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28 儀式

何なんだ…

自分と瓜二つの姿の、変なのが出てきたと思ったら、殺すって…

それに、『お兄ちゃん』だって?


確かに、7年前の夏だけの記憶だけがすっぽり無くなっては居るが

夏以前の記憶はちゃんとある

明らかに9歳までの記憶では、僕は一人っ子であって、妹なんて居なかった。

それは絶対に言える。

それとも、お兄ちゃんじゃなく、お義兄ちゃん?

養子に貰ったとか?

でも、7年前まで一緒だったと言っていた

どういう意味だ


7年前…

そう!7年前に、両親も行方不明になっている

一体、7年前に何が…


もう1つ気になった事がある

あの子が去るとき、闇に溶けた…

そう溶けたんだ!

歩いて消えるとかじゃなく、溶けて消えた

とても、人間業じゃない

半龍化してる僕だって出来ないぞ

まあ、逃げ足の速さだけで、元々戦う力なんて無いけどね


ここで悩んで居ても仕方ないので、取り敢えず帰って聞いてみよう

7年も黙っていたんだから、簡単に口を割るとは思わないけど



主屋に帰ると、婆ちゃんがお茶を啜って居た。

「ただいま」

「遅かったの、料理の腕は少しは上がったのかの?」

「婆ちゃん…話がある」

そう言って、婆ちゃんの向かいに座る

「なんじゃ、もうホームページがバレたのかえ?」

「いや、そうじゃ…、それもあった!婆ちゃん、ああ言うのヤメテよ!」

「良い宣伝になって、お賽銭も増えるじゃろ」

「猫耳って、なんのご利益があるんだよ!もっとさ、合格祈願とか安産とか、そう言うの売りにした方が神社らしいんですが!」

「じゃあ、今度鉛筆持たせて合格間違いなし!と銘を打って見ようかのぅ」

「それが詐欺みたいって言ってるの!僕の画像使わないでよ」

僕も荷担してるみたいで嫌だから

というか、もう…本題から脱線してる



「ちょっと、婆ちゃん本題に入るよ、ついさっきだけど…僕に瓜二つの女の子に逢った」

それを言った途端

婆ちゃんが湯呑みを倒す

何時もは、開いてるか解らないような目蓋をしっかり見開いてこっちを見ている

予想以上に動揺しているな

暫く沈黙して、婆ちゃんの様子を見ていると

「その娘は…何か言っておったか?」

そう、か細い声で聞いてくる

「僕の事をお兄ちゃんと呼んでいた」

「そうか…」

「後一つ、馬鹿げた風習を終わらせるって」

それを聞くと婆ちゃんは、暫く目を伏せ沈黙する

……

婆ちゃん?…

「イビキかいて寝てるし!」

あーもー

この人は、いつもいつも…

話を有耶無耶にする天才なんだから!


付き合ってられんわ!

そう言い捨てて、台所へ向かう

取り敢えず、教わった料理を作って龍神の処に持っていこう

そこで龍神に問いただしてやる


龍神も、はぐらかすのが上手いが、婆ちゃん程じゃない

婆ちゃん、酷い時は急に耳が遠くなったり、急にボケた振りまでするが

龍神は其処まではしない。

だいたい、ボケた老人がクラッキングしたり、コラ作ったり出来る訳ないし



まあ良い、この香住先生直伝のハンバーグで、龍神の口を割らしちゃる

そう決意新たに、供物を持って龍神の洞窟へ行くと

龍神の奴が

「やーっと飯か」

そう言いながら、横になってタブレットPCを操作している

「そのタブレットどうしたんだよ」

「此れか?これはわざわざ、お前の部屋に行かなくて良いようにと、和枝が買ってくれたんだ」


婆ちゃん、また無駄遣いして…

「しかも、無線LANまで構築してあるし…」

天蔵(アマゾウ)さんのお急ぎ便使ったら直ぐきてな、便利な世の中になったもんだ」

「このダメ夫め…実家に帰らせて貰う!」

ここ(神社)がお前の実家だろ、だいたいまだ初夜も終わらせて無いのに、妻になったつもりとか」

ハンっと鼻で笑いやがった

この野郎…


良いだろう、そっちがその気なら…

龍神の隣に座り

出来立て熱々ハンバーグに箸を突き立てると

「よし、僕が食わせてやる」

そう言って龍神の頬っぺたに押し付ける

「うわ熱ちちち!戯け!そこは口では無いわ!」

「遠慮するな、なんなら熱々のお茶も飲ませてやろうか?」

お茶を持ってニヤニヤしていると

「食べ物で遊ぶな、勿体無い」

と、湯呑みをふんだくって啜っている


勝った!

ずっとコイツの手の平の上で転がされてたが

最近、ようやく付き合い方が解って来た気がする。

最初コイツに顔覗かれてただけで赤面していた自分が嘘みたいだ


「それで、話なんだけど…あ、食べたままで良いから聞いてて」

そう言いながら、2杯目のお茶を入れてやる

そして婆ちゃんに話したのと同じに、僕そっくりな少女の事

それと、7年前の両親の事故は、事故じゃないって事を調べたと告げた。


食べ終わるのを待ってると

「結局、俺に何が聞きたいんだ?」

「真実」

そう一言だけ告げる


「ふん、実はな…俺もよく知らんのだ」

「龍神が知らない訳ないだろ!」

また、はぐらかされると思い声を荒げてしまう。

「いや、落ち着け、残念ながら本当だ、あの夏の日…お前の両親と和枝が何か儀式を行ったと言うのは覚えているが…」

「その儀式は?」

「それがな、この神社で行われなかったんだ、お前も知っての通り、俺はこの神社の敷地から出られんから、外でどんな儀式したかは知らんのだ」


何だって!?この神社じゃないところで儀式とか…いったい何がどうなってる

どんな儀式だとしても、神霊地で行った方が成功率が高くなるのに…


「あの日…儀式の用意している和枝に、手伝おうか?と言ったんだが、相当リスクの高い術らしくて、失敗した時、神社を穢汚染させる訳にいかないと、儀式道具一式持って出ていった」


「穢汚染って、それ禁忌レベルじゃないか!」

「ああ、これは俺の想像だが…おそらく『反魂』だと思う」


反魂

文字通り、魂を反して死者を甦らす禁忌の術

だが、強い術には必ず対価が発生する

用意した対価が釣り合わない場合、術は失敗となって術者を食らいつくす

場合によっては、術を行った場所が穢れの汚染場と化してしまう


「そんなリスク(穢汚染)を冒してまで一体誰を…」

「まあ、反魂はまだ俺の想像だ。だいたい、反魂だとしても、お前そっくりな少女が対象かと思ったが、儀式が失敗しているなら生きている訳無いしな」


確かに失敗なら生き返って無いのだから、現れるのはオカシイわな

だが、何かしっくり来ない

僕は、あの闇に溶けるような動きを見ているからな

あれは生者と言うより物の怪に近いような…


「もう1つ、あの日の夜…儀式が失敗し、穢れが吹き出したのは、お前の通う学園の辺りだ!」

「何だって!?それ本当?」

「ああ、見に行った訳じゃ無いから、絶対と言えないが、方角と距離からしてその辺りだろう」

タブレットのマップアプリを起動して学園の辺りをコツコツ指で叩いて居た

もう使いこなしてるし

器用な奴だ

「しかし、お前病院に運ばれたんだろ?」

「ああ、僕が気が付いたときには病院のベッドだったよ」

「じゃあ、お前も儀式に参加してたんじゃ無いのか?」

「そこなんだよ、何も覚えて居ないんだ…あの夏の出来事だけ、記憶をそっくり抜き取られたような…」


覚えていれば、こんな聞き取り調査しなくも良いんだが…


「これ以上は和枝に聞くしか無いぞ。何せ、当時の儀式を失敗して尚生き延びた、生き証人だからな」

「婆ちゃんかぁ…」

結局、一番の難関で面倒くさい処に戻って来るんだよな


「なあ、龍神から婆ちゃんに話すように言ってよ、龍神の言う事なら婆ちゃん聞くからさ」

「そうだな、じゃあ此れ着てくれたら口添えしてやる」

そう言って、天蔵(アマゾウ)さんのダンボールを手渡してくる


開けると


メイド服と猫耳カチューシャ


「アホか!無駄遣いばかりして!」

「アホとはなんだアホとは、これ着て語尾に『にゃ』って言って喋ってみたらOKだから」

「なにがOKだ!NOに決まってるだろ!だいたい、龍の角が頭にあってメイド服ってだけで色々ヤバイわ!!」

「じゃあ、猫耳カチューシャだけでも」

「残念でした、角が邪魔で着けれませんー、どうしても着けさせたかったら、元に戻せ」

「では、使い物にならないじゃないか!」

「だから無駄遣いだと言ってるんだよバカ龍め!」

まったく…

どうせ、ネットの動画サイトで変なものでも視たのだろう


もっと神様なんだから威厳を持ってください


あまり酷いようなら、ネット遮断せねば…

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