10 女子の制服
正哉の背中を見送った後
石段を見上げると婆ちゃんの怒りの顔が浮かぶ
神社へ続く石段が、魔王の城に通じているんじゃないかと、昇るのを躊躇してしまう。
帰りたくないなぁ
しかし、帰らない訳にいかず
重い足を石段へ向けるのだった
神社の境内を身を屈めて走り抜け主屋へ向かう
玄関
居ない
廊下
異常なし
このままなら、部屋まで見付からずに行けそうだ
廊下を抜き足差し足で音を立てずに歩く
僕の部屋の前まで無事に辿り着く
勝った
そう確信し部屋の襖を開ける
しかし
部屋の中央に婆ちゃんが鎮座していた
…
そのままゆっくり襖を閉じる
そう来るか…
何とも言えない汗が頬を伝う
本丸が既に占拠されて居るとは思わなかった
そんな時、内側から襖を開けられる
「無事に帰ったのならそれで良い、早く着替えて龍神様への供物の支度をするのじゃ」
と一言だけ発し廊下を歩いて行ってしまう。
此方は、婆ちゃんの雷が落ちると身構えて居たので拍子抜けだ
まあでも、なにも言わないって事は通学は認めてくれるってことなのか
と良い方に解釈し部屋に入る
と
いつも制服を掛けておくところに、女子用の制服が掛かっている
婆ちゃん!?
これで行けって事なの?
その手には乗るもんか!
女子の制服で通学したら、自分は女の子ですって認めるようなもんじゃないか
それだけは…
…でもちょっと興味が…無いわけではない
廊下を見回し誰も居ないことを確認し
襖を閉めて
女子の制服に手をだす
べ、別に…家の中だし良いよね
ごくりと唾を飲み込んで、ブラウスにの袖に手を通す
サラシを取ってしまった為、ブラウスのボタンがとまり切らない
デカスギ…龍神がこの姿にしたんだし、龍神の趣味なのか
スカートを履きながら、凄くイケナイ事をしているような気分になる
スカートってもっとスースーするもんだと思ったけど
結構あたたかい
着替え終わった姿を見てみたくて、姿見のある母の部屋へ行く
母さん、ごめん
生きていたら泣かれそうだな
でも、此処まで来たら止まるわけにかない
姿見を出して、被せてあった布を外す
…
自分で女生徒の自分に見惚れてしまった
結構イケテるかも
くるくる回ってスカートを靡かせる
ちょっと調子にのって、前屈みでピースして可愛いポーズを決めていると
「ほう、似合うじゃないか」
一番見付かりたくない相手がそこに居た
「りゅ、龍神!?」
自分の顔が真っ赤になるのがわかる
「い、いいつから其処に?」
「いや、ついさっきからだが…」
「今の見てた?」
「今のって、変なポーズしてた奴か?可愛いくて良いじゃないか」
「かわ…」
寄りによって、コイツに見られるなんて…
「お、お前を殺して僕も死ぬうううう」
そう言って龍神に殴り掛かる
「うお、なんだいきなり」
「良いから忘れろー!」
うあああああん
神社に僕の泣き声が木霊するのであった