…

円盤を踏み砕かぬよう、慎重にダンボールを退かして、道を作っていく

部屋の中央まで来たとき、見慣れた角が発掘された

「此処に居たか…」

大方…寝落ちした処に、ダンボール雪崩が起き、生き埋めになったんだろう


顔に、マジックで落書きでもしようと思っていたのに、すっかりやる気が失せた

此のまま、埋めて置こうかとも思ったが、料理も冷めるし

いつまでも、食器が片付かないのもあって、仕方なく声を掛ける


「おーい、朝御飯出来たぞ」

「…あと5分…」

「5分って、片付かないだろ!早く起きろ!」

「じゃあ、5年」

「3年寝太郎より寝ボスケだな、お前1ヶ月位しか居られないって言ったじゃねーか!」

「じゃあ、50秒」

「よし経ったぞ」

「嘘だ!数えても居らんではないか!」

「起きてるじゃねーか!早く来い!」

「起きてねー、此れは寝言だ」

コイツ…


「かなり散らかってるな、掃除してやるか…」

僕は、そう言ってブルーレイレコーダーのリモコンを手に取る

「ほう…レコーダーの中、容量いっぱいで掃除が必要だな」

「おい!ヤメロ!まだ視て無いのが…」

寝た振りの龍神は、ガバッっと勢い良く起き上がり、僕の脚にしがみついてくる


「どうせ円盤買うんだろ」

「馬鹿者!『ぶるーれい』は、1日や2日で出ないだろうが!」

「じゃあ、朝御飯に出てくるか?」

「解った、解ったからそれだけは…」


まったく…

最初から素直に起きていれば、こんな強行手段に出ないのに

顔洗って来いよと、一言残し部屋を出る

鬼嫁~と恨み言が聞こえるが

鬼じゃ無いし、龍だし

まだ良い方だぞ、香住なら問答無用で消していた



さて、此れでゆっくり朝食が…

「おい!千尋ー、居るか?」

玄関の方から、女の子の声?

朝から忙しいな…

仕方なく玄関へ行ってみると、紗香ちゃん?じゃないよな

中学の制服じゃ無いし、学園の男子制服だもの


「まさか…正哉?」

「そうだよ」

「ちょっと待て…長くても半日で効果は切れるって先輩は言ってたのに…」

「それがな…あの後、家に帰ったら男に戻れてな」

「戻れたんなら、何でまた女の子に成ってるんだよ」

「まあ、聞け…その後、夕飯時にまた女になってな…どうしようかと思っていたら男に戻った」

「どうなってるんの?」

「いや、俺にも解らね…ただ、3時間置きに男と女を繰り返してるみたいなんだ」

「なにそれ凄い」

「凄くねえ!性別が換わる度に、骨がバキバキって伸びたり縮んだりで痛くて仕方がない」

「うぁ…」

「どうにか、成らんのか?」

どうにかと言われても…

性転換薬を造った先輩に聞いてみる他ないな

「ちょっと、小鳥遊先輩に電話してみる」

「千尋、電話番号しってんの?」

「この間、僕は色々あって寝込んでたんだよ、その時勝手に登録してったっぽい」

そう、祟り神騒ぎの翌日、僕が怪我で動けないときに、勝手にスマホ弄って登録していったのだ

先輩の妹、小百合ちゃんのも、ちゃっかり登録されてたし


電話を掛けると、留守番電話に成ってしまい、先輩が出ることはなかった

昨日の今日だからなぁ

もしかしたら、謹慎に成ってる可能性も…


「駄目だ…留守電になっちゃって出ないや」

「嘘だあああ!俺はどうしたら…」


そこへ龍神が現れ

「なんだ?騒々しい…何かあったのか?」

「あぁ、此方、僕のクラスメートで友人の斎藤正哉、で、此方が最近オタクまっしぐらの龍神」

「オタクは余計だ!ったく…」

「事実だろ、それよりさ、正哉が男に戻れなくて困ってるらしいんだ、どうにか成らない?」

「うん?どれどれ…」

そう言って、正哉のあちこち触って何やら唸ってる


「どう?何か解った?」

僕が龍神に尋ねると

「いや、もう少し胸があった方が俺は好みだ」

ダメ龍め…

「龍神様もそう思います?やっぱそうですよね!せっかく女に成るなら巨乳っすよね」

正哉…余裕あるじゃんか…

「良く言った小僧!気に入った!」

そう言って腕をガシッっと組んで握手する

本当に馬鹿だな

そろそろ胸の話止めないと、香住がやって来るぞ



僕は巻き込まれ無いよう、そっと離れる

人間…学習するもんだよ…正哉

玄関から、千尋はせっかくの胸サラシで潰して、解って無いだの盛り上がってる

やがて…

2名のバカの断末魔が聞こえ

僕は、見ても居ないのに、光景がはっきり思い浮かんだので

ため息を付き、食卓へ戻った。



「お邪魔します。千尋まだ朝御飯食べてるの?遅刻するよ」

「色々あって…」

そう言いながら、恒例のネコマンマを掻き込み食器を片付けて

香住にサラシを巻いて貰う

「こっのーやろー」

「痛てててて、ちょっと…香住さん、今日は乱暴じゃ…痛てて」

「どうせ…私は……」

私はなんだ

結局(とばっち)りじゃないか…

あまりに締め付けられ、窒息寸前まで行ったが、最後に理性を取り戻した香住に助けられた



用意に時間を掛けすぎた為、3人駆け足で学園に向かう

「正哉達のせいで、酷い目にあった」

「私のせいじゃないわよ」

「くっ…走りずらいな」

「おい、正哉…胸の話はヤメロ」

そう正哉に注意し、香住の顔を伺う

「わ、私だって四六時中キレないわよ!だいたい、昨日戻るはずだったんじゃないの?」

「それがな…」

さっき、玄関で正哉にされた話を香住にも話す

「その話だと、9時過ぎに男に戻るんじゃないの、良かったね斎藤くん」

「良くねーんだ、此れで12時過ぎに、また女に成るんだぞ…」

正哉、凄いへこんでるな


「でもさ、トイレ気を付けてなよ、身体が女の時にまた小便器使わないように…」

「あぁ、ちゃんと戻るまでは個室に入るよ…」

やっぱ元気ないな


「ねえ千尋、小鳥遊先輩には聞いてみないの?」

「いや、電話したんだけど…留守電に成ってて、出ないんだ」

「あれ?千尋…いつ先輩の電話番号登録したのよ…」

「へ?いや、いつの間にか入ってたんだって!」

「ふーん…」

おや?

身構えてたのに…何もやって来ないなんて…

拍子抜けだ



何だろう…ちょっと焦点が合ってないような…


そんな目をする事が、多くなった気がする


何処か遠く…違う世界を見ているような


僕は、そんな希薄な香住が、消えてしまいそうで怖かった




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