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26 7年前

お昼の時報とほぼ同時に香住の家のチャイムをならす。

滑り込みセーフ

「遅い!」

家から出てきた香住に、無情な御言葉をいただく。


「だいたい、その格好は何よ」

「仕方ないだろ、独りでサラシ巻けないんだもの」

「はぁ……何で私を呼ばないのよ」

ノーブラ、ノーサラシのだらしない格好に溜め息を吐かれる

「一応、先っぽは解らないように絆創膏を貼ってきたんだ」

「なんか余計に卑猥だわ」

そう言いながらTシャツを引っ張って胸元を覗かれる

「仕方ないわね、丁度洗濯終わったサラシを乾燥機に突っ込んで乾かすから、それ巻いて行きましょ」

そう言われ、乾燥終わるまで香住の部屋で待たせて貰うことにする。


香住の部屋に入るのなんて何年ぶりだろうか

僕の親が事故でなくなった日から、香住が毎日僕の部屋に来てくれるので、僕の方から香住の家に来る必要が無くなっていた。

なので……7年ぶりになるのか……



部屋のドアを開けると、甘い良い香りがする。


僕の部屋と同じく、シンプルでごちゃごちゃしていない点は一緒だ


プロレス好きの香住の事だから、もっと鎖とかゴングが飾ってあると思ったのに、ポスターすら貼ってないし


プロレス雑誌も無いのだから、本当に香住の部屋かと疑ってしまう



僕の部屋と同じくシンプルで、類似点は多々あるのに、こうも女の子っぽい部屋になるのは、どうしてなんだろう


違いを探してみることにする。


まず、本棚の本が少女マンガや小説や占いなんかの本が多い

僕の部屋だと、可愛い女の子の表紙のマンガが多く、小説はラノベばかり

他の相違点は、掛けられてるのが女子制服だと言う事

他には……



流石にクローゼットを開けるのは不味いよな……

んー、手持ち無沙汰で困ったぞ

見回していると、アルバムが目に入る


何気に手に取り、捲ってみる

あ、これ中学の修学旅行のだ。

懐かしいな

そう呟きながら、逆にページを捲り時間を遡っていく

中学の入学式、小学生最後の運動会等

殆ど僕が一緒に写って居る

まったく、此れじゃあ女友達居ないみたいに思われるぞ


そのまま遡って行くと7年前……その夏だけ写真が1枚もない

そうか、あの夏は僕の両親の……

実は僕もよく覚えてないんだよな……

気が付いたときには、病院のベッドに寝かされていて

両親が亡くなったのを知ったのは退院してからだったし

その頃には葬式も何もかも終わった後だった。


そこから、日が経つにつれ、だんだん両親の居ないのに実感が湧いてきて

引き籠るようになっていった。


あの時、香住が無理矢理引っ張り出してくれなければ、今でも引き籠って居たに違いない

香住には感謝してもしきれない程だ。


でも、本当に事故だったのだろうか……

婆ちゃんには、事故だと聞かされているが、僕はその瞬間を覚えてないんだよな

それに、遺品も何も無いなんて……

本当に事故だとして、相手は?

それとも単独事故だったのか?

僕だけ無傷で助かったのは何故か?


色々考え始めたら止まらなくなって、スマホで7年前の事故を検索してみる

だが、ネットを見る限りでは、7年前この街で死人が出るような事故は起こっていない

単にニュースになっていないだけなのか……


そこで、検索ワードから『事故』を削除し

7年前の夏のニュースを片っ端に見ていく


「何だよ……これ……」

そこには、『神社の神主夫婦が行方不明』との記事があった。

何がどうなっている

事故だと聞かされて居たのに……


そこへ香住が飲み物を持って入ってくる。

「どうしたのよ、顔色が悪いけど」

慌ててスマホの画面を変えて平然を装う

「別に、何でもない」

「そうは見えないけど……調子悪いなら出掛けるの今度にする?」

「だ、大丈夫だって、本当に平気だから」

心配そうに、前髪をかき上げると、僕の額に香住の額をくっ付けてくる

ちょ、そう言うのは、直に計らず手を当てて計りませんかね

凄い近くに香住の息遣いを感じる。

「ん~、熱は無いみたい……」

これで熱があったら香住のせいですよ


「ひょっとしてさ……聞きにくいんだけど……千尋……あの日だったりする?」

「あの日?」

「えっと……女の子の日……」

「何だよそれ? 女の子の日って桃の節句は過ぎただろ」

「そうじゃなくて……もう!! 生理が来てるのか? て聞いてるの?」

「さあ? 来ると調子悪くなるの?」

コクンっと頷いてる


んーどうなんだろ、保健体育で一応知識はあるものの

まだ女の子歴1週間経ってないんだぞ

生理がどうなるかなんて、成ってみないと解んないし

「来てないんじゃ? よく解んないんだよ、香住と違って女の子の身体は日が浅いし」

「基礎体温測ってるとわかるのよ」

「へえ」

「へえって他人事みたいに……」

「だって、男に戻るつもりだから他人事で良いんだよ」

「戻る目処も立ってないのにねえ」

その言葉グサグサ刺さりますよ香住さん

「まあ、毎日測ってみなさいよ、体温落ちると生理が来るから」

「測らないってば」

「そう言って急に来ても知らないから」

せめて、下着の代えは持って置くよう言われてしまった。


なんか、男には要らん知識が増えたな。


でも、親の事……どうして婆ちゃんは本当の事言わないんだろ


いろいろ謎が出てきてしまった。


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