15 お昼休みに
「はぁ…」
なんか今日はいつも以上に疲れた
たかだか、半日過ぎた位で…
机に身を任せ、だら~んとしていると
「まったく、千尋も千尋よ、先輩にはっきり『迷惑です!』って言わないから」
そう言いながら、机をくっつけて、お弁当を広げる香住
「そうは言うけど、あの人思考がぶっ飛んでるんだよ」
こっちの常識の斜め上を行くので、止めろと言っても聞く訳がない。
男子トイレに一緒に入ろうとしたり、往来で人を押し倒そうとしたり
まあ、でも近くにいれば、物の怪には襲われなさそうではあるが
代わりに貞操が危ないんだよなぁ
だいたい、女の子同士の身体でどうやって貞操奪うんだろ…
まさか、生えてたりするのか!?
あの常識はずれの先輩の事だ、在ってもおかしくない
そんな馬鹿なことを考えていると
「千尋ちゃん、一緒にお昼しよ」
っと現れる噂の先輩
「あら、小鳥遊先輩、クラス間違えてらっしゃいますよ、ここは1年のクラスです」
と香住が、自分のクラスに帰れと威嚇する
そんなのお構いなしに、空いてる机をくっつけようとしてくる先輩に
香住が、足で机をくっつけさせまいとガードをしている
あぁ、頭痛い
お昼ご飯ぐらい、ゆっくり食べたいのに…
そこへ、購買でパンを買って戻ってきた正哉と目が合う
チャンスとばかりに、助けてくれと目で訴えかけるが
香住と先輩の攻防を見て、巻き込まれまいと目を逸らす
見捨てるのか友よ
なら、仕方がない奥の手を使う
「おーい、こっちだ正哉!」
と手を振って、わざと大声で呼ぶ
「な!?千尋お前、巻き込みやがったな」
「ふ、一人だけ安全に飯が食えると思わぬことだ」
結局4人で机をくっつけてお昼をとることになる
真っ先に沈黙を破るのは、やはり先輩である
「ねえ、千尋ちゃん」
「なんです?」
「いつ、初めてをくれるの?」
ぶ、ふぉぁ
余りの直球ぶりに食べていたモノが気管に入ってしまった
香住が背中を叩いてくれながら
「先輩!ご飯の時に下品な話はやめてください!」
「だって、千尋ちゃんの初めてしか興味ないもの」
はっきり、処女以外要らねと言っちゃったよこの人
けほっけほっと噎せていると、正哉が買ってきたジュースをくれる
「ありが…」
!?
何これ!?
喉に絡み付いて、余計に悪化する
「新商品の超濃厚ヨーグルトドリンク、どうだった?」
あなた馬鹿ですか?
噎せて喋る事が出来ないので、指でバツの字を作って駄目だと伝える
慌てて香住が、水筒からお茶を注いでくれたので
どうにか事なきを得る
「死ぬわ!」
「いや、だって新商品だったから、味わからんし」
正哉は昔から新商品に弱い
正哉曰く
『新商品は、まだ誰も試していないんだから、美味しいか不味いか解らん処に冒険心が擽られる』
と新商品があれば必ず試すのだ
お願いだから、僕で試さないで欲しい。
このメンバーで、まともにお昼が食えるとは思って居なかったが
ここまでとは…
「本当に賑やかな人達ね」
いや、そもそもの騒ぎの発端は貴女ですよ先輩
どうもこの先輩には常識が通用しない
誰か引き取ってくれないものか…
今度、お昼御飯の場所を変えてみようかと、本気で考えるのだった。
誤字報告ありがとうございます。
修正しました。