21 何方の心
学園からの帰り道
「なあ、高月と何かあったろ」
と、正哉から聞かれるが
いやまあ…
と、曖昧な返事を返し沈黙する。
僕が、はっきりしないのが原因なのだから、ちゃんと答えれば良いだけなのだ。
だが…
普通の男の子と違って、身体が女の子なんだよ
これで、香住の気持ちに答えなきゃって思ってもなぁ…
…いや
それは言い訳だな
ちゃんと男の子の身体だったとしても、香住の気持ちに答えられたか自信がない
やっぱり、僕がヘタレなのがいけないんだよなぁ
なんか、凄い自己嫌悪に陥る。
香住に『心まで女の子になったら』って言われたけど
実際のところ、僕の心ってどっちなんだろ…
いや、身体を女の子にされる前は、確実に男だった
今は、すっかりご無沙汰な、エッチな本だって持ってるし
女性の裸にも興味はあった
…
あったのだが…
なんか…いつでも鏡で本物が見れるとなると、有り難みは無くなる
と言うか
「自分で自分の身体に興奮したら変態だよね!?」
「お、おう…」
急に問われて困惑している正哉に更に続ける。
「だって、正哉は自分の愛棒を見て興奮しないでしょ」
「するわけ無いだろ!」
「それと一緒なんだよきっと」
「何が一緒なんだか…いきなり切り出されてもよく解らねーよ」
「つまり、僕が女の子に興味ないんじゃなく、自分の身体だから興奮しないんだよ」
うん、きっとそうだ
だから、僕は男の子で良いんだよな!って自分に言い聞かせてると
「だけど、それ…同性愛になるんじゃね?」
と突っ込まれた
「いや僕は男の子なんだよ、だから同性愛にはならない」
それでか?とサラシに巻かれた胸を指差される
くっ…
結局そこへ至るんだよな
「よーし解った、今日帰って秘蔵のエロ本で興奮するか試してみる、ダメなら全部正哉にくれてやる」
「えー千尋のお古かよー、お前猫耳娘ばっかだし」
人の性癖を暴露しないでください。
「正哉だって妹萌えなのばっかじゃん、いい加減妹離れしないと、紗香ちゃんに嫌われるぞ」
「余計なお世話だ!紗香に近付く害虫は、例え千尋でもコロス」
このシスコンめ
正哉と、そんな馬鹿話をしながら、神社の石段前で別れる。
「正哉、ありがとな」
「おう、来週もその顔で頼むぜ」
正哉との馬鹿話のお陰で、だいぶ気が張れた
まあ、根本的解決には至っていないが…
石段を昇りながら、香住とのキスを考える
確かに、急だったんで吃驚したけど…
それだけなんだよな…
それよりは、龍神に顔覗き込まれた時の方が…
いや
イカンイカン
またアイツの術中に嵌まるところだった
そう、僕は今から男だと証明してやる
自分の部屋に駆け込み
ベッドの下から、秘蔵の愛読書を出す
凄い久しぶりだ
…
……
一通り捲ったところで、溜め息がでる。
絵柄が可愛いのは認める
だが…
無言でビニールの紐を持ってくると、秘蔵書を束ねて縛り、古新聞が置いてある隣に置いてくる
もうダメだ
そう言って不貞寝するのだった。




